第9話 契約

 スキルを使用し満足した俺はエリスを助ける。助ける前に何やら称号みたいなのが現れたが


「邪魔」


 すぐさまタップして消した。なんて書いてあったのか一瞬しか見ていないので分からない。

 そんなどうでも良い事はさておいて。俺はエリスを蜘蛛の巣から助け出す。改めて思うが、本当に小さいな。


「助けてくれてありがとうございます、チサキ」


「礼には及ばないわ。助けられて良かった」


 可愛い子を助けるのは男の憧れですから。今少女だけど。


「実は、もう1つ頼みたいことがあります」


「ん?」


「私達妖精は集団で行動します。私も集団で行動していたのですが、スパイダーに襲われ、囮になって今の状況です」


 囮になったのか。つくづく優しいんだな。


「私は捕まって仲間達のことが心配です。ですから、仲間の安否が確認出来るまで一緒にいてくれないでしょうか?」


「良いわよ。乗りかかった船だから」


「っ! ありがとうございます!」


 エリス1人だと心配だ。HPは低いしモンスターに襲われないとも限らない。俺がいた方が多少は安全だろう。

 エリスは俺の肩に乗り、案内する。


 エリスと仲間の妖精達は何かあった時の為に集合場所を決めていた。

 今、その集合場所に向かって歩いている。大鎌は出したままだ。


「チサキはとても綺麗な顔をしていますね」


「そう、かもね」


「初めて見た時から綺麗だと思っていました。フードを被るなんて勿体ないくらいです」


「ありがとう。でも、恥ずかしがり屋だからフードは被るわ」


 勿体ない事は分かっているんだけど、まだ顔を出せる勇気が無い。……人前じゃなければ出そうかな?


 その後も俺はエリスの案内の元進んで行く。


「ここです」


 俺とエリスは集合場所に到着した。木々に囲われた場所で地面には多くの葉と草があった。


「たのもー」


 俺は気軽に声をかける。が変化はなかった。するとエリスが飛ぶ。


「エリスです! チサキのおかげで帰ってくることが出来ました!」


 エリスが声をかける。声を出して数秒もしない内に変化が訪れた。木々から妖精達が現れたのだ。

 数は20くらい。女性もいれば男性もいた。髭を生やした老人もいた。エリスが向かうと、彼らはエリスを囲んだ。


「エリス! 無事で何よりじゃ」


「本当に心配したんだぞ。もうあんな無茶はやめてくれよ」


「エリス! 私、貴女が心配で」


「みんな、ごめんなさい。でも帰ってくることが出来たよ」


「「エリス!!」」


 妖精達はエリスの再会に喜んだ。仲間達が喜んでいるのを見た俺は、助けて良かったと心の底から思う。

 自然と微笑んでいた。


「……エリス。私は帰るわ」


「チサキ……待って!!」


 俺は帰ろうとしたらエリスが声をかけた。まだ何かあるのだろうか。


「少しだけ、待っていてくれませんか?」


 真剣な眼差しで俺を見てくる。この後は別に用事は無いから待つことにするか。


「うん、待っているわ」


「ありがとうございます!」


 エリスは妖精達と少し離れた場所に移動する。話し声は聞こえない。

 俺は座って近くの木に寄り掛かりながらエリスを待つことにした。




 外の日は沈みかけていた。夕日が森の中を照らす。葉には夕日の光が当たっていた。橙色の光に染まっていた。


「チサキ、お待たせしました」


 エリスが仲間の妖精達と共に現れた。仲間の妖精達は真剣な表情をしていたり、涙を流す者もいた。

 ど、どうした?

 俺は立ち上がる。


「話は終わったの? なんか泣いている妖精もいるけど」


「それは、私がここを離れるからです」


「離れる?」


「私は、チサキと共に居たいのです!」


「えっ!?」


 エリスの言葉に俺は動揺する。一緒にいたいって、本当に?


「仲間は大丈夫なの?」


「大丈夫です。私が居なくてもみんなは生きられます。みんなもチサキと一緒にいることに賛成してくれました」


 話し合いってそういうことか。それは涙を流すか。仲間の旅立ちだから。


「チサキ。私と契約してくれませんか」


【エリスと契約しますか?】


 エリスの言葉と共に画面が表示される。青い画面にエリスとの契約を決める二択があった。

 YesかNoか。


 俺はエリスの瞳を見る。……真っ直ぐだった。本気で俺に着いて行きたいと思っているのだろう。

 よし、俺も覚悟を決めた。


【Yes】


 俺はYesをタップする。


【契約が完了しました】


 これで俺とエリスの契約は完了した。エリスは嬉しそうな表情をして俺を見ている。


「これからよろしくね、エリス」


「よろしくお願いします、チサキ」


 エリスは微笑んでくる。めっちゃ可愛い。妖精ほど可愛い笑顔を俺は知らない。

 エリスが加入したからと言って基本はソロプレイを中心にやっていくつもりだ。


 契約が完了したエリスは仲間と別れる。仲間の妖精達からは「エリスを頼みます!」と言われた。エリスの仲間は俺の仲間でもあると身勝手ながら考えていた。

 俺はエリスを大切にしていこうと思う。託されただから。


 こうしてスキルを試す為に森に行った結果、妖精と契約をした。何が起こるか分からないものだ。

 俺とエリスは森を抜ける。そしてワンスターへと向かって行ったのだった。





ーーーーーーーーー


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

よろしければフォロー登録と☆☆☆から評価をお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る