第8話 スキルを使って不思議な出会い
俺は掲示板で近頃イベントがあることを知った。それはレア武器が手に入るイベントだった。入手方法は追って伝えられる。
これが掲示板で得た情報だった。
そういえば質問返してなかった。
『イベントには参加します。大鎌があるので手に入れたいですね』
勿論参加する。大鎌のレア武器は欲しい! 今の大鎌でも不満は無い。ただ今の大鎌より強いだろう。強くなる為に欲しいのだ!
『頑張れ』
『俺も頑張ってみる』
『俺は応援している。情報が出たら考えるつもり』
応援は素直にありがたいかな。挑戦する人もいる。
そろそろ退出するか。
『それじゃあ私は抜けますね。改めてありがとうございました』
俺は掲示板のみんなに別れの言葉を打った。
『また来てね』
『時々で良いから来てくれ』
『出来るならプレイヤー名教えて欲しいけど……頑張ってね! 応援している』
『大鎌使いの掲示板を見つけたら来てくれ。時間ある限りは開いとく』
『待ってるぜ』
みんな……。俺、頑張るから!
奇妙な友情みたいなのを感じつつ掲示板を抜けて閉じた。
イベントに参加する為、俺は自身のステータスを確認した。
「スキル取ってなかった」
そう、スキルを今まで取ったことが無いのだ。今まで俺は大鎌を振り回しステータスとクリティカルで戦っていた。
スキルがあるとは知っていた。だが取ってこなかった。
「スキル取ろう」
スキルはスキルポイントを消費して取得することが出来る。スキルポイントはレベルアップした時に手に入る。またスキルに関係した特定の行動をすれば同じく取得出来る。
俺はスキルの一覧を見る。魔術師が使うようなものはいらないかな。
「よし、まずはこれ」
俺はスキルポイントを消費し【身体強化】を取得した。
【身体強化】Lv1
スキルにもレベルがあった。上げ方は分からない。使った回数とか?
スキルポイントはまだあるからもう1つ取ってみよう。ステータスが向上するスキルが好ましい。
俺はスキルと睨めっこする。
「【エンチャント(闇)】か」
俺の目に入ったのはエンチャント。付与魔法とも言う。
エンチャントは武器に属性を付与出来る。俺が目に入ったエンチャントは『闇属性』を付与することが出来るだろう。
俺はスキルポイントを消費して【エンチャント(闇)】を取得した。
【エンチャント(闇)】Lv1
2つのスキルを手にした俺。このまま外で試したい気持ちはあるが、一度休憩をすることにした。
俺はゲームからログアウトした。
現実で1時間が経過した。俺は再びインフィニティオンラインにログイン。
早速俺は外に出る。ワンスターを抜けて暫く歩いた。草原まで歩くと足を止めた。
ここまで来れば良いだろ。スキルを使ってみるか。
「【身体強化】!」
【身体強化】を使う。変化は感じられない。走れば分かるかな。
俺は走った。
「っ!」
いつもより速い。身体も軽くて動きやすい。このまま走ればすぐに森へ……っ!?
俺は急ブレーキをするように止まった。目の前には木があった。つまり、ぶつかりそうになったんだ。
「慣れが必要かもな。身体強化は」
身体強化を出来る限り使って慣れていこう。MPは減っていた。
そういえばいつもより早く動いて風も感じたから……やっぱ取れてたか。
俺はフードを被り直した。
【身体強化】の感覚は大体分かった。身体能力が上がって戦いやすくはなる。後は慣れだな。
【エンチャント(闇)】も試してみよう。出来るなら実戦を積みたい。ということで森に入ろうか。
森に入った俺はひたすら歩いていた。【エンチャント(闇)】を試す為にモンスターを探している。しかしモンスターは現れない。どんどん森の奥まで進むことになる。
「出てこい」
ここから先は俺も知らない。何があるか分からないし、迷子にはなりたくない。
だから俺は大鎌を出して、近くの木にバツ印を刻む。なるべく深く刻んだ。
大鎌を装備したまま俺は森の奥まで進んで行く。所々の木に傷を付けて目印を作った。
「それにしても、ここまで広いとは思ってもいなかったぞ」
森を歩いても歩いても出口が見えない。反対側まで辿り着けない。ここまで広いとは予想外だ。しかもモンスターと鉢合わせることが無い。どれだけ進んでもモンスターとは出会わなかった。
そのまま進んでいると視界に変化が訪れる。
「蜘蛛の巣か」
木々に蜘蛛の巣が張られていた。大きく広く張られている蜘蛛の巣。それは1つだけじゃない。目に入る限りで沢山あった。
不自然だ。蜘蛛の巣がこんなに張られているなんて。まるで何かがここにあると言っている風にも見える。
「進んでみよう」
俺は蜘蛛の巣が張られている場所に進んで行く。蜘蛛の巣は上にも下にも張られている。進む度に蜘蛛の巣は多くなっていた。
邪魔になる蜘蛛の巣は大鎌で切り裂いていく。
ほんと、何があるのか。
「――――っ!」
