第10話 イベント

 エリスと契約してから3日が経過した。エリスとは仲良くやっている。お互いに敬語なしと決めるくらいには仲良くなれた。

 フードを取ったら物凄く褒められた。思わず顔が熱くなった。仮想空間の自分だけど褒められるのは素直に嬉しいものだ。恥ずかしさもあったけど。


 俺の冬休みも残り僅かになる。そんな冬休み終盤に運営はイベントを開催した。


「遂にこの日がやってきた」


「ん? どうしたの?」


「嗚呼、エリスは知らないんだっけ。今日からイベントがあるのよ」


「イベント?」


「うん。極端に言えば強い武器が手に入れることが出来るのよ」


 イベント内容はレア武器を手に入れることの出来る攻略戦。『片手剣』『直剣』『短剣』『大剣』『弓』『銃』『槍』『大盾』『杖』『大鎌』の中からレア武器を獲得出来る。

 更に超低確率で『ユニークスキル』が手に入るとの情報もあった。超が付くほどなので入手は困難を極める。


 入手方法は特定のダンジョンに行き、待ち構えているボスを倒すことでレア武器は手に入る。それぞれダンジョンとボスが違う。運営の気合が入ったイベントであった。


 俺はイベントのことが記載されている画面をエリスに見せる。


「? すみません。何かがあるのは分かるけど


「……そうなのね」


「ごめん」


「ううん、気にすることじゃないから大丈夫よ」


 そうか。NPCには見えないのか。そして俺が画面を開いていることは理解出来ると。


「チサキはイベントに参加したいほど欲しいものがあるの?」


「ええ。レア武器の大鎌があるから参加するわ」


「レア武器、チサキが欲しいと思うくらいだから強いのかも」


「強いと思いたいわ」


 実際手にしてみないと分からないのが正直なところである。性能も使い勝手も手に入れないと分からない。レア武器の数値は流石に記載されていなかった。


 気を取り直してステータスを開く。うん? エリスが覗き込んでいる?


「エリス、?」


「うん。


 どうやらステータスは見ることが出来るらしい。これがNPC共通かは分からない。俺はエリスが契約しているから見えていると考える。

 エリスのステータスも確認してみよう。


「ステータスオープン」


 エリスの前で指を広げる。エリスの目の前に画面が現れた。


「わっ!? これって」


「エリスのステータス……分からないよね。簡単に言えば自分の持っている能力を表している画面よ」


「分からないような分かるような。でも、うん。これは私を表した物なのは分かった」


 意外と呑み込みが早い。もっと困惑すると思っていたんだけど。話が早くて助かるか。

 俺は自分とエリスのステータスを見やすい場所にスライドして確認した。エリスには色々なスキルがあった。その中に【????】と表示されているスキルがあった。


「エリス、このスキルは?」


「それは、とても強いスキルだよ。私にとって切り札に近い。だから秘密ね」


「えぇ。教えても良くないかしら」


「ダーメ。例え主様であるチサキでも教えられない。その代わり強いから期待して」


「その時が来たら任せるわ」


「うん! 任せてね」


 エリスの切り札なので無暗な詮索はしない。むしろ待ち焦がれる。エリスの切り札、どんなのだろう。


「エリス、切り札使っていたらスパイダーに捕まらなかったのでは?」


「仲間達を逃がすので精一杯だったから、使う前に捕まっちゃった」


 一応、後隙みたいなのはあるらしい。使えるかどうかは俺の腕次第か。


 ステータスを一通り確認した後、必要な物を揃えてワンスターを出た。

 目的地は決まっている。大鎌のレア武器が手に入るダンジョンだ。




 外は晴天。だが今いる森の中は薄暗かった。木の葉が光を遮っているからだ。少々不気味な森だった。


「チサキ、大丈夫?」


「ええ、大丈夫よ。エリスは?」


「不気味だから怖いかな」


「不気味なのはちょっと分かる。まぁ大鎌が手に入ることに比べれば我慢出来るかな」


 不気味さは感じる。恐怖もあると思う。それでもレア武器の大鎌が欲しいと考えれば不思議と恐怖は感じなかった。


 進み続けるとダンジョンの入り口まで辿り着いた。ダンジョンの入り口は洞窟によくある形をしていた。入り口から覗き込んでも中は暗くてよく見えない。

 ここまで来た! このダンジョンにはどんなものが待ち構えているのか。楽しみだな。


「楽しそうだね」


「そう見える?」


「見えるよ。だって口角上がってるもん」


 どうやら俺は感情を顔に出してしまったらしい。エリスにバレた。でも仕方ないだろ。楽しみで仕方ないのだ。

 どんな敵が出てくるのか楽しみだし、レア武器の大鎌も楽しみなんだ。イベントには楽しみしかない。


「私は楽しみで仕方ないのよ」


「一応警告すると危ないからね」


「上等!」


 エンジョイ勢魂、見せてやる。どんな敵も障害も全て乗り越えてやる。


「エリス、こんな私だけど付いて来てくれる?」


「当たり前だよ! 一緒に頑張ろう!」


「無理はしないでね」


 エリスもやる気に満ちているようだ。さっきの確認は蛇足みたいだったかな。


 俺はアイテムボックスからランプを取り出す。ランプの下に手を置くと炎が浮かび上がった。中に魔法陣があり、俺の手に反応して炎を出した。

 エリスを見る。


「行くよ」


「うん!」


 俺とエリスはダンジョンの中へと足を踏み入れた。





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