第4話 Lv2VSLv10

 巨大なスライムは俺に向かって青色の触手を伸ばしてきた。俺は大鎌で応戦する。切り裂いたがスライムに入るダメージは少なかった。


「少ない。差があるから当然か」


 スライムは触手を何度も伸ばしてきた。俺は大鎌で何回も切り落としていく。今の所防戦一方であった。

 やっぱ勝つことは難しいか。レベルに差があるからな。でも出来るなら勝ちにいきたい。俺が戦闘不能になっても困るのは俺だけだ。

 1回本体に近付いてみた。


「!?」


 スライムは俺の行動で動揺したと見た。俺は大鎌を勢いよく縦に振るった。刃は通りスライムを切り裂く。

 ダメージは……さっきより入っているな。――作戦変更、出来る限り勝ちを目指す。


 触手を伸ばそうとしていたので囲われる前に一旦離脱。スライムは触手を伸ばす。俺は大鎌で切り落とした。切り落とした後に接近する。本体に近付き大鎌を縦に振るった。スライムにダメージが入る。

 スライムが動く。俺に突進する。だが俺も横に回避した。俺の方が攻めているしダメージも与えているけど、相手は格上のスライム。油断出来ない。


「やああああぁ!」


 俺はスライムを切り裂く。ダメージが入っていく。スライムも触手を負けじと触手を伸ばす。それを大鎌で全て切り落とす。スライムが、跳んだ!? 影が出来た。俺は回避する。あんなに跳ぶものなのか。


 触手を切り裂き、本体に大鎌を振るい続けた。触手以外の攻撃は全て躱した。このままいけば普通に討伐出来る。

 ――ん? スライムが膨らんでいく。何かの攻撃の予兆か!? 不味い離れないと。


「えっ?」


 俺の腹に触手が巻き付く。すぐに大鎌で切り裂いて、急いで離れる。けど影響を受けない訳がなかった。

 スライムが光った瞬間、爆発した。俺は爆風に巻き込まれて飛ばされた。


「いったぁ……」


 俺は先程の場所より少し離れた場所で起きる。爆発に巻き込まれて痛いだけで済んだのはここがゲームの世界だからだろうな。まさか爆発するとは思わなかったけど。

 大鎌は俺より少し離れた場所に落ちていた。急いで立ち上がると、触手が俺の腹に巻き付いた。


「うわあっ!?」


 俺は触手に持ち上げられて宙に浮かんだ。スライムは鋭い目付きで俺を睨んでいる。つまりスライムは怒っていた。

 俺の体力は4分の1くらいだ。巻き込まれただけで大ダメージかよ。

 よく見ると俺の姿がスライムによって反射されている。その姿はポニーテールのした美少女……フード取れてる!?

 俺は両手でフードを被ろうとした。その前に両腕に触手を巻き付かれてしまった。


「やめろ! 離せっ!」


 ある意味ピンチだ。シチュエーションがやばい。これ性癖とか歪むよ。運営大丈夫か?

 変な心配をしていると首に触手を巻き付いて、絞めようとする。


「うっ、がっ……」


 当然首が絞められてるから声は出ない。痛いだけで息苦しさは感じなかった。けどダメージがどんどん入っていく。スライムは俺を一発で倒せる。あえて長く苦しめようとしていた。悪趣味である。


 どうするか。触手から抜け出すにはある程度ダメージを与えるか切り落とすしかない。大鎌は地面に置かれている。宙に浮いている以上、大鎌なしでダメージを与える必要がある。

 蹴りは触手に届かないしダメージが与えられるとは思えない。拳は論外。詰んだかと思ったが、まだある。


「うっ、うっ」


 俺は最大限の力で両腕を引っ張る。なんとか両手を首に巻き付いている触手を掴んだ。それを、まで運んだ。俺は触手に噛み付いた。


【クリティカル】


「――!!」


 スライムの反応は考えない。俺は触手を嚙み続けた。噛み続けて、噛みちぎった。少しでもダメージを与えようとする。噛んだスライムは嫌だけどそのまま飲み込んだ。味は不味かった。


 スライムは俺を離した。俺は着地するとすぐに大鎌を回収する。スライムを食べてHP回復、にはなりません。ただ不味かっただけじゃん。


 だが良い事もあった。それはクリティカル。インフィニティオンラインでは攻撃力2倍になるそうだ。初クリティカルがまさかの噛み付きになるとは思ってもいなかったけど。


「クリティカルが出れば、スライムを倒せる」


 LUK、出番だぞ。俺はクリティカルを出し続けてスライムを倒す。これが、俺の作戦。ある意味運ゲーの始まりだ。


「……行くぞ」


 俺は大鎌を持って駆け足でスライムに接近する。スライムは触手を伸ばしてくる。俺にはダメージソースが増えたことで得しかない。駆け足の速度を落とさず、触手を切り裂いた。クリティカルが出る。


