第16話

「単位もらえませんか?」この教授で何人目だろう。先々週は穂乃果と沖縄の離島で、この世の楽園を満喫していたのに。たまたま声をかけられた渡し船のおじさんに誘われて、沖縄の無人島に行った。日差しが反射する白い砂浜に魚が透けて見えるほどきれいな海を目の前に、私は大量の追試験から目を背けていた。もちろん結果は散々なもので、私の留年は確定してしまった。一応駄目元でも足掻いておこうと教授を回ったものの、変えてくれる訳もなかった。正規ルートから外れてしまった。しかし、自分の人生の大きめの挫折なのに、どうしてか心の奥底では少し楽しんでいる部分もあった。後期からはみんな研究室に入る。前期の単位を落として留年決定の私も研究室にはみんなと同じタイミングで入ることにした。研究室選びはいくつか見学をして公開されている情報を元にそれぞれ決めて教授に挨拶に行く。この頃には進む道をしっかり見極めている人と大学生活が楽しければよいという人にだいぶ分かれていた。大学生活を楽しむ貴子と波瑠もそれぞれ研究室を決めていたので連れ立って見学に行ったが、私にはピンとこなかった。噂によると、しっかり者の明日香は入学時点から、この大学にしては珍しく就職に強い教授の頼まれごとを引き受けたりしていたので、そこに入ることは決まっていた。夏帆と明日香はどうやら同じ研究室に入ることにしたらしい。奈緒はどうしたんだろう。最近穂乃果と居ることが多くて、奈緒とは連絡をとっていなかった。

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