01-02 魔法戦士の属性と階級
3人は魔法戦士学科のオリエンテーションの会場である実習棟3号館の集会室に到着した。
講演会会場のような広い教室の奥に演台があり、すでに多くの学生が着席している。
中央付近の列に座ると、舞台の袖から魔法戦士学科の教員が4人登場した。
喋っていた学生が静かになると、教員らは手分けして紙袋を配り始めた。
雅稀はそれを手に取り、即座に中身を確認する。学生便覧などが入っていたが、中でも魔法戦士階級一覧表が気になった。
階級については後に説明があるだろうと思い、最初に取り出したのは日本語で書かれた時間割表だった。
第2曜日から第6曜日までが平日扱いで講義があり、1限目から5限目まで開講している。1と2限目は午前中、3から5限目は午後に行われる。
1限目の開始時刻は9時で、1時限あたり90分の講義時間が設定されている。
休憩は10分だが、2限目と3限目の間のみ1時間の昼休憩が設けられている。
(月曜日から金曜日のことを第2曜日から第6曜日ってこの世界では呼んでいるのか。ってことは、日曜日は第1曜日で、土曜日は第7曜日を指すから、この2日間は休日なんだ)
ふーん、と雅稀は暦や曜日の呼び方が日本と異なることを知った。
「それでは、魔法戦士学科のオリエンテーションを始めます。私は魔法戦士学科長のシューロ・トリフェ・マルスです。始めに、魔法戦士学科の教育目的について説明します」
純白の髪のセンター分けから覗き込むように、切れ長の目と澄んだ銀色の虹彩を持つマルス学科長は、右手で指を鳴らすとスクリーンが現れた。
「グリフォンパーツ学院大学は学士課程、大学院は修士課程および博士課程があり、修業年限はそれぞれ3年です。ここにいる学士課程の皆さんには、日常生活で使用する魔術から魔法戦士として使用する基礎から応用まで、幅広く魔術を習得することを目的として授業を行います。それでは、魔法戦士について説明します」
スクリーンから赤、青、緑、白、黄、紫の大きな球体が飛び出し、横一列に並ぶ。
赤色の球体には炎が燃え上がっているのが見える。水色の球体には大きなしずく、緑の球体には森林が広がっている。
白の球体には風が吹く様子が描かれており、黄色の球体には太陽のような輝き、紫色の球体には濃い紫色の怪しげな雲がゆっくりと渦を巻いている。
「魔法戦士は6種類の属性があります。炎のような情熱を表す火属性。多様な変化に富む水属性。恩恵を与える木属性。大気を操る風属性。希望をもたらす光属性。そして、正義を貫く闇属性。学士課程における3年間で、眠っている、つまり潜在的に秘めている属性1つを習得してもらいます」
マルス学科長は両手を挙げると、6つの球体は学生が座っている席の真上に移動し、円を描きながらゆっくり動いている。
「今から学生の諸君は体の中に秘めている魔力を引き出します。両手を自分の胸の前に広げてください」
学生はきょろきょろ辺りを見渡しながら、言われた通りに両手を出す。
マルス学科長は両手を真っ直ぐに伸ばし、目をつぶってぼそぼそ呪文を唱える。
「何か力がみなぎってくる」雅稀の言葉に利哉は「本当だ……」と言いながら自分の手のひらを見つめる。
「おい、見てみろよ。手のひらに紫色の雲が……」
利哉は雅稀の隣に座っている一翔に目をやる。
雅稀も彼につられて一翔の手のひらを見ると、確かに紫色の雲が浮かんで見える。
(そういう俺は……)
雅稀は自分の手のひらに視線を変えると、少しずつ水色の滴が出来上がっていく様子が見えた。青色の滴はゼリーのように潤っている。
「すげえよ……! 火が出てるというのに熱くない……!」
確かに利哉の手のひらには徐々に火の大きさを増している。
他の学生に目をやると光の眩しさを放っている人もいれば、風の力で髪の毛がなびいている学生もいれば、1本の小さな木を持っている学生もいた。
「皆の潜在的に秘めている魔力を解放しました。手のひらに現れているものは人それぞれですが、それは諸君の潜在的な属性を表しています。火が燃え上がっている人は火属性。1滴のしずくが浮かんでいる人は水属性。1本の木を持っている人は木属性。風の力を感じる人は風属性。眩しい光を放っている人は光属性。紫色の雲が渦巻いている人は闇属性です」
「ってことは、俺は水属性なんだ!」
マルス学科長の話を聞いた雅稀は目を丸くしながら両手を顔の前に上げる。1滴のしずくも手の動きに合わせて上へ移動した。
「じゃあ、オレは火属性か!」
「僕は闇属性か」
両隣にいる利哉と一翔は手のひらに浮いている物体をじっくり見つめる。
「これから3年間は、魔法戦士として使用する諸君の潜在的な属性の魔術を基礎から応用まで習得してもらいます」
マルス学科長は右手を胸の近くで握ると、宙に浮いていた6つの球体や学生の手のひらに浮いていた物体が跡形もなく消えた。
「では、最後に魔術師――魔術研究者、魔法戦士、占術師、手品師――にはそれぞれ『階級』というものが存在します。その中の魔法戦士における階級について説明します」
少し騒いでいた空間が一気に静まった。
「魔法戦士における階級は12種類あり、袖口や襟元の色で階級を判別できます。諸君は見習い魔法戦士なので、階級は1番低い
それで袖口の色が白色だったのかと雅稀は納得した。
ちなみに、マルス学科長の袖口と襟元の色は白金色で照明の光を反射してピカピカ輝いている。学科長であるだけのことはある。
「
マルス学科長は次々に階級の説明をしていく。
「その次が
「続いて
「
「3年次からは攻撃および防御魔術の応用を身につけてもらいます。応用の技が攻撃と防御魔術でそれぞれ3種類以上使いこなせる者に
「そして、学士課程における最高の階級が
見習い魔法戦士を含めて学士課程では7種類の階級がある。
自身が所有する階級の1つ上の階級を取得するために半年かけて授業が行われるそうだ。
しかし、上には上の階級が存在する。
「
マルス学科長はひと呼吸おき、
「まずは明日から半年間、
とはっきり言い切って階級の説明は終わった。
魔法戦士学科のオリエンテーションが終わり、学生たちは席を立って自身の寮へ帰っていった。
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