 本体に近付いて大鎌を振るい続けた。連続で、縦横無尽に。一切の容赦なく切り刻む。正面からの触手は出る前に切り落とした。クリティカルも出て、先程よりもダメージが出た。LUK50もあるのに今まで何故出なかったのかは不思議だけど、確定じゃないから仕方ない。


「せい! はあっ! っ!」


 スライムの背中から触手が伸びてきた。正面は無理だと判断したのか。俺は退いて、触手を切り落とす。

 スライムの突進。俺は回避して、スライムの着地と同時に接近。大鎌を何度も振るう。クリティカルの効果もある。


 スライムのHPがあと1割になった。スライムは跳んで俺を圧し潰そうとする。がその攻撃は俺には通用しない。

 俺はスライムの攻撃を回避。スライムが辺りを見渡す前に俺は跳んだ。跳んだ俺に見えたのは、スライムの探している様子だった。


「これで……最後!!」


 俺は勢いに任せて大鎌を振った。力を籠めた大鎌はスライムの身体を貫通した。俺は大鎌を引き抜く。青色の体液が飛び散った。

 スライムのHPは0。青色のエフェクトを出して消滅。なんとか倒すことが出来た。




「戦闘終了、お疲れ様」


 俺は大鎌に感謝の言葉を伝えると収納した。

 巨大なスライムを倒した俺は経験値を貰いレベルアップした。Lv2~Lv8に上がる。相手はスライムとはいえ格上。妥当な所だろう。

 変な感じだがレベルアップは悪くない。自分が褒められたように感じる。不思議だ。

 スライムを倒してドロップしたアイテムがある。それは瓶に詰められていた。いつの間にと思ったがここはゲーム。気にしたら負けだ。……料理にも使える? 本当かぁ?

 疑心暗鬼になりながらもストレージに仕舞う。


「すみません、ちょっと良いですか?」


 誰かに話し掛けられた。俺は声の主を見て――驚いた。


「えっ?」


 思わず声が出てしまう。何故なら、俺が現実で知っている人にそっくりだからだ。


「ん? どうかしたのですか?」


「……いえ。貴女を何処かで見たような気がしたけど、気の所為だった」


 嘘である。俺はこの金髪美少女、に似ている女の子を知っている。まだ本人と確定した訳じゃない。

 俺に話し掛けてきたのは金髪のロングヘアをした美少女。紫色のコスチュームで、白銀の鎧を身に纏って、腰には剣が装備されていた。


「あれ!? スライムは!?」


 その後ろから助けた少女が現れた。少女はスライムがいないことに不思議としていた。


「それなら私が倒したわ。良い経験値になって貰った」


「えっ、私なんか手も足も……ってそんなこと言いに来たんじゃない」


 経験値になったのは良いが流石に疲れた。今の俺はHPもスタミナもかなり消耗している。

 そんな俺の前まで少女がやってくる。


「私の代わりにスライムを倒してくれてありがとうございます。そして傷付けてしまいごめんなさい」


 少女は俺に頭を下げる。感謝と謝罪の両方が飛んできた。謝罪は俺の方なんだけどな。


「気にしないで。私も強い言葉遣いをしてごめんなさい」


「いえ、そんなことはありません。むしろ私なんかを助けてくれて、本当に感謝しています」


「私は、自分が気持ちよくゲームしたいから。見捨てるのは、気分が悪かっただけ」


 ゲームは楽しくやりたい。俺のスタイルはソロプレイ。誰かを助けることもあれば助けられることだってあるかもしれない。ゲームプレイヤー同士、助け合いは大事だ。


「本当に、ありがとうございました!」


「もう充分よ」


 感謝の気持ちは伝わってきたからな。


「これを」


 おっ。ポーションかこれ。金髪の少女からポーションを貰った。俺はそれを飲もうとして――自分の姿が瓶に反射した。ことに気が付いた。

 俺は急いで飲んだ。HPが回復する。すぐにフードを被った。


「何故フードを被るんです? そのままの方が」


「良い。私はこれで良いの」


「わ、分かりました」


 分かってくれたなら結構。


「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私は


「……」


「貴女は?」


「……チサキよ」


「よろしくお願いします、チサキ」


「ええ、よろしくお願いします。アリサさん」


 なんで本名を入れてるんだ。何故現実の姿で入ってきているんだ。

 どうして、俺の前に。渡辺わたなべアリサさん。




ーーーーーーーー


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

よろしければフォロー登録と☆☆☆から評価をお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る