第2夜
大きな桜の木の前で1人佇む。まだ桜は咲いていてない。だけどきっと、もうあと1週間もすればこの木にもきれいな花を咲かすんだろう。その花を見たとき、人々は美しいと思うだろうか。そうであってほしい。
まだ肌寒く、あたりには誰もいない。少し離れたところに街灯があるが、ここまで灯りは届いていない。この辺りに人は滅多に来ない。それでも全くないわけじゃない。私のように彷徨い歩き、ふとこの桜を見つけてくれればいい。そして「きれいだな。」と、そう思ってくれたら…。
「きれいな桜の木の下には死体が埋まっている」とかいう話を小学生だった頃に図書室の本で読んだことがある。怖い話がいろいろのっている本だった。他にもしゃれこうべが突然はなし始めるだとか、柳の下には幽霊がいるだとか、昔話ばかりだっだ。なぜ桜の木の下に死体が埋まっていることが怖い話なんだろう。きれいなのに。当時そんなことを思ったことをよく覚えている。
この場所は中学生の頃に見つけた。たった一本だけ、そこに咲く桜はとてもきれいで愛らしかった。死体が埋まっているんじゃないか。そう思った。それから私は季節を問わず訪れるようになった。誰も私には構わなかった。
そうして気がついてしまったのだ。年々とつける花の色鮮やかさが失われていっていることに。気づいてしまった。花びらにふっくらとした艶がなくなっていることに。気づいてしまった。春の訪れを感じさせる柔らかい香りが弱くなっていることに。
その時が来たのだと思った。
いざやってみたらそんなに難しくはなかった。
わたしをひつようとしてくれてとてもうれしい。
短いおはなし 名前は決まっていません @today_birthday
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