第3話 始まりの町と冒険者協会と依頼

 チュートリアルが無事に終了した後、俺は始まりの町に着いた。町の名前は『ワンスター』と表記された。


「ようこそワンスターへ!」


 町の出入り口にいた門番に歓迎された。ここの門番はNPCである。俺はフードは取らなかったが一礼してワンスターへと入っていく。


 ワンスターは始まりの町である通りプレイヤーが最初に訪れる。だから見渡す限りにプレイヤーがいた。低レベル高レベル問わずにプレイヤーが沢山いる。

 それと今はクリスマス仕様になっていた。町にいるNPC達は何処も賑やかで楽しそうだった。


 そんな中俺はフードを被りなるべく美少女オーラを抑え込みながら冒険者協会へと行く。チュートリアルの最後に勧められている以上何かしらあるはずだ。


「ここが冒険者協会」


 歩いて数分くらいで目的の場所に到着した。三角屋根の2階建てが冒険者協会であった。俺は少しして冒険者協会の扉を開いて入っていく。


 冒険者協会の中にいたのは殆どがプレイヤーだ。掲示板を見ている者、椅子に座って会話をしている者がいた。

 そんな中で俺は受付に向かう。受付にいる女性に話し掛けるつもりだ。大丈夫、出来る筈だ。


「おはようございます」


「おはようございます。実は先程チュートリアルを終了しました」


「それはまぁ、ここまでお疲れ様です」


「ありがとうございます」


 俺がチュートリアル終わったばかりだと伝えると労ってくれた。素直に受け取っておこう。


「そんな貴女にご提案があります」


「それは?」


「冒険者に登録しましょう。冒険者になれば様々なメリットがあります」


 冒険者になることで得られるメリット。依頼を受けられることかな。依頼を達成すれば報酬が手に入る。ゲームやアニメでお世話になるシステムだ。受けること自体にデメリットは無いか。


「冒険者になれば依頼を受けられます。依頼には必ず報酬が存在し、達成すれば受け取ることが可能です。報酬には主にマネーや素材があります」


 予想通りのメリットだった。それでもこの世界で生きていくにもお金は必要不可欠。


「分かりました。冒険者に登録します」


「畏まりました。では貴女の名前を教えて下さい」


「チサキです」


「チサキ様ですね。では、そちらにある石に手を置いて下さい。そして魔力を流し込んで下さい」


 指を指す先には丸い石があった。俺は指示通りに手を置く。それにしても魔力を流し込むなんて初めてだからやり方が分からない。取り敢えず魔力を流すイメージを想像した。

 すると丸い石が光った。


「おめでとうございます。チサキは本日付けで冒険者です」


 どうやら魔力を流すことは成功した。やり方が合っていたか分からないけど。出来たからこのイメージする方法でやろう。


「チサキ様にはマネーカードをお渡しします」


 俺は受付嬢から1枚のカードを渡される。マネーカード。黄色のカードだった。


「マネーカードは貴女の所持金を預けるカードです。支払いに使用出来ます。また、その場で硬貨の出し入れも可能です」


 つまりこの世界での財布か。ゲームだから現実じゃ出来ないことも出来るらしい。これ紛失したら不味いな。ちゃんと管理しよう。


「マネーカードに貴女の魔力を流して下さい。それで貴女のマネーカードとして使えます」


「成程。分かりました」


 先程と同じようにマネーカードに魔力を流す。マネーカードに青の文字列が流れる。なんて書いてあったのかは分からない。最後にはアルファベットでチサキと表示された。

 これでマネーカードを使うことが出来る。


「では、最後にチサキ様。依頼を受けてくれませんか?」


「依頼、ですか?」


「こちらです」


 受付嬢から紙が出される。紙はファンタジーによくある見た目だった。

 そこに書かれていたのは魔物の討伐。魔物ならなんでも良いらしい。数は3体。場所は指定されていないが、近くにある森が推奨されていた。報酬は高いのか安いのか分からないけど。

 うん、やろう。


「この依頼、引き受けます」


「ご依頼を引き受けて下さりありがとうございます。ご武運を」


 俺は依頼を引き受けたのだった。




 移動している間で、俺はステータスを見ながらシステムを確認した。マネーカードは大事なので、誰もが便利に使用出来る【ストレージ】という亜空間に仕舞う。収納出来る数は限られているが、本当に便利なシステムだ。

