メルヘンと潮騒の街

  • ★★★ Excellent!!!

港のある街に聳え立つ、高い塔。その塔のてっぺんに住まう「わたし」。手の届かない天井には嵌め殺しの窓があって、そこからピアノを弾く「わたし」を月の光がスポットライト見たく照らしている……。
ヴェールを被っているのは顔を隠すために他ならないが、シチュエーションから察するに結婚式の相手として閉じ込められているようにも思える。
考え得るに「わたし」とは深窓の令嬢なのだろう。
記憶がないのは攫われた際に生じた怪我か、或いはそういった病なのか。いずれにせよ、彼女は閉じ込められ、孤独を患っている。
そんな彼女が最後に聞いた音は果たして、救か、新たな絶望か。
短い中に味わい深いストーリーを感じさせる作品。ぜひ、ご一読を。

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花かげ