01-30 反逆者
目の前にいる長身女3人組は冷え切ったような落ち着いた表情でこちらを見つめている。
羽織っているローブは森林をイメージしたモスグリーン色で、左胸に山吹色の楓の葉が刺繍されており、その内に黒地のツイルシャツと焦げ茶色のワイドパンツを履いている。
襟元と袖口の色は若干くすみのある銀色。
ここで戦いに発展してしまったら瞬殺されてしまう。
あの3人は何をしに来たのだろうか……?
「やっとあたしたちに気づいたのね」
最初に沈黙を破ったのは、薄紅色のポニーテールをした女性だった。
「あたしはメイリア・ルーツ。デュナミス大陸の
薄紅色のポニーテールを揺らす女性に続き、残る2人も言葉を発する。
「私はセルラ・ゼノン。メイリアの友達」
黄緑色の胸まで伸びたウェーブの髪をした女性は控えめな声で名乗る。
「わたしはネア・ファドルフ。メイリアとセルラと一緒に行動している」
青紫色のストレートの髪型をした女性は声が低く、クールな青紫色の目は彼女の性格を語っている。
「……で、俺たちに何かご用でしょうか……?」
雅稀は下手に接すると殺されると怯える気持ちを通り越した落ち着きを見せる。
「君たちはフォール=グリフィンに関心があるんだってね。それで、ここに呼び出した」
ネアは一歩前へ進んで腕を組む。
フォール=グリフィンという言葉に雅稀たちは目で反応したが、驚きのあまり言葉が出なかった。
彼らの心境を読み取ったのか、セルラは
「何で知っているのかって? 私たちの特殊能力だよ」
と人差し指を彼女の顔の近くで上品に立てる。
(特殊能力って何だよ……)
雅稀は何も理解できずに困り果てる。
「あたしらはフォール=グリフィンを倒したいと思う人が現れないか、ずぅっとアンテナを張ってたのよ。そしたら、あんたたちを見つけたって訳」
メイリアの高い声は6人の間で響く。
「フォール=グリフィンに関心を持つ君たちはカズくんにマサくん、トシくんでしょ。これからそう呼ばせてもらう」
ネアは右手の人差し指を左から右へテンポ良く動かしながら一翔、雅稀、利哉の順に指す。
名乗ってもいない雅稀たちは名前と言うよりあだ名で言い当てられて、思わず開いた口がふさがらなかった。
「まあ、俺はあいつらを倒したいですけど、そもそも特殊能力って……」
少し時間が経過してから、雅稀は気になっていた特殊能力について訊いてみる。
「いくつかあるんだけどね。私たちが探している人がどこにいるか、瞬時に察知できたり、今のあなたたちのように、肉体と魂を一時的に分離させたりする能力があるの」
セルラの黄緑色の目は雅稀たちを狙っているかの如く、鋭く光っている。
その話を聞いた雅稀は何が起こっていたのかをようやく理解した。
当たり前のように触れるはずの体が触っても感触が残らない。
来た覚えのない4つの宇宙空間が見えるところに立っているのも、3人の女性の特殊能力によるものだった。
「肉体と魂が離れているってことは、オレたちを殺しに来たのですか?」
利哉は死を覚悟したのか、馬鹿正直に尋ねた。
近くにいる雅稀と一翔は何て質問をするんだと利哉を軽く睨むが、彼は2人がそう思っていることに気づいていない。
「殺すって……そんな物騒なことはしないよ。あなたたちの階級じゃあ、こんなところに来れないでしょ。それに、周りに見つからないようにしているの」
セルラの言葉に利哉は胸をなで下ろしたが、向かいに浮いているセルラは呆れている。
「あとは、魂だけでないと、君たちだけでなくわたしたちにとっても都合が悪い」
ネアはそう断言し、
「これから、フォール=グリフィンの拠点へ移動する。姿を見られたら困るでしょ」
と続けた。
「えっ……!?」
雅稀たちは目を白黒させる。
「何? 嫌なのか?」
「いや、急な展開でちょっとびっくりしてしまって……」
一翔はネアから目を逸らす。
「そうか。実は、わたしたちが大学生の頃、フォール=グリフィンの一員だったんだ」
ネアから衝撃な事実を語られ、雅稀たちは思わず絶句してしまう。
「一度フォール=グリフィンにメンバー入りすると、辞めるってなった際に『反逆者』って言われる。だから、あたしたちは反逆者なの」
メイリアは自信満々の表情から陰りを見せた表情に変わる。
そう言われると、何も返事できない。
反逆者扱いするとは人の扱いが雑と言うのか、フォール=グリフィンはとにかく最低な奴らが群がっているとしか思えない。
「さあ、話が長くなってしまった。行くよ!」
ネアは飛び込み選手のような姿勢で赤の空間――
メイリアとセルラも彼女に続き、雅稀たち3人も反逆者と呼ばれる3人について行った。
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