01-18 480年前の学生大会決勝戦――後半戦

『顔が……ヒリヒリする……』

 ドナデュウは左手を顔面に当て、その場で膝をつく。


『当たり前だ。青い炎は1500℃、高いところは1800℃と高温だ。よくわかっただろ』

 モールは腕を組む。声色と態度から怒りがにじみ出ているのが感じられる。

 ドナデュウは何も言い返せないままうずくまる。


『……ガラ空きだ』

 モールは剣身ボディに真紅の炎をまとい、ドナデュウの背中に向かって斜めに剣を振り下ろす。

 真紅の炎はブーメランのような形に変化し、僅か1秒程で狙った部位に傷を入れた。


『あうっ……』

 鈍い声でドナデュウは右手から剣が離れ、大の字にうつ伏せに倒れる。


 顔面は青い孔雀のせいで赤く腫れ、背中にはブーメランで傷を負う。まさに泣きっ面に蜂状態のドナデュウはその場で両腕を震わせる。


 モールは目を細めてドナデュウに近づき、

『君は魔術師の中でも強い方だと風の噂で聞いていたが、俺が思っていた程でもなかったようだな』

 と低めの声で語りかける。


 ドナデュウは顔面と背中の痛みを堪え、黙って右手を広げ、転がっている大型の剣を魔術で引き寄せて立ち上がる。


 すると、空から大きな雷がモールを襲い、今度は彼が苦しむ。


 ドナデュウは無言で剣から水色の稲妻をバチバチと鳴らせ、モールの左脚の太ももを勢いよく斬りつける。

 それと同時に稲妻が水に変化し、斬りつけた太ももから水が流入する。


 どれだけダメージを受けているかは、モールの叫び声を聞かなくても想像できる。


『さっきはよくも言ってくれたな。今度は貴様が痛い目に遭うがいい!』

 ドナデュウは憎悪の気持ちを込めて剣を強く握りしめる。

 彼の瞳孔はぎゅっと収縮していた。



 この状況が30秒程続いたあと、空からモールを狙って落ち続けていた雷が止み、患部から流入し続けた水流も止まった。


 ドナデュウはモールが仰向けに倒れる様子を確認し、彼から5メートル程度距離をとる。


 もう勝負がついたかと思ったのも束の間、仰向けに倒れているモールが手にしている剣の切先ポイントから赤色の光線レーザーが伸び、ドナデュウの両目を襲う。


 その後、モールは怪我をしている背中に狙いを定めて剣を投げた。

 剣は回転しながら華麗な双曲線を描き、ドナデュウの背中に命中する。ブレイドからえんじ色の炎が現れ、切り傷に加えて火傷を負わせた。


 彼の白いローブは背中を中心に血で赤に染め、気絶しているかのように動かず、うつ伏せに倒れる。


『たとえ階級が1段階低かったとしても、紫階級ヴィオルクラスと同等の実力を持つ魔法戦士がいることを忘れるな。だからお前はGFP学院に在籍している学生に勝てないんだ』


 モールはゆっくり体を起こし、『ま、殺したら反則だからここまでにしておくよ』とドナデュウの様子を冷静に見つめながら立ち上がった。


 5秒経ったあと、試合終了の合図のベルが2回鳴り、ドナデュウは優勝を果たせずに終わった。



「大会で決勝まで勝ち進んだからにはドナデュウって人は強かったのかもしれないけど、傲慢な性格だったんだ」

 雅稀はふぅとため息をつく。


「僕はああいう人は好きじゃないけど、すごい戦いだった……」

 試合の余韻に浸っている一翔の隣で利哉は「ほんと! いつかオレたちもこんな感じで戦えるようになることを思ったら、今後が楽しみだよ!」と跳躍する。


「それはそうだけど、この戦いとフォール=グリフィンとどう関係してるんかな?」

 雅稀は目の前の手すりにもたれかけると、時空移動水晶ヘリクラン・クリスタルの導きで3人は勝手に宙に浮き、周りの景色が回転するように変わり始めた。

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