第7話 クリティカル
俺は初ログインを果たしてから大鎌を戦い方を考えていた。
情報源はゲーム内に存在する掲示板。掲示板を通して大鎌使いに話を聞き出す。掲示板を利用するのは初めてだから緊張したのを覚えている。
大鎌使いの話を聞いて共通しているのは
『STRとAGIに振って回避しながら攻撃を与えた方が良い』
とのことだった。
攻撃力と素早さを上げて攻撃をする戦い方だ。大鎌使いの誰もがこの戦い方を推奨した。
俺もステータスのSTRとAGIを上げた。上げたステータスをインフィニティオンラインで試した。結論から言えば確かに戦いやすくはなった。
けど個人的にはもっと大鎌の可能性があると思った。そして俺にしか出来ない戦い方を模索していた。
今日も俺はインフィニティオンラインにログインした。大鎌の戦い方を身に着ける為に。まだ自分が少女だということには慣れていない。時間が経てば慣れてしまうのだろうけど。
ゲーム時間で早朝。朝日は昇っていた。
現在、俺は依頼を受けていた。
『オークを倒せ』
商人が使う道がオークによって襲撃された。このままでは馬車は通ることが出来ない。オークを倒し道を取り戻せ。
らしい。その依頼を俺は受けて、今は木陰に隠れてオークが出てくるのを待っている。
俺が依頼を受けた理由は勿論大鎌で戦う為だ。それにオークと戦えるのもワクワクする。
ただ待つのは暇なので俺はサンドイッチを食べていた。味覚もあり、ちゃんと味を味わえる。美味しかった。自分で作ってみても良いかもしれない。料理のスキルがあったら取ってみよう。
サンドイッチを食べ終わって数分が経過した。
「来た……」
木の中を潜り抜けて道にオークが現れた。
俺より巨体で筋肉質な身体。顔は豚に似ている。腹は残念なことに膨れて太っている。顔は豚に似ているが、色は緑色だった。
レベルは8で俺と同レベルだった。
オークは道を見渡す。それはまるで獲物を探しているみたいだった。何回もやったのか。
俺はオークの前に姿を現した。逃がす前に俺を見たら止まるだろ。
実際止まった。俺を見るなり顔が歪む。邪悪なスマイルだった。
「私を獲物だと勘違いしたようだけど、今回獲物になるのはオークよ」
俺の大鎌の糧になって貰うとしよう。
オークが邪悪スマイルを保ったまま俺に拳を振り下ろす。俺は冷静に避けた。
「出番よ」
俺は大鎌を出して構えた。オークとの初戦闘である。
オークの攻撃は非情に分かりやすい。相手に向かって拳を振り下げる。その行動は俺からしたら遅かった。見たタイミングで避けることが出来る。AGIを上げたから前より素早く動けた。
今度はこっちの番だ。俺はオークの攻撃を避けた。拳は地面に当たり土煙が舞う。俺はオークの腕を狙い大鎌で斬撃を加える。
「っ!」
オークの表情が歪む。ダメージを与えられたからな。
俺は後ろに引いて次の攻撃に備える。オークは再び拳を振り下ろした。俺は回避した。回避した所にもう一撃来た。俺は再度回避。
オークも学ぶか。このままじゃ俺にやられることが分かるくらいには知性があると。
「私も油断しない方が良いかしら」
慢心、油断、ダメ絶対。
俺がそんなことを考えていたらオークの攻撃が飛んでくる。
俺は回避してそのままオークに近付く。軽く跳躍してオークの脇腹に攻撃。
「グアアアアッ!!?」
えっ? そこまで悲鳴上げる? オークは脇腹が弱点という話は聞いたことない。いつも通り攻撃を加えただけなのにどうして?
俺が不思議に思うと答えがオークの脇腹に表記されていた。
【クリティカル】
クリティカルか。そういえば俺LUKに50振っていたんだ。……クリティカル。
もしかして、俺クリティカルが出やすいのか。LUKが50もあるから。
「それなら」
狙ってみよう。クリティカル。
俺はオークに接近。オークは攻撃を防ぐために腕を交差する。防御の構えだがダメージは受ける。俺は大鎌を振った。
ダメージが入る。オークの腕に傷が付いた。
クリティカルじゃないか。なら何度でもやるだけだ。
大鎌を振るう。ダメージが入る。クリティカル。大鎌を振るう。ダメージが入る。クリティカル。
「グオオオオオ!!」
おっと。流石に対抗してくるか。
オークは雄叫びを上げて両腕を広げる。HPは半分を切っていた。怒りの表情で俺を睨む。
良いね。こっちの方がやりがいがある。口角が自然と少し上がった。
「ウオオオオ!!」
オークが近付いて拳を振り下ろす。何回も振り下ろしてきた。俺はその全てを回避し、大鎌で攻撃する。オークの身体に切り傷が出来た。
HPが3割に減った。これが最後の攻防だ。
俺はオークに近付いて左足を切り裂く。接近した勢いのまま背後を切る。振り返りながら腕で攻撃するが、俺は姿勢を低くして回避。接近して右足を切り裂いた。立てなくなったオークは膝立ちになる。そして、大鎌を横に振って首を切り裂いた。
首と胴体が離れる。力なく倒れる胴体。落ちる首。オークのHPは0。紫色のエフェクトを出しながら消滅した。
俺のレベルが上がった。Lv8~Lv9になる。
胴体があった場所には1つのドロップアイテムが落ちていた。
『オークの生肉』
袋に包まれたオークの生肉をストレージに仕舞う。
これで依頼達成だな。途中本気を出したようだけど倒せて良かった。
「それに、掴めたような気がする」
うん。クリティカルを戦い方に組み込もう。
クリティカルを確定で出すことは不可能だけど、火力は上がる。魔物も無視出来ないし、戦いを自分有利で進められる。
何より火力はロマンだ。安定性は無いけど火力が出る戦術だと思う。
俺はそう考えながら道を歩く。ワンスターに戻ると宿屋に行って自分の部屋に入った。
「早速お世話になった大鎌使いの人達に連絡しよう」
俺はメニューを念じて開く。そこから掲示板を開いてメッセージを入れた。
『自分なりの戦い方を確立出来そうです。大鎌の戦い方を教えてくれてありがとうございます』
俺は大鎌使いの人達に感謝する。すると返事が来た。
『それは良かったです』
『おめでとう!』
『俺達の期待の星! 頑張れ!』
期待の星まで言われると照れる。俺はまだまだ大鎌使いの卵だよ。
すると、掲示板に気になることが書かれた。
『そういえば、イベントには参加するの?』
「イベント?」
俺はイベントについて聞いた。
それはレア武器獲得のイベントであり、大鎌がその中にあった。
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