イジワル
1
最初はほんの出来心だった。
ただ、私が作った怖い話をしただけだった。
____それが、現実になると誰も思わないでしょう?
「それでね、その夢を見た人は三日後に哀ちゃんがお迎えに来るらしいよ」
友達の
「のぞみ〜、私この手の話が苦手なの知ってて話たでしょ?昔流行ったチェーンメールも苦手だったの忘れたの?」
小学校からの友達の由紀はこの手(この話を聞いた人は〜系)の話が苦手だった。
由貴とは高校生まで同じ道を進んでいたけど大学が離れてしまいそこから少し疎遠になってしまっていた。彼女は、大学で一気に垢抜けてしまい今ではSNSでよく見る量産型タイプの女の子になってしまった。
個性がないっていうか、なんというか。
昔の由紀の方が素敵だった。
どうしてみんな同じような服を着て、同じような髪型なんだろう。
どうして流されちゃうんだろう。まぁ、そんな事は思ってても言えないけど。
「由紀ってば、大人になっても怖い話が苦手なの?」
「こういう話は大人になるほど、より怖く感じるのよ!」
そんな表情は昔と今も変わらなくて、由貴だなぁと実感する。
大学卒業後、互いに忙しく仕事で近所に住んでいながらもこうやってカフェでゆっくり話すのは久しぶりだ。たまたま、SNSで繋がり、「近々会おうよ」と連絡を取り合い、こうしてケーキが美味しいと有名なカフェで待ち合わせをした。
6月、梅雨の時期には珍しく晴天でテラス席が心地よい。注文したチーズケーキとアイスカフェラテを飲みながら、彼氏ができて浮かれ状態の由紀に意地悪をしてやろうとほんの出来心で話をしたのが、冒頭の話だ。
私が適当に作り出した哀ちゃんという女の子。内容も単純で、哀ちゃんという子供が夢に現れた三日後に死ぬと言う、よくある伝染系の怖い話だ。某ホラー映画で、夢に現れて殺されると言うものを真似しただけのたった今できた話。
決して、由紀のことが嫌いだからとかではない。
私には好きな人がいた。現在も好きだけど、彼には彼女がいた。それだけの事。だから、由紀が幸せそうに惚気るから、少し意地悪してやろうと言う遊び心。案の定、由紀はしっかり怖がってしまい「あぁ、もう寝れない〜」と嘆いていた。
その後は、仕事の話や「あの子結婚したらしいよ」と年相応の話をした。
この歳になると他人の不幸話が蜜の味なのか、由紀は色んなネタを披露してくれた。あぁ〜楽しかった。
人の離婚話なんて聞いてると、たかが彼女持ちの男性に恋してる私なんて大したことないと思えた。ただ、これが結婚されると話は変わる。そう思うと少し焦りを感じてしまう。あの女と結婚する前に、私とどうにか・・・。
だから、由紀に話した夢に出てくる哀ちゃんのことなんてすっかり忘れていた。
「ねぇ、のぞみ・・・この前話してたあの話って本当の話じゃないよね?」
そう、この電話が由貴からかかってくるまでは。
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