第12話
「ここ座ってもいい?」私が聞くと「いいよ」と応えた貴子はそんなの当たり前よ、という顔を向けて笑った。人当たりがよく、美しいという言葉の合う整った顔ながらカジュアルな格好を好む貴子は付き合う人をあまり選ばない。そのせいか、つるんでいるのは少々あべこべなメンバーが揃っていた。貴子のファンの集まりと言えなくもなかった。
そんな貴子と居るのは、ノートの一件で奈緒達と居づらくなったからだ。後ろの方の席に座っている奈緒達の視線を背中に感じなくもなかった。
入学したばかりの頃に隣の席になった、日本人形のように黒髪の長い波瑠。「一日一枚って決めてんの、チョコレート」切れ長のひとえの目に、関西弁をハッキリと喋る波留の人柄と見た目は甘いような辛いようなギャップだらけでとても魅力的な女の子だった。そんな波瑠と貴子がいるメンバーにするっと入り込んだ私は、同じアルバイト先になり代返をしてみたり、家を行き来したりとそこそこに仲のいい関係だった。同じ種類のガムを噛むくらい仲の良い波瑠と貴子に、途中から間に入れてもらったような立場を想うと負い目があったものの、彼女達との付かず離れずな関係性に心地よさも感じていた。大学生だからこのくらい尊重し合ってもいいかな、と前向きに捉えていた。この頃から私は授業を疎かにして、サークルの先輩達と夜中までカラオケに行って飲んだり、バイトをたくさん入れて遊ぶ金を稼ぐようになった。真面目で母親のような奈緒とは疎遠になっていった。
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