第5話 クラスメイトを誘う
昨日、三間坂さんからLINEで連絡が来て、次の日曜日に、三間坂さんと一ノ瀬さんと一緒にボウリングに行くことになった。もちろん、俺もその日は空いている。空いてなくても無理矢理空けたけどな。
あとは体調に気を付けて当日を迎えるだけ――と言いたいところだが、俺にはその前になさねばならないミッションがあった。
そう、二対二で遊びにいくことになっているので、俺が誰か一人クラスの男子を誘わなければならないのだ。
俺がラノベの主人公ならば、親友とも悪友とも言えるような友達がいるのだろうが、残念ながら今の俺にそこまで仲のいいクラスメートはいない。入学から二週間程度でそんな急に仲のいい友達ができるほうがおかしいと思わないか?
とはいえ、今ここでそんなことを嘆いていても仕方ない。
とにかく、誰か一緒に遊ぶ相手を見つけないと、せっかく一ノ瀬さんと一緒に遊びに行く機会がパーになってしまうの。
俺は教室の中、自席からクラスを見渡す。
ここで誰でもいいからと声をかけてはいけない。
少なくとも、俺より遥かにイケメンなクラスメイトを一緒に連れて行くのは一番の悪手だ。そんなことをしては、一ノ瀬さんとそいつが仲良くなるきっかけを作るというピエロを演じるだけになってしまう。
かといって、クラスの底辺男子を選ぶのもよくない。相対的に俺のことはよく見えるかもしれないが、そんな奴をつれてこられて一ノ瀬さんが楽しめると思うか? 答えは否だ。
というわけで、今俺が目をつけているのは、容姿では俺と10番目、11番目を争う下林君だ。
下林君とは同じ中学出身だが、同じクラスになったことはない。中学の頃は顔を知っている程度の関係だったが、同じ中学ということもあり、クラスメイトになってからは割と話をしている。
俺は休み時間に下林君が一人になったところを見計らって席に近づいた。
「下林君、ちょっといいかな」
「ん、高居か。どうした?」
俺が君付けで呼んでいるのに、向こうが呼び捨てなのがちょっと引っ掛かるが、とりあえず今は置いておこう。一ノ瀬さんと遊びに行くことに比べれば些細な問題だ。
「今度の日曜日なんだけど、何か予定ある?」
「日曜日? 何かあるのか?」
こちらが聞いているのに逆に聞き返してくるとは、なんてマナーがなってない男だろうか。これは、内容次第で予定の有り無しを変えるというある種のテクニックなのだろうが、相手にそれを悟られると失礼極まりない。だが、俺は怒らない。とにかく、適当なクラスメイトの男子を一人用意しないといけないのだから。
「その日、一ノ瀬さんと三間坂さんと遊びに行く予定なんだけど、よかったら一緒にどうかと思って」
「え、まじで? 一ノ瀬と三間坂ってすごいじゃん!」
一ノ瀬さんと一緒に遊べるのはすごいけど、三間坂さんもすごいか?
いや、それより、どうして下林君は二人のことを呼び捨てにしているんだ!?
二人は同じ中学というわけでもないのに、まだ呼び捨ては早いだろう!
それとも、俺の知らないところで、すでに仲良くなっているのか!?
「高居は三間坂と仲良くしてそうだし、うまくやってるんだな」
何を言っているんだこいつは?
俺のどこを見れば三間坂さんと仲良くしていると思うのだ?
その目は節穴か?
「クラスの美人二人となら予定キャンセルしてでも行くぜ」
調子のいいやつだ。まぁ、このくらい軽い奴のほうが一ノ瀬さんが引っ掛かるようなこともないだろう。
しかし、クラスの美人二人って、一ノ瀬さんは当然だが、三間坂さんは言っても三番目だ。一緒に美人という言葉でくくるのはどうだろうか?
まぁでも、当日下林君が三間坂さんと仲良くしてくれれば、俺は必然的に一ノ瀬さんと一緒にいる機会が増えることになる。これは悪くないのかもしれない。
俺は下林君に時間と待ち合わせ場所を伝え、無事一緒に行くクラスメイトの男子を見つけることができた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます