第4話 いきなり届いた葉書に唖然

 友人関係も自然消滅したあの人から、ある日職場にが届いた。


『あなたが会ってくれなくなって、自分の何がいけなかったのだろうかと、振り返っています。自分としては、精一杯あなたに尽くしていたつもりでした。でも、その努力が足りなかったということでしょうか?』


 文面を見た瞬間、頭が真っ白になったわ。


 は?


 職場の事務机に置かれた、葉書の宛名は、私。


 宛名面の下半分に、ぎっしり細かい字で書かれた、その文章。


 葉書って、宛名の下半分、通信欄として使えるんだよね。

 

 絵葉書とか、想像してもらえば分かるかも。


 で、裏面、つまり、通信面には。


 同じように、細かい字で、ぎっしり。


『もし叶うなら、もう一度チャンスがもらえないかと願っています。あなたから連絡が欲しいです』


 そう締め括られていた。


 プライベートのアドレスと共に。


 もう、中程は、再現したくない……今で言う、ロミオメールというやつかもしれない。


 2人で見た○○高原での星空、って?


 あの時、他にも人いたよね?


 あれ、職場関連のイベントだったし。


 2人で歩いた△△商店街の夜祭りって?


 いやあれ、職場のある地区のお祭りで、物販のための出店で売り子していて、あの人が顔出しして、せっかくだからと休憩時間に案内しただけで。


 私は仕事の一環だったんだけど。


 そんなこんなが、書き連ねてあった。


 友達関係とはいえ、後半は、ほとんど個人的に会ってたこと、ないし。


 それは、まあ、いい。


 勘違いさせてたなら、申し訳ない。


 でもっ!


 に書いて寄越すなよっ!


 しかも、職場に!


 救いだったのは「好きです」とか書いてなかったこと。


 そんなの見られたら、マジ仕事辞めてた!


「ああ、これって、あの彼か……。夜祭りの時、うちの大事な姫様(仮)にちょっかいかけてるなぁって、『彼氏なの?』ってからかったら、『いや、まあ、はい』って言ってたけど……」


 上司が「何か見えちゃった、ごめん」と、気の毒そうに謝ってくれて。


 なんか若干不適切な言い回しされたけど、別に私は職場でモテモテとか、職場のアイドルとか、そんなんではない。


 単に職場に極端に女性が少ない、というだけである。


 いわゆる『オタサーの姫』扱い、なんである。


 若い女の子というだけで、大事にされてるんである。


 ともかくも。


 鈍感な私が悪かった、申し訳ない、とは思う……わけないだろっ!


 未練タラタラな、半分妄想じみた文章を、よりにもよって衆人環視可能な葉書に、しかも職場に書いて送ってきた時点で、ギルティそっちが悪い



 


 

 


 

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