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 無事、由紀の葬儀を終えた。

 骨壷に入った小さな由紀を見た時のは思わず涙が溢れてしまった。富士さんとは、葬儀が終わってから連絡先を交換し「また、何かあったら連絡してきてね」と富士さんは終始涙ぐんでいた。

 何かあったらと言われても、私は彼と付き合っている富士さんのことは妬ましくも思う。だから、連絡先を交換したものの連絡を取ることなんてないし、できれば破局してほしい。とりあえず、何かに使えるかと思い連絡先に保存だけしておいた。


 その後は何もなく、いつもの日常。

 ふと、父親の死について思い出した。なにか、引っかかる。自分で首を締め死んだ癖に、最後までもがいてたかのように首や顔に多数の引っ掻き傷。由紀と似ている。

 そういや、お母さんはお父さんが死ぬまでは毎日辛そうだったけど、死んでからは吹っ切れたかのように悲しみもせず少しばかり元気を取り戻した様に生活をしていた。

 まだ子供だった、私が悲しくて泣いていても「お父さん、どうしちゃったんだろうね」と言いながら、お母さんの顔は穏やかだった。


 あの頃はまだ子供だったから、死にたいして無頓着で、そのままお母さんとの二人暮しに馴染んでしまい次第にお父さんの話をすることは減っていった。

 もちろん、お母さんも何も言わなかった。


 なにか引っかかる。


 私は久しぶりにお母さんに連絡をして、近々実家に帰ることにした。


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