 ただ歩きながら作業をするのは止めよう。モンスターが現れる可能性もあるので危ない。


 俺は歩いて近くにある森へと到着した。ここからは普通にモンスターが出てくる。


「出て」


 俺は大鎌を出す。大鎌を手に持って、森の中へと入って行った。

 チュートリアルでも森に入ったから新鮮味は少ない。でもここ仮想空間だよな。本当に森にいるみたいだ。現実の俺は横になっているけど。


「っ」


 足音が聞こえた。何かが近付いている。俺は大鎌を構えて音のした方向を振り返る。

 少し太っている緑色の身体。手には棍棒を持っている。表記された名前は


「ゴブリン」


 緑色のモンスター、ゴブリン。ファンタジーではよく雑魚敵だったりする。レベルを見れば1であった。数は2匹。十分戦える。

 俺を見てくる顔が怖い。ゲスな笑みを浮かべている。本当にそんな目で見るのはやめろ。モンスターにも美少女オーラ感じ取られてる。


「あと1匹いて欲しかったけどまた探すか」


 ゴブリンの歩みは止まる。棍棒を構えた。


「やりますか」


「――!!」


 俺は大鎌を構える。ゴブリンが駆け足で近付いてきた。棍棒の攻撃は大鎌で受け止める。押し返して大鎌を縦に振った。


「っ!?」


 大鎌がゴブリンAを切る。ゴブリンAは後退る。もう1体のゴブリンBも棍棒を振るった。ゴブリンBの攻撃は躱す。棍棒が地面に着いた時に、俺の蹴りが腹に当たる。

 どちらにもダメージが入った。ダメージは大鎌の方が上か。


 ゴブリンAの棍棒を大鎌で受け止め、押し返して縦に振るう。ゴブリンBの棍棒は躱して今度は大鎌を横に振った。

 受け止め、押し返して、攻撃。躱し、攻撃。これを何回か繰り返す。次第にゴブリンのHPはかなり減っていた。


「ウバアアア!!」


 ゴブリンAが突撃してくる。棍棒を振った。もう見切れている俺は大鎌で受け止める。すぐに押し返して、大鎌を縦に振った。ゴブリンAが真っ二つになる。


「ウガアアアア!!」


 ゴブリンBが突撃する。いつもの棍棒攻撃だ。躱す必要もない。

 俺はゴブリンBの攻撃よりも早く大鎌を横に振るった。狙ったのは首。ゴブリンBは首と胴体がお別れになった。

 このゲームは全年齢だからグロテスクなことにはならなかった。なったら大問題だ。ゴブリンは紫色のエフェクトになり消滅した。


「討伐完了っと」


 レベルは上がらなかった。まぁ格上と戦っていないから仕方ない。

 残りは1匹。このままの調子で行けばすぐに終わる――


「きゃああああぁぁぁ……」


 悲鳴!? 声的には女の子だった。俺は駆け足で声が聞こえた場所に向かう。


 場所は森を抜けてすぐの草原で事件は起きていた。


「誰か、誰か助けて!! いやああああ!!」


 少女が触手に絡め捕られていた。地面には剣が落ちており、少女は触手で宙に浮いているような状態だった。足をじたばたさせている。


 俺はモンスターに向かった。跳躍して、大鎌を振るう。


「やああっ!」


 宙に浮いている間に大鎌で全ての触手を切り裂いた。捕らわれていた少女は尻餅を着く。俺は普通に着地した。

 俺はモンスターを見る。――まじかよ。いや動揺している場合じゃない。すぐ相手の少女に振り向く。

 少女のレベルは俺より高いが、この様子だとHPが少ないだろう。このまま戦ったら戦闘不能だ。デスペナを受けることになる。


「ここは私に任せて応援を呼んできて」


「えっ、でも」


「良いから行って!」


「は、はい!」


 少女は俺に押されてワンスターがある方向へ向かって行った。少し強く言い過ぎた。後で謝っておこう。

 はっきり言うと勝てる可能性が限りなく低い。でも少女を助けない訳にもいかない。こういうのは助け合いが大事だ。


 俺はモンスターを見る。青色で丸い身体をしている。今日で2度目の遭遇、スライム。

 ただ大きさが違った。普通のスライムより巨大だった。俺も身長負けしている。何より


「Lv、10」


 俺の現在のは2。対して巨大なスライムは10。さっきの少女が5。倍くらい離れている。これ協力した方が良かった? でも結局少女がデスペナになるだけだし、うん。

 俺、とんでもないスライムの相手になってしまった。




・チサキのステータス

Lv2

職業 見習い大鎌使い

HP 50/50

MP 20/20

SP 150/150


STR 10〈+30〉

DEX 10

VIT  7

AGI 10

INT  6

MND 7

LUK 50


装備

【黒の大鎌】


スキル

なし




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