01-03 オリエンテーション後の夕食
「オレ、袖口の色、ずっと気になってたんだけど、今日のオリエンでよくわかったわ」
利哉は両手を頭の後ろに組み、リビングのソファーに勢いよく座る。
「でもさ、
雅稀はソファーに腰掛けて腕を組む。
「この前、僕の両親が言ってたんだけど、GFP学院の敷地はかなり広いみたいだし、魔法戦士の闘技場もあるから観戦できるんだって!」一翔が興奮してソファーから身を乗り出すと「おっ! マジか!」と雅稀と利哉は目を光らせる。
「学生寮はGFP学院の敷地の南西側に建っているけど、遊園地などの娯楽施設はあの広大な敷地から少し離れた東側にあるんだ」
「すげぇなあ! 行ってみたい!」
利哉は両手を軽く胸の前で握って目を輝かせる。
「そりゃあ大学生だから、いろんなところに行って楽しみたいよな」
利哉の姿勢を見た雅稀は微笑む。
「でも、僕らは学びに来ているから、休みの日しか開いてないけどね」
一翔は苦笑いすると利哉は少し引きつった表情をした。
――***――
それから日が沈み、3人は夕食を食べに1階の食堂に向かった。
この日の夕食は魔術師が主食としている玄米ご飯にコーンスープ、おかずとしてデミグラスソースがかかったハンバーグとレタス、そして拍子切りにカットされた茹でニンジンだった。
雅稀と利哉は正方形のテーブルに隣り合い、向かいに一翔が着席した。
いただきますと合掌した後、ナイフとフォークを持ってハンバーグをカットする。
「今日のオリエンテーションで俺らの属性がわかったけど、相性ってあるんかな?」
雅稀はひと口サイズにカットしたハンバーグを口に運ぶ。濃厚な肉汁が食欲を注ぐ。
「どうだろう、人によると思う」
一翔はスプーンで熱々のコーンスープをかき混ぜる。
「え? だって俺は水属性で利哉は火属性じゃん。普通に考えたら俺の方が有利だと思うんだけど」
雅稀は親指で利哉を指すと利哉は「おいおい、勝手にオレを不利扱いすんなよ」と笑いながら雅稀に顔を向ける。
「そう思うかもしれないけど、各属性における防御魔術の習得の早さは人それぞれだから、それによって自分がどの属性であったとしても火属性に対する防御魔術が苦手なら、それが苦手属性になるし」
一翔は冷静な表情でコーンスープを飲み干す。
「じゃあ、マサが対火属性の防御魔術を身についていなかったら、オレの攻撃を食らったら大ダメージと言うことだよな!」
利哉はどこか嬉しそうだ。
「そういうことになるね」
大人しそうな一翔が初めて2人の前で笑顔を見せる。
「何だよ。絶対に対火属性の防御魔術を習得してやるからな!」
「なら、オレも対水属性の防御魔術をマスターしてやるからな!」
雅稀と利哉の間に火花が散る。
「まあまあ、そういう訳で相性は個人差があるということだよ」
一翔は苦笑いしながら2人を落ち着かせる。
「なるほどな。でも相手が何の属性が苦手なのかを試合を通して探るのも面白いかも」
雅稀は視線を一翔に切り替える。
「確かに。とりあえず自分の属性を使えるようにならないと話にならないけどな」
利哉も視線を正面に向ける。
「それなら僕もだよ。魔術師一家で育ったとは言え、実際に剣を握ったことは無いから」
一翔のその一言に雅稀と利哉は口を揃えて「えっ!?」と驚く。
「
「ああ、そうか……」
雅稀は何回か頷いて納得する。
「それで
利哉はフォークでニンジンを刺すと一翔はそうと返事をした。
「ま、まずはそこに向けて頑張るっきゃないな! 明日からの授業が楽しみだなあ!」
雅稀は玄米ご飯をガツガツ口に運ぶ。噛み応えがあって思いの他美味しく感じる。
「2限と3限に基礎攻撃魔術Aと基礎防御魔術Aがあったよな。とてもじゃないけど、3年間でゼロから魔術を習得するなんてできるか心配だよ」
「利哉が心配する気持ちはわかるけど、僕らの前世は魔術を悪用した罪人だよ。前世のことはすべて忘れてこの世にいるだけで、潜在意識が覚えているから大丈夫だよ」
一翔はキリッと目を細めて利哉を見つめる。
利哉の表情は自信に変わって大きく首を縦に振った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます