01-05 防御魔術の系統
昼休憩が終わった3限目、基礎防御魔術Aの授業が始まった。2限目の基礎攻撃魔術Aと同様、各々の属性に分かれて授業を受けている。
利哉ら火属性の学生は長椅子に座って前方を見つめる。
「2限目の授業で少し聞いたかもしれないが、対戦において盾などの防具は使用しない。魔術を使用してバリアを張ったり、時には剣で攻撃を受けたりして防御する。防御魔術は3つの技、物理・砲弾・波動系の攻撃魔術に対応した魔術を使わないと防御に失敗して攻撃を食らってしまう」
担当教員のホミン・フィオ・シュナ先生は腰まである緋色の髪の毛を耳に掛ける。
「要は3パターンの技の特徴を良く理解し、対戦においてどのパターンの技なのかを瞬時に見極めなければならない。今学期のこの授業のノルマは物理系および砲弾系の攻撃魔術に対する基本的な防御魔術を使えるようになること。早速、火属性における物理系の攻撃魔術の特徴について説明する」
利哉はローブの懐から手帳サイズのノートとボールペンを取り出した。
彼の周りの学生はただ床に座ってじっとシュナ先生の方を向いている。
「火属性は炎のような情熱を表す。ここにいる君たちの中には情熱を感じない者がいるかもしれないが、心の中には必ずどこかで情熱があるはず。そういう訳で、火属性の攻撃魔術は熱く、情熱を感じさせる技が多い。それに対抗するためには、より情熱を持った魔術を放つ必要がある」
シュナ先生の話をメモした利哉は口角を上げた。
いつか雅稀を熱い炎の力で勝ってみせると考えていた。
「まず、物理系の技に対する防御魔術だが、剣で受け身を取る」
シュナ先生は両手で剣のグリップを強く握りしめると、
この状態で物理系の攻撃魔術から
「次は砲弾系。片手でグリップを握り、もう片方の手で
シュナ先生は右手で剣を振り、
火球はブーメランのように奥の壁に当たる寸前でカーブし、シュナ先生に襲いかかる。
彼女は冷静な目つきで飛んでくる火球の方に剣を横に構え、左手の人差し指から小指までの4本指の第2関節辺りが
火球がシールドにぶつかりそうになる直前にシュナ先生は真剣な表情に変わった。
受講生らは破片から身を守ろうと腕でガードしようとしたが、その頃には既に消滅していた。
「最後に波動系。攻撃魔術では剣を使わないから、防御も剣を使わない」
シュナ先生は受講生の方に大きく開いた左手を差し出す。
手から50センチメートル離れたところに直径1メートル程の炎の渦が現れ、同時に熱風が吹き始めた。
受講生は握力を頼りに机の縁を必死に掴んでいる。
ここで手を離すと炎の渦に巻き込まれて丸焦げになりそうだ。
シュナ先生は両手に握り拳を作って肩幅と同じ間隔を空けると、拳の間に赤みがかった橙色の太い糸のようなものが現れた。
「波動系は攻撃魔術と同様、防御魔術でも習得するのに時間がかかる。だから、この系統の防御魔術は後期で学ぶことになっている」
そう言葉を残して両手を広げ、糸を放った。糸を取り込んだ炎の渦は徐々に小さくなり、跡形もなく消え去った。
同時に、吹き荒れていた熱風も収まった。
「3種類の攻撃魔術もあれば、3種類の防御魔術もあるということ。対戦相手の攻撃魔術の系統を見極めながら闘うのが魔法戦士だ。初めは難しいかもしれないが、実践あるのみ。習得の早さは日頃どれだけ訓練しているかにかかる。次の講義は最も基本的な物理系の防御魔術について取り扱う」
シュナ先生は剣を仕舞い、今日の講義は終了した。
――***――
夕焼けが西空に浮かぶ時間帯になった。
雅稀たちは寮のリビングに集まって講義の話をしている。
「魔術の習得の早さは日々の訓練次第って話があったけど、どこで訓練すりゃ良いんだよ」
利哉は大きなため息をつきながら腕を組む。
「それが、この前話した娯楽施設が並んでいるところの近くにあるんだ」
一翔は右手の人差し指をピンと立てると、利哉は閃いたような顔をして
「そうか!そこに行けば魔術の練習がいくらでもできるってことか!」
と身を乗り出した。
「みんな、日々の訓練とか特訓は授業が休みの日にやっているのさ! 娯楽施設と言えど、アスレチック場で遊びながら運動神経や反射能力を高めたり、無限の空間という部屋がある建物では多くの学生が魔術の練習をしたりと、腕を磨いているのさ」
「これは面白そうだ! 俺も早く魔術を勉強して上達したいな!」
雅稀はソファーから立ち上がって拳を胸の前で握りしめると、利哉も同じ姿勢をして
「オレも人一倍早く上達させるぜ!」
と意気込みを入れた。
「確か、明後日は休みだから早速行ってみようか! その前に、こんな時間からで申し訳ないけど、僕の調べ物に付き合ってもらっても良い?」
一翔は雅稀と利哉の前で両手を合わせる。
2人はお互い顔を見つめ合い、雅稀は真剣な目つきをして「そうだったな。図書館だったっけ?」と一翔の方を向くと、彼は手を合わせたまま小刻みに首を縦に振る。
「申し訳ないとか言うなよ! だって協力するって約束したんだぜ!」
利哉の言葉に雅稀も大きく頷くと、一翔は目を大きく開いた。
「ありがとう!」
彼の表情はどこか希望に満ちている感じがした。
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