1.発覚
そんな日々が続いたある日の放課後のこと……
「拓海ー!今日帰りカラオケ行こうぜ!」
悠斗が僕に声をかけてきた。
「あぁ。いいよ」
俺は頷きながら答えると、悠斗はニカッと笑った。
「よっしゃ!じゃあ行くか!」
(琴音も誘おうかな……)
そんなことを考えていると、不意に女子たちが集まっている声が聞こえてきた。
その輪の中心にいるのは君だ。
「高橋さんって好きな人いないの?」
「えぇ!?い、いないけど……」
「じゃあ……できたら教えてね!」
「うん…わかった」
(好きな人か……)
君は苦笑いを浮かべながら返事をしていた。
悠斗はそんな君の様子を見て、急に口を開いた。
「カラオケ、ちょっと琴音ちゃん誘ってくるわ」
悠斗はそう言うと、君の方へ向かって行った。
俺はなぜかその光景から目が離せなかった。
(もしかして……悠斗も琴音のことを……)
そんなことを考えているうちに、2人は既に話し始めていたようだ。
(まぁ……今はそんなこと考えても仕方がないか……)
「拓海ーー琴音ちゃん今日カラオケ来るって!」
「え?そうなのか?」
「おう!さっき聞いたら行くってさ!琴音ちゃん、今先生と話してるから終わったら来るってさ」
「そっか、楽しみだな」
「そしたら俺らは行く準備するか!…って俺、委員会あるの忘れてた!!」
「悠斗体育委員だもんな。待ってるから行ってこいよ」
「悪い!じゃあ行ってくる!」
悠斗が教室を飛び出した後、僕は1人教室で待つことにした。
(琴音も悠斗もいないし暇だな…)
ふと君の席の方に目をやると机の上に【重要】と書かれた封筒があるのに気がついた。
「なんだこれ?」
興味本位でその封筒を手に取った。
「…………これって」
封筒の中身を見て、僕は絶句した。
「琴音が余命一年……?」
封筒の中に入っていたのは、君が余命宣告されている病気についての詳細が書かれた書類だった。
「俺……なんにも知らなかった……」
君から病気のことについて聞いたことはなかった。
(なんでだよ……)
僕はその事実に呆然と立ち尽くしていた。
すると、君が教室に入ってくるのが視界に入る。
「あ……」
君も僕が手に持っているものが目に入ったのか、目を見開いている。
「こ、琴音これ……」
僕の問いには答えず、君は近づいてきた。
そして、俺の手元に握られている書類を奪い取る。
「見たの?」
そう聞いてくる君の顔は今にも泣き出しそうだった。
「え?う、うん……」
「そっか……」
君は少しの間目を閉じた。そして、意を決したかのように口を開いた。
「あのね……私、病気であと余命1年って言われてるんだ」
僕の心臓はドクンと大きな音を立てた。
君があと1年しか生きられないという事実が受け入れられない。
(なんで琴音が……)
そんなことを考えていると、君は言葉を続けた。
「だから……私と関わらないほうがいいと思う」
(なんでそんなこというんだよ……)
僕は拳をギュッと握りしめる。
すると、君は口を開いた。
「今まで仲良くしてくれてありがとう。じゃあね。」
そう告げると、君は教室を後にしようとする。
「待って!」
僕は無意識に君の手を掴んでいた。
「え?」
君は驚いたように僕の顔を見つめている。
そんな君に向かって口を開いた。
「俺……琴音ともっと一緒にいたい……」
僕は必死に言葉を紡いだ。
君と離れたくなかったからだ。
そんな僕の言葉に君は頬を赤らめた。
「拓海君……それって……」
「俺は……琴音のことが好きだ!琴音のことをもっと知りたい!」
僕は君を真っ直ぐに見つめながら、自分の気持ちをぶつけた。
(言っちゃった……)
心臓の鼓動がどんどん早くなっていく。手に汗が滲むのがわかる。
すると、君は涙を浮かべながら口を開いた。
「私も好き」
(え?今なんて言った?)
君の口から出た言葉に耳を疑った。
「私も拓海君とずっと一緒にいたい……」
君は大粒の涙を流しながら僕の胸に飛び込んできた。
そんな君を僕は優しく受け止める。
「ずっとだよ……」
そうこうしているうちに委員会が終わったらしく、悠斗が教室に戻ってきた。
「拓海ー!琴音ちゃん!終わったからカラオケいこーぜー!」
「あぁ!今行く!」
僕は君と、荷物を持って教室を出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます