1LDKのアパートに人が歩き回れるスペースなんてそんなに無い。

 その割に足音の歩数が多く感じる。

 ゆっくりとミシ...ミシ....と確実に私のベッドに近づいてきている。

 ちょうど、私は壁側を向いている時に金縛りになってしまったから変なものは見なくて済みそうだ。変なもの?一体何がいるの?人の気配はあんまり感じ取れない。ただ、音だけが近づいてくるような感じ。もしかして、哀ちゃん?

 ミシ...ミシ....気がつけば、もう私のベッドの真横辺りにいる。

 身体が震える、怖い。こんな経験初めてだ。じゅわっと変な汗と熱で身体があつくなる。こんなことなら、テレビを付けっぱなしにすれば良かった。

 ミシ....と同時に、ベッドの端が沈み出した。まるで、人が乗ってきたように。

「はあ...ふー....」言葉にならない、ただただ荒い呼吸が続く。きっと、いや絶対哀ちゃんの呪いだ。

 私が夢で名前を伝えなかったから、きっとそうだ。


 ゆっくりと沈んで私に近づいてくる気配を感じる。四つん這いなのか、子供なのか、沈み方が浅く感じる。そう感じるのは私が哀ちゃんだと思い込んでしまっている洗脳のせいなのか?頭上に影が出来る。覗き込まれている気がする。

 電気を消して真っ暗なはずなのに、暗い中のもっともっと暗い闇のような真っ黒の影を感じた。

「ねぇ、起きてるんでしょ」

 耳元で女の子の声がしたと同時に私は気を失ったのか、アラームの音で目が覚めた。

 

 見渡してもいつも通りの部屋。家具の配置が変わっていたり、物が落ちているとかもない。夜の出来事が全く嘘のように、日の出が部屋を明るくする。

普段ならすっきりと気持ちい朝なのに。今の気分は最悪。あ、そういえば乾さんはどうだったのだろうか。夢を見たのか?早く聞きたい。

 私は急いで仕事の準備をして会社へ向かった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る