2.決意

「悠斗、相変わらずモテモテだな」


体育でいいところを見せる悠斗に熱い視線を送っている女子たちを見て僕は呟いた。


「まぁな!でも今は彼女いらないかなー!」


悠斗は笑いながら答える。

そんな様子を見て僕は口を開いた。


「…いらない?あんなに欲しがってたのに?」


すると、悠斗は一瞬表情を曇らせたがすぐに笑顔を浮かべて口を開いた。

 

「うーん…なんというか…まぁ今は欲しくないな!自分のことだけで精一杯だから」


そう言って笑う悠斗の顔はどこか無理をしているように見えて仕方がなかった。

そんなことを考えていると、君が僕たちのところにやってきた。


「拓海君!悠斗君!一緒に帰ろ!」


「あぁ!」

「もちろん!」


そして、3人で帰路につく。君と悠斗が楽しそうに会話しているのを見て、僕は心が締め付けられる感覚に襲われた。


(もしかして……2人は両想いなんじゃないか?あの時の好きは友達としての好きだったのか?)


そんな考えが脳裏をよぎった瞬間、僕の心は締め付けられたような気がした。


「…海君?拓海君聞いてる?」


君は僕の顔を不思議そうに見つめてきた。


「ごめん…考え事してたわ」


「そっか!私と悠斗君の家、こっちだからまた明日ね!」


君と悠斗は小さく手を振ってから、自分達の帰り道を歩き始める。


「おう!また明日な!」


(俺は……どうしたいんだろ)


自分の気持ちに疑問を持ちながら、僕は帰路についた。


翌日、授業が終わり帰る準備をしていると悠斗が真っ先に声をかけてきた。


「拓海!今からカラオケ行こうぜ!」


「あ?あーいいけど……」


(なんか気まずいな……)


僕の心を読んだかのように悠斗は口を開いた。


「どうした?」


「……いや、なんでもない」


「そう?なら行くぞ!」


「あぁ……」


僕たちはカラオケに向かいながら、他愛もない会話を始めた。

悠斗は楽しそうに会話をしている。

そんな様子を見て僕は口を開いた。


「なぁ……悠斗」


「ん?」


悠斗はキョトンとした顔でこちらを見た。


「お前ってさ、琴音が病気のこと知ってるのか?」


僕がそう聞くと、一瞬悲しそうな表情を浮かべてから口を開く。


「……あぁ」


(悠斗も知ってたんだな……)


「拓海はさ、琴音ちゃんのこと好きなのか?」


悠斗にそう聞かれた瞬間、僕の心臓は大きく跳ね上がった。

「なんで急にそんなこと……」


動揺しているのを悟られないように、僕は平然を装って聞き返す。

そんな僕を見て、悠斗は険しい顔をして口を開いた。


「俺さ…実はさ…琴音ちゃんに告白したんだ…」


「え……?」


「でもさ……振られちゃったんだ……他に好きな人がいるって……」


悠斗は今にも泣き出しそうな顔で笑った。

そんな悠斗の言葉を聞いて、僕は胸が締め付けられるような感覚に陥った。


「……拓海」


「ん?」


「琴音ちゃんのこと好きなんだろ?なら気持ち伝えろよ」


「…悠斗」


「残りの命が短い彼女を幸せにできるのはさ……悔しいけど拓海…お前なんだよ…」


悠斗はそう言いながら、静かに涙を流した。


僕はそんな悠斗の肩を抱き寄せて言った。


「悠斗……俺が琴音を幸せにする」


「……っ!拓海……」


「悠斗、俺明日告白するよ」


僕の言葉を聞いた瞬間、悠斗は目に涙を浮かべながら笑った。


「……頑張れよ!…よし告白決起集会じゃ!!今日は歌いまくるぞ!!」


「は?なんだそれ……でも、ありがとう」


そして僕たちはカラオケに着き、悠斗のテンションのまま歌いまくった。

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