会場から5分ほど車を走らせた先にファミレスが見えた。そういや、残業のあと急いで来たから夕食もまだだったことを今更思い出す。席につき、食事がまだなことを伝えてオムライスを注文した。


 なにから切り出すべきか考えていると、「望ちゃんがどこまで知ってるか分からないんだけど」と富士さんが話を切り出してくれた。「私と由紀は、まあ達也くんの前で言うのもなんだけど何回かコンパに一緒に行ったりしてたの。ほら、由紀の今彼だって半年くらい前に行ったコンパで出会ったからさ」隣の彼に言いづらそうにしながら話してくれた。

「あぁ、そうだったんだ」私はちらっと彼を見てからそう答えて水を飲む。「それで、私が達也が付き合った頃あたりかな、彼氏に浮気されてるかもって相談も受けててさ」「え?そうなの?私つい最近会った時ずっと惚気けてたけど」注文していたオムライスが届き、ちょっとこの状態では食べづらいけど口にする。

「私も詳しいことはわからないけど、なんでだろうね」富士さんはまた涙ぐむ。隣で、彼は大丈夫か?と優しく声をかけている。正直、この光景を見ている方が私は辛い。

 黙々とオムライスを口に運び続け、食べ終える。こんな状況じゃ、彼には近づけない。不謹慎ながらもそう思う。


「聞いた話なんだけど、なんだか自殺の割にはちょっと変なこと?っていうのかな、なんだか状況がおかしかったみたい」富士さんはドリンクバーのアイスコーヒーを飲みながら、潤んだ目で私を見てきた。

「何か、由貴のこと知らない?」

「うん、ごめん。この前会った時は悩んでる様子なんて全くなかったから」

「そっか。そうだよね。ごめん」

「さっき言ってた、自殺にしてはちょっと変なことって?言えることなら教えて欲しいな」由貴のお母さんも、色々と気になる点があったと、ぼそっというてたことを思い出す。


 富士さんは、少し言いづらそうに彼をチラッと見た「言いにくいんだけど....由貴、自分で首を絞めたらしいの。ただ、顔や首に自分でつけた引っ掻き傷がたくさんあったんだって、でも警察が調べても誰かが入った痕跡も何もないらしくて」「え?それ本当に自殺なの?」「うん。指紋も何も検出できてないらしい。私も詳しくは聞いてないけど」そっか、とだけ答えた。お通夜で由紀を見た時、顔に傷なんてなかったからわからなかった。


 確かに、不審な点と言えば不審だけど。死んでしまったから、もう何もわかるはずがない。考えるだけ無駄な気もする。

「あの、達也さんもお付き合いいただいてありがとうございます。富士さんも話せてよかった。」

「いいや、友達が亡くなるなんて、ほんと辛いよね。とりあえず、家まで送るから今日はゆっくり休みなよ」そう、彼は私に言ってくれた。


 そのまま、富士さんと彼に車で送ってもらった。はぁ、ため息と同時に一気に体に疲れが押し寄せてきた。

 残業終わりにお通夜だったもん。今日はゆっくり湯船に浸かって疲れを取ろう。


ふと、自殺したのに関わらず顔や首にたくさんの引っ掻き傷を残して亡くなった父親のことを思い出した。

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