01-18 全知全能が生み出した世界
さっきまでいた試合会場がドナデュウの小部屋の中に変わっていた。試合会場にいた時から少し時間が経った後の世界に移動したのだろう。
ドナデュウは椅子から立ち上がり、近くにあるベッドへ仰向けに寝転がる。試合後の回復魔術で跡形もなく怪我が治っている。
『この俺が、所詮魔術が使えない
独り言をぼやいたドナデュウは何か思いついたかのように上半身を起こし、独り言を続けた。
『いや、そもそも俺のプライドに傷を付けたのが悪いんだ。それ以前に、
ドナデュウは魔術でベッドから体を宙に浮かせ、出窓から外へ出た。
彼はそのまま身を任せるかのような姿勢で上空へ向かった。
この様子を見ていた雅稀たちも水晶玉の導きで彼の後を追った。
彼が向かった先は2つの宇宙空間が見える漆黒の空間だった。
『俺はヘヴンソウル大学の中で1番強い。しかし、何故かGFP学院に通う奴ら全員を打ち負かすことはできない。そんな現実を受け入れてたまるか』
ドナデュウは両手を真下に向かって広げた。
顔つきから何かを念じているのがわかるくらい、力が入っている。
次第に虹彩の色が青から赤に変わった。赤色の虹彩は怪しく光っている。
『俺は若くして
低く冷酷な声で言い放った後、彼は目を閉じて術に集中し始めた。
雅稀らが
ドナデュウは完全に分裂が終わったのを見届けると、無表情で赤色の空間へ飛び込み、再び闘技場へと侵入する。
そこはドナデュウとモールが戦った直後の表彰式が行われていた。
実際の結果とは真逆でドナデュウが勝利したのか、優勝の証であるバンドをはめている光景がドナデュウの目に焼きつく。
『実際に、学生大会の優勝バンドを手にしている……! 所詮
ドナデュウの目は赤い虹彩を誰かに見せつけるかの如く見開いていた。
「……あいつのプライドが高いのはよくわかったけど、
雅稀は親指と人差し指でL字を作った右手を顎に当てる。
「
利哉は腕組みして首をかしげる。
「元々
一翔の言葉に雅稀はまさかと言わんばかりの驚いた表情で
「秩序が乱れるって、
と訊く。
「可能性としてはね。480年前から
「でも、いつ
利哉は一翔の話を聞いて少し納得した。
「とりあえず、
冷静な表情を浮かべる一翔の声には怒りが籠もっていた。
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