第1章 GFP学院と因縁
01-01 入学式
夜が明け、GFP学院に入学する1年生はキャンパス中央部に位置するドームの中にある式典会場に集まり、用意された木製の長椅子に着席する。
男子学生はワイシャツに黒地のテーパードパンツ、女子学生は白地のブラウスに黒地のスラックスを履いている。
それらの上に、左胸に縫われた校章と、折り目に沿って描かれた金色のラインを施したローブを着用して静かに前方を見つめている。
「只今より、フェリウル歴8879年4月1日、入学式を開会します」
10時。女性のアナウンスで入学式が始まり、学長が登壇する。
「学生の諸君、グリフォンパーツ学院大学魔術学部へのご入学、おめでとうございます。魔術研究学科540名、魔法戦士学科600名、手品学科360名、そして占術学科220名が入学され、心からお祝いを申し上げます。私は本学学長のバルス・ヘリアーヌ・ギーランと申します」
ちぢれた長い白髪と少しうねりのある白髭を伸ばし、黒の袴をイメージしたローブを着用しているギーラン学長は、最初の挨拶を優しそうな表情で述べ、規則正しく折られた用紙を見ながら続きの言葉を発する。
「グリフォンパーツ学院大学、縮めてGFP学院は魔術を利用する世界――
GFP学院が
学長は雅稀の心境を探らずに、視線を両手に広げている用紙から着席している新入生に移す。
「ゼリアザードは神なる力を発揮したシャーマンとも言われており、その力により、体に秘められた力を引き出すことに成功しました。その力を魔力と呼び、人々に魔力を引き出し、魔術を使うようになったことが、魔術師が誕生した起源です。以来、魔術を使う人々が住む宇宙空間を
学長は再び視線を用紙に戻した。
「
その後、ギーラン学長は衝撃の言葉を口にした。
「本学に在籍している学生は、前世で魔術を悪用した罪人の生まれ変わりです。本来なら、魔術の使用は許されず、魔術を使わずに生涯を送るはずだったのです。その人たちが魔術を使わない世界――
新入生は全員愕然とした。まさか、前世は魔術を悪用した罪人であっただなんて……と言わんばかりの表情を露骨に出している人が大半だ。
「諸君が本学への入学に意を決した理由は様々だと思います。しかし、潜在的な理由は前世で魔術を使用していた記憶が呼び覚まされ、共感したためであることは全員に共通しているのです。そこで、諸君それぞれが在籍する学科で魔術を極め、世のため人のために貢献して欲しいと願っています」
最後に、と学長は鋭い眼差しで正面を向いた。
「本学には学科カラーに意味が込められています。魔術研究学科の赤は『熱意を持って研究に励め』、魔法戦士学科の青は『冷静に状況判断できる魔法戦士であれ』、手品学科の黄は『人々を幸せにさせよ』、そして占術学科の緑は『思いやりを持って占術を行え』を意味しています。常にこれらの原点に立ち帰り、学業に勤しんでください」
学長からの挨拶はこれで終了した。
その後、各学科のオリエンテーションが実施されるアナウンスを聞き、学生らは指示された場所に移動し始めた。
「意外に式が短かったよな」
雅稀は両手を組んで頭の後ろに当て、青空を見上げる。
雲が何一つ無く、太陽のような恒星、
「にしても、前世が罪人だったとは思わなかったなぁ……」
利哉は腕を組んで地面に目をやる。
「まあ、ここで僕らが会ったのも
一翔は雅稀と利哉に親指をグッと突き出す。
「そうだな。俺も頑張ろう」
雅稀は複雑な気持ちを抑えて力強い眼差しを一翔に向けた。
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