第3話 ハツカレ優先は当然

 会えなくなって、会いたくなって、会えなくて。


 見事に恋の病を患った私は、どうしたらいいか考えて。


 鈍感な上に奥手な恋愛偏差値低め女子だったので、告白なんて勇気はなかった……はずが。


 バレンタインデー前々日に、風邪引いて、高熱出して、体はつらいし、頭はクラクラだし、判断力も低下して。


「ああ、このままだと、死んでも死にきれない。そうだ、せめて告白しよう」


 なんて、支離滅裂になって、「好きです」なんて、お手紙書いてしまうのであった。


 少し解熱した勢いで、近くのスーパーでチョコレート買って。


 自宅は知らないので、職場宛に、事務的なクラフト封筒で、こっちも外側に職場の住所書いて。


 中にはプライベートのアドレス。


 そういう判断力だけはあったらしい。


 バレンタインデー前日に投函したので、当日には間に合ったはずだけど、音沙汰なし。


 バレンタインデー翌日、この世の終わりのような気持ちで、さめざめと泣きながら、ぶり返した熱で喘いでいると。


 家に電話が、きた。


『ごめん、昨日休みで。チョコ、嬉しかった。よかったら、次の休み、食事にでも……』


 根性で体調回復させて、結果めでたくお付き合いすることになり、浮かれまくる私だった。


 で、ハツカレなわけだし、付き合いはじめたら、それは、ねぇ……脳内は彼一色になるわけで。


 休日は当然、彼との約束が最優先。


 暇さえあれば会いたいし。


 私は週末休みだったけど、彼は土日もシフトがあったので、彼が休みの平日に夜待ち合わせて夕飯食べたり。


 だから、あの人のお誘いは、ほぼお断りすることが増えた……まあ、その頃は個人的なお誘いはほとんどなかったし。


 役員会やイベントでは顔を合わせてはいた、その程度。


 だから、あの人が期限がきて役員を下りてからは、ほぼ会う機会はなくなって、そのまま音沙汰がなくなった。


 会おうと思えば、職場に連絡すればできたけど、私から連絡しようとか、別に思わなかったし。


 そして、あの人からも連絡はなかったから、なんとなく疎遠になった感じ。


 現実も脳内も幸せ真っ盛りな私は、それをなんとも思ってなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る