「声まで聞こえてきた」
何を言っているのか分からない。けど何かがいることは確定したな。……視線も感じるし。
俺は視線がする大体の方向を見る。
草が揺れた。奥にもいるしここにもいる感じか。しかし今は姿を現さないと。
知らない間に隠しイベントでも踏んだのだろうか。そもそも隠しイベントがあるかどうか。サブストーリー的なのに踏み込んだ? 考えても答えは出ない。
俺は進み続けて、一番大きい蜘蛛の巣と対峙した。綺麗に広がっている。通行止めをするように。
奥から声が聞こえてくる。恐らくここに何かがいるんだ。
大鎌を振り、蜘蛛の巣を切り裂いた。
「こうなっていたんだ」
ここは開けた場所だった。異質なのは蜘蛛の巣で辺りが囲われていた。まるでドームだな。そして奥にも蜘蛛の巣があり、何かが張り付いていた。
緑色の髪。長さはセミロングくらい。白い衣装に身を包み、透き通るような羽があった。何より、
俺は奥まで進んだ。
「貴女は?」
小さき者が質問してきた。
「私はチサキ。見ての通りの人間」
「私はエリス。妖精です。悪いことは言いません。今すぐ――」
「やっぱり、ね」
妖精のエリスの忠告を遮って後ろを振り向いた。後ろを振り向くと視線の正体が現れた。
黒い身体に赤い眼。眼は複数あった。スパイダーだ。数は5匹。
「ここにいたら危険です! 早く逃げて!」
エリスの声が聞こえた。1回向き直るとエリスの表情が視界に入る。表情は真剣なものだった。必死な目で俺を見ていた。
本当に俺を心配しているんだ。小さい身体で、HPも少ないのに。――だけど。
「断るわ」
「!? どうして!」
「貴女を助けたいから」
不思議と高揚していた。エリスを助けたいからかな。誰だって女の子を助けるのには憧れるもんだ。それに、捕まっているエリスを見殺しには出来ない。優しく、勇気ある妖精だと思うから。
「大丈夫、私強いから」
俺は強がってみた。待ってくれたスパイダー達に視線を移す。全てLv8だ。さて、本来の目的を思い出せ。俺は【エンチャント(闇)】を試す為にここにいる。スパイダー達はスキルの試し斬りに付き合って貰おう。エリスを助けるのは結局の所ついでだ。
スキルを試す為に戦い、エリスを助ける。
「【身体強化】、【エンチャント(闇)】」
【身体強化】でバフを付ける。【エンチャント(闇)】を使うと大鎌に黒色のオーラが纏う。こういう感じか。かっこいいな。
スパイダーが俺に近付いて跳び付いてくる。そのスパイダーを大鎌で切り裂いた。スパイダーの身体に切り傷が出来て跳び付きは失敗に終わる。
地面に落ちたスパイダーに大鎌を突き刺した。
「ジャアアアァァァ!!」
スパイダーは声を上げた。身体を動かしたと思ったら動かなくなる。HPが0になりスパイダーは消滅した。
【身体強化】と【エンチャント(闇)】を使っているからいつもよりダメージが多い。残り4匹。
俺はスパイダーに近付く。スパイダーの1匹が俺に向かってくる。スパイダーは跳んで突撃してきた。俺はその攻撃を躱して。大鎌でスパイダーを貫く。同じように声を上げたがまだ生きていた。
引き抜いてもう一度攻撃しようとして、残りのスパイダーを確認する。スパイダーは糸を吐いた。俺はスパイダーに追撃するのをやめて糸を吐いたスパイダー達に近付く。糸は避けた。
スパイダー1匹を蹴り上げる。蹴りでダメージを負った。
そのまま大鎌で縦、横に切り裂く。スパイダーは消滅。残り3匹。
スパイダーは俺を囲んで糸を吐いてきた。俺は間に避けて大鎌をスパイダーに振り下ろす。スパイダーに大鎌が突き刺さる。ダメージは、クリティカルが出て大ダメージ。
スパイダーを縦に切り裂いた。顔の方向にやってしまったのでグロいことに……の、残り2匹。
負傷していたスパイダーは動かなかった。まるで敵わないことを理解したように。
俺は大鎌を振り下ろす。HPが0になり、消滅した。残り1匹。
スパイダーは俺に糸を吐いてきた。俺は避けてスパイダーに近付く。スパイダーを蹴り飛ばす。その方向は蜘蛛の巣だった。
蜘蛛の巣に捕まるスパイダー。完全に自業自得だ。
俺はスパイダーに近付いて大きく大鎌を振った。交差した黒の線がスパイダーに切り刻まれる。
「アッ!!? ジャアアアァァ……」
ダメージはクリティカルが出て、オーバーキル。蜘蛛の巣ごと切り裂いた。
スパイダーは蜘蛛の巣と共に崩れ落ち、黒のエフェクトを出しながら消滅した。
戦いは俺の勝利に終わった。
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ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
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