第7話

昨日から雨が降り続いている。何かを洗い流す為か、それとも春の前の恵みか。私は駅前のビジネスホテルに泊まっていた。一階にはコインランドリーが付いており、カードキーではなく細長いプラスチックのキーで、オートロックではない。少し硬いベットに荷物を下ろし、開かない窓の両脇にある木製の扉を閉じて早々に寝付いてしまった。胃腸が荒れているせいか、食欲はない。翌朝無料のモーニングを無理矢理口に入れたが、気を抜くと戻しそうなほどまずかった。チェックアウトを済ませ、小さいがこぎれいに白く塗られた駅のバス乗り場へ歩く。この街の至る所には観光客向けの子宝の文字。その割には若者といえば学生しかおらず、容易に過疎地の事情を感じ取れる。私自身、田舎の出ではあるもののすっかり関東での生活に慣れてしまった私には、まるでタイムスリップしてきたか見知らぬ民族の土地に迷い込んできたかのようなそんな感覚があった。バス乗り場の前にはロータリーと駐車場があり、車10台は停められそうだ。5台ほどのタクシーの中で暇そうに運転手の男性があくびをしている。

「ひとりで行きたいところに気の向くまま行ってみたら」そう送り出されたものの、どんよりとした気持ちを引きずって楽しめていないこの旅をそろそろ終わらせたいと思っている。

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