第20話 対決
俺は荒野エリアに到着した。エリア名通り、荒野が広がっていた。アリサさんは立って待っていた。
「待たせたわね」
「いえ、ちょうど肩慣らしが終わった所です。約束を守って下さり、ありがとうございます」
アリサさんは俺にここまで来てくれた礼をする。俺には聞きたいことがあった。
「なんで、私を指名したの?」
俺の質問にアリサさんは真剣な表情で答えた。
「貴女が強いと思ったからです。そんな貴女と戦いたい。それが理由じゃ駄目ですか?」
「アリサさんって意外と戦いが好きなのかしら?」
「戦いが好きという訳ではありません。ただ、今の私よりも強くなりたい。それだけだよ!」
アリサさんが剣を抜く。紫色の直剣であった。それとアリサさんが敬語じゃない所って珍しい。俺もレッドサイズを構える。
「行くわよ、レッドサイズ」
「行こう、『パープルローズ』」
風が吹く。俺とアリサさんは動かない。風が吹き終わった瞬間、駆け出した。
俺はレッドサイズを振るう。アリサさんは紫色の直剣で弾いていた。俺の攻撃を的確に防御している。それでも俺は攻め続けた。やがて、アリサさんは退いた。
「流石。防戦一方にさせるなんて」
「これで終わりじゃないでしょう」
「【身体強化】」
「【身体強化】【エンチャント(闇)】」
俺とアリサさんは再度接近した。お互いの武器が激しくぶつかり合う。少しずつ、攻撃が当たるようになってきたが、同時に被弾数も増えてきた。
攻撃の手を緩めない俺とアリサさん。でもおかげでパターンが分かってきた。
「そこ!」
「っ!」
レッドサイズを振るう。アリサさんの防御は間に合わず、赤い一直線が浮かび上がった。クリティカルは出ている筈。このまま攻め続け――
「【スラッシュ】!」
「ぐっ!?」
くそ、やり返されたか。俺とアリサさんはお互いに退いた。
「……どういうことかしら」
アリサさんからHPが回復したエフェクト、バフのエフェクトが浮かんでいた。いったい何をしたんだ。……まさか。
「ユニークスキル」
「凄い。そこまで分かるなんて」
アリサさんは素直に驚いているようだった。アリサさんがユニークスキル持ちだったとは、俺も驚いている。
「チサキも、ユニークスキル持ちだよね。クリティカルの威力があまりに高い気がする」
「そうよ。お互い似た者同士ね」
「ふふっ、そうだね。……だけど、負けない」
「勝つのは、私よ」
ここからが本当の戦いだ。
俺とアリサさんは一気に近付く。アリサさんの攻撃が速くなっていた。それを必死に対処する。防戦一方か。なら、動き回るまでだ。
「攻め方を!」
一旦退いて、俺はアリサさんの周りを駆ける。アリサさんは目視で追い続けた。俺の攻め方は、アリサさんの前後左右を動き回って攻撃していく。
俺の攻撃が通るようになった。正面からの打ち合いには負けても、奇襲なら負けないぞ。クリティカルで体力を大幅に削る。
「っ」
アリサさんは後ろに下がっていく。
「逃がさない!」
俺はここぞとばかりに攻めに入る。
「【スラッシュ】!」
アリサさんは【スラッシュ】を地面に向けて放った。俺は思わず足を止めてしまう。すぐに砂煙を大鎌で払った。
そこで俺が見たのは、アリサさんが紫色の直剣を両手で上げており、光で剣身が伸びていた。背景には紫色の薔薇が浮かび上がっている。
スキルか!
「【ローズソード】!」
アリサさんは剣を振り下ろす。剣身が俺を捉えていた。これに当たれば大ダメージは避けられない。
俺は回避した。
「っ!」
だけど完全に避け切れずに、左腕がスキルによって切り落とされた。赤い粒子となって消えていく左腕。HPが削れて、もう後がない。
片腕だけで、大鎌を振るうのは久しぶりだな。
「【ツインエンチャント】闇、雷!」
レッドサイズに漆黒の雷が纏う。俺はアリサさんに接近して、レッドサイズを振った。
「片腕だけで!?」
「まだ終わっていないわ! たとえ片腕だけでも最後まで戦う!」
「ぐっ!?」
俺は正面からレッドサイズを振った。
漆黒の雷を纏ったレッドサイズでアリサさんを切り刻む。もう後のことは考えない。ひたすら攻め続ける、回避は最小限の動きで!
「攻め切れない! ぐっ!?」
レッドサイズで紫色の直剣ごとアリサさんに刃を当てる。
「はああああああああっ!!」
体全体を使ってレッドサイズを振り切った。アリサさんには赤いラインが入っていた。アリサさんの体が青い粒子になる。
「私の負けだね。……チサキさん、とても強かった」
それだけ言い残して、アリサさんは消えた。すぐに復活すると思うけどな。
「……アリサさんも、強かったわ。とても楽しかった」
俺は独り言を呟いたのだった。さて、ここにいるのも正直キツイ。だって、来る予感がする。
「見つけたぞ!」
「相当弱っている筈だ」
「見ろ、片腕が無いぞ。これじゃあ、満足に大鎌を振るうことも出来ない!」
「勝ったわ!」
何処からか情報を取ってきたのだろう。敵が現れた。正直、片腕が無いハンデを背負っているから、俺でもやられると思う。だけどここは、強気に行こう。
「次の相手は、貴方達ね。最後の時間まで、踊り続けましょう」
俺はかっこつけて、レッドサイズで敵を倒しに行った。
『終~了~! 皆さん、お疲れ様でした! これから結果発表でーす』
PVPイベントが終了した。俺の左腕は相変わらずない。つまり――
「生き残ってしまったわ」
誰にもキルされずに終わった。大体が2、3発で倒すことが出来たのが良かったのかもしれない。クリティカル、強いな。
結果発表では、俺は第10位という結果を残した。初めてのPVPイベントにしては上出来だろう。褒めてやりたいところだ。
第1位になったのは俺の知らぬ片手剣の男だった。一番強いのは間違いないのだろう。
こうしてPVPイベントは終了した。
ーーーーーーーーー
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
よろしければフォロー登録と☆☆☆から評価をお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます