第17話 本音と本気のゴスロリ

 エリスに嫌われたくないという気持ちを抱きながら向き合う。既に透明ではなく、姿を現していた。


「ごめんなさい!」


 俺は頭を下げて謝った。エリスから言葉は無い。嫌われてしまったのだろうか。


「頭を上げて、チサキ」


「うん」


 俺は頭を上げる。目に映るのは考え込むエリスの姿であった。


「チサキは、男性なの?」


 その質問に答えようとした時に考えた。エリスはNPCである。ペペノンさんとは違い、意味が通じるか分からない。だけど、エリスには嘘を付きたくない。ありのままを答えよう。


「俺は男だ。こっちでは女の子の体してるけど……男なんだ」


「うーん、じゃあ、チサキはチサキなの?」


 俺はチサキだから、これもこのまま答えよう。


「……俺は、私は、チサキよ」


 その答えを聞いたエリスは微笑んで、俺の頬に近付く。そして、頬をぎゅっと抱き締めた。


「私はチサキが好きだよ。例えどんな存在でも、男でも女でも、好き。だって、私を助けれくれたのは他でもないチサキなんだもん」


「エリス!」


 エリスは俺を、チサキを受け入れてくれる。そのことがとても嬉しかった。


「もうチサキって、案外子供っぽいんだね。よしよし」


 俺は完全にエリスに慰められていた。頭を撫でてくれた。


 俺はチサキであると、胸を張って言えるようになりたい。




 少し時間が経つ頃には、精神は落ち着いていた。これも全てエリスのおかげである。

 俺の中である程度決心も着いたし、アリサとの約束もあるからここで止まる訳にはいかない。


 ここでノックがした。


「どうぞ」


「失礼するわ。服が出来たから持って来たわ。それとこんにちわ、可愛い妖精さん」


「こんにちわ! エリスです!」


「ペペノンよ。よろしく」


 エリスとペペノンさんが自己紹介を済ませた。ペペノンさんの腕にはハンガーに掛けられた服と、手には靴があった。


「ペペノンさん、これは?」


「嗚呼、ヒール? これは貴女に合うと思ってね、サービスするわ。……さぁ、これを着て、チサキちゃん」


 青い画面が目の前に出てきた。


【装備しますか?】


 勿論だ。俺はYesをタップした。

 すると俺の体が光り輝いたと思ったら、すぐに光が収まった。エリスとペペノンさんは微笑んでいる。


「さぁ、見てみなさい」


「っ!」


 俺は個室にある大きい鏡で、自分を見た。とても可愛くて、自分かどうかも一瞬分からないほど。

 黒髪のポニーテールは変わらないが、紺色のリボンになっていた。黒のゴスロリ、黒のタイツ、黒のヒールと全体的に黒かった。


「やっぱり私の目に狂いはなかった」


「とても似合っているよ、チサキ!」


「ええ」


 俺はその場を歩いてみる。ヒールだから、歩くのが慣れていない。


「暫くは慣れが必要かも。……ペペノンさん、良い服をありがとうございます」


「私は自分の服を作っただけよ。とても似合っているわ」


 俺はここに来た理由を打ち明ける。


「私、PVPのイベントに参加するんです。これは、私の勝負服でもあります。だから、私に似合う服を作ってくれてありがとうございます! 良かったら見て下さい。私の、勇姿を」


「ええ、私もチサキちゃんに似合う服を作れて良かった。頑張って頂戴、私は応援しているわ」


 ペペノンさん、良い人だな。


「最後に、これを」


【ペペノンとフレンドになりますか?】


「私はいつでも力になるわ。貴女を乙女にしてあげる。それに、困った時はいつでもいらっしゃい」


「ペペノンさん!」


 俺はフレンド申請にYesとタップした。


【ペペノンとフレンドになりました】


 俺の初めてのフレンドである。


 俺とエリス、ペペノンさんはブティックペペの出入り口前にいた


「ありがとう」


「ううん、服を気に入ってくれて良かったわ」


「また会いましょう!」


「またね~」


「またのお越しをお待ちしております」


 俺とエリスはブティックペペを出た。




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