01-04 攻撃魔術の系統
入学式とオリエンテーションから一夜が明け、2限目の基礎攻撃魔術Aの授業が始まった。
それぞれ自身が持つ属性に分かれ、別々の教室で講義を受けている。
雅稀がいる教室は彼と同じ水属性の学生が計100名集まっており、床の上で体育座りをしている。
「今日から、オーマラ・ユン・エリスがこの授業を担当する。今回は魔法戦士の戦闘におけるルールと武器となる剣の出し方、それから技の系統について教える」
とにかく気の強そうな女の先生だ。コバルトブルーの目は受講生全員を捉え、油断の隙を与えさせずにいる。真っ向から勝負を仕掛ければ一撃を食らいそうな威圧感がする。
「ルールは試合中に回復魔術の使用は禁止。制限時間は原則設けていないが、相手を殺さないようにすること。そして、一方の戦士が戦闘不能または降参宣言した時点で試合が終了し、勝敗が決まる。以上だ」
ルールと言っても本当に単純だ。
制限時間が基本的に無いと言うことは、意外に体力勝負のところはあるのかもしれない、と雅稀は真剣な表情で話を聞く。
「では、次に武器である剣の出し方についてだ。魔法戦士は剣以外の武器や盾などの防具は使用しない。防御方法につては基礎防御魔術の内容になるからここでは省略する」
冷静な目つきで右手を差し出したエリス先生は右手に少し力を込める。
右手に青色のオーラがじわじわ生じ、1メートルくらいの鋭い刃先を持つ剣が現れた。
銀色の
「剣を頭の中で想像しながら自分の利き手に力を込めると、このような感じで現れる。では、今から実践開始!」
雅稀たちはその場で立って手を差し出し、剣を出すことに集中する。
しかし、何も起きない。
周りを見渡しても剣を出せた学生は誰もいない。
「剣を出すことに集中しすぎだ。頭の中で剣を思い描くのだ」
たまたま横を通り過ぎたエリス先生の声を聞き、雅稀は目をつぶって自分の剣をイメージすることにした。
黄金色の
数秒経ってから右手に
雅稀は目を開けると、80センチメートル程の剣の形をした青い光が右手から出ていた。
水色のオーラは
想像通りの形ではあったが、
「まあ、初めのうちはこんなもんだろう」
教壇に戻ったエリス先生は腰に手を当てる。
辺りを見渡すと、雅稀と全く同じ剣を手にしていた。
経験を積むと剣の形や色、デザインが変化していくのだろう。
「さて、ここから技のパターンの話をする。立っている者は着席」
雅稀たちは床に座り、剣を自分の横に静かに置いた。
「技のパターンは3つある。物理系、砲弾系、そして波動系だ」
教壇付近に立っている闇属性の基礎攻撃魔術Aの若い男性教員、シアル・サッカ・ローフは左手を出して黒色の布を羽織った等身大の藁人形を出した。
「魔法戦士が使用する剣は特殊で、魔術が掛かっていないと相手を斬りつけることはできない」
ローフ先生は剣を斜めに振って藁人形を切りかかるが、びくともしない。
「物理系は魔術を掛けた剣で直接相手に攻撃する技のこと」
「砲弾形は
ローフ先生の持つ剣の
球は藁人形のど真ん中に命中し、同時にボーンと爆発音が鳴って羽織っている布に大きな穴が空いた。
「残りの波動系は特殊で、剣以外、例えば手の指先から魔術を放って攻撃する技を指す」
ローフ先生は剣を握っていない左手の指を少し曲げる。指先から紫色の雲のような ものが漂い始める。
ぱっと手を開くと紫色の雲は一瞬にして藁人形を包み、ミシミシと奇妙な音を立てながら、あっという間に藁と布がバラバラに散った。
あまりの速さに何が起こったのかがよく見えず、一翔たちは固まってしまった。
「これらが3種類の技の一例だ。中でも波動系は物理系と砲弾系に比べて難しく、習得に時間がかかる。そこで、1年生の前期は物理系と砲弾系の攻撃魔術について勉強する。波動系は後期の授業で習得してもらう」
ローフ先生は右手に握っている剣を学生の前に出して
「最後に剣の仕舞い方について話をする」
と力強い声で言った。
「剣を出した時と逆のこと、すなわち剣の姿が消えるように想像し、握っている手の力を弱める」
一翔もローフ先生の言う通りにすると、さっきまで握っていた剣が紫色に光りながら姿を消した。
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