第6話

「私のノート、返してくれないんだよね」

そう珍しく愚痴った奈緒が、学食の定食プレートから顔を上げた。聞くところによると望奈がバイトの忙しさにかまけて授業をサボっているらしい。単位を簡単に取れそうな授業の出席を頼み、真面目な奈緒のとったノートを借りたあげく長い間返さないらしい。いつも優しい奈緒が愚痴るなんて珍しいが、次の授業のときに困るからだろう。短い期間にも関わらず、いつの間にか奈緒に対して友達としての信頼と好意が強くなっていた私にはふつふつと怒りが込み上げてきた。自分だってだらしなくて、今朝の授業も奈緒のモーニングコールならぬ遅刻コールで起きた。起きて携帯電話にかかってきた電話に出るといつも「もう授業始まるよ〜しょうがないなぁ」と呆れた声が耳元で聞こえて朝が来たことに気付くのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る