第3話
そこからの1か月は目まぐるしく忙しかった。朝は目覚まし時計の音で起き、母親に挨拶する。前までは朝食はとらない事が多かった。授業中お腹が空くだけで困らなかったからだ。摂るきっかけは授業にもう少し集中したいと思ったからだ。授業なんて面白い事がないと思い真面目に受けて無かった。
でもあの日から、少しだけ頑張ろうと思えたあの日から、嫌な事から向き合おうと思い少しだけ頑張った。
実際、現代文や社会は面白かった。後数学は昔からずっと苦手だが、公式を覚える先生の替え歌は面白かった。
大きな変化は無かった。定期テストの順位はいつも下の方だった。たが今回のテストでは平均くらいだった。
汐止の方はすっかりクラスの人気者になっていた。今回のテストでも最高得点を3教科だし、先生からは「彼女を見習いみんな勉強に励みなさい」と言われていた。テスト期間中ずっと人に教えていて自分の時間はそんなに無かったのに凄い奴だな。
ボランティアの方はテスト期間中無かった。しかし汐止の事だろう、やっていたに違いない。汐止と比べ俺は全然だと思う、それでも返されたテスト結果をみて喜んでいた。
ゴミ拾いも続けている。
どこに向かっているのか分からなかったが、一歩踏み出せた気がした。
テスト返却が終わると1学期のロスタイムが始まった。学校も早々に終わり、帰り支度をする。席を立ち汐止の席にゆっくりと歩きだす。
「汐止、今日はあの海岸に行くだろ?何時集合にする。」
「うーん、そうねー」と言いながら首を傾げ「お昼ご飯も食べたいし」と言いながらお互い時計を見る。現在は11時35分
「ねえ、ここら辺で美味しいご飯屋さん知らない?」
「美味しい店って言われてもなー」携帯を取り出し周辺地域で調べてみる。「パスタやクロワッサンがある店―」と汐止が茶々を入れてきた。
「ここら辺じゃ何もないな」とぼやくと、汐止は「えー」と漏らしていた。
半ば諦めている時、後ろから「何、面白そうな話をしているんだい?お二人さん。」と陽気で馬鹿そうな声が聞こえてきた。
「優君、ここら辺で美味ししいご飯屋さん知らない?」
優に気付いた汐止が顔を向け「出来ればパスタやクロワッサンがあるような。」と付け加え話し出した。
「俺が知っている店。では無いが、その人はパスタやクロワッサンなど朝飯前という顔をしながら作れるさ。」
「凄いじゃんか。その人。」
「凄いってもんじゃねぇぜ、勢い余ってトマトを丸ごと入れたり、クロワッサンの中にジャガイモを入れたりするさ」。
「それは勢い余ったってレベルじゃねえかもな。」
「だが、その人否、その女が出す料理は例外なく全部うまい。驚きだよな。」
「何でも上手いなら安心じゃないか。優、何でもっと早く教えてくれなかったんだよ。」
汐止と俺は期待を寄せ、話を聞いていた。「そこのお店に行きたい。」と汐止が言うと優は胸の前で×を作った。
「その女改め、俺の母親は今タイムセールの商品に夢中で俺たちなんか相手にしてくれないさ。」
「なんだよ。優の母親だったのかよ。」と最初からそんな気がしていた事を口に出した。汐止は「でも、今度食べてみたいね。」と言い問題が振り出しに戻った。
と思ったが優が「しかし、美味しい店は知っている。」と言い携帯を見せてきた。
探せばどこにでもありそうな喫茶店でここから10分程の距離だった。
「優、やるじゃんか!」興奮気味に言うと「茶番に付き合って貰ったお礼だ。」と優は言った。
「じゃあそこに決定だね!早く行こう」と汐止は歩き出した。教室を出るとき汐止の「パスタやクロワッサンはあるの?」という問いに優は「知らん!」と答えた。それが面白くて一人でツボに入って大変だった。
喫茶店での食事を済ませ早々に海に向かった。3人で活動することは余り無く汐止と優は、休日街であえば会釈する程度の仲だったがバスの中ですでに意気投合していた。流石コミュ力お化けだ。
海岸に到着すると懐かしい感じがした。2週間ぶりだが変な気分だ。
優が周りを見渡しながら「こんなにゴミがあるのかよ。」といった。
汐止がカバンからごみ袋を出しながら「ちょっとの間できなかったもんね。」と言う。
想像以上に多いゴミを見ながら「汐止、今日は3人もいることだし3つのエリアに区切ってやらないか?」
「そうね、同じところをやっても効率悪そうだしね。」汐止がごみ袋を渡しながら「優君もそれでいい?」と聞いた。
「別にそれでも構わねえけど。その前にやる事一つあんだろ。」
「なんだよ。」「どうしたの?」
汐止と俺は同じように聞き返した。
優は俺と汐止の前に歩いてきた。
「大智。凪に対して苗字呼びを辞めないか。」
優は照れながら「ほら、なんか仲間って感じがしないじゃないか。」
「せっかく、仲も深まってきて今からもっと熱い事するんだろ?想像してみろよ。胸熱なシーンで苗字呼びなんて冷めるだろ。なぁ大智」
「お・・・おぅ。確かにそうだな。」優の気勢に怯んだ。
「せっかく凪は俺たちに歩み寄ってくれているんだぞ。」
確かに汐・・・凪は早めに「大智君」と呼んでくれていた。
自分の顔が熱くなるのが分かる。
「呼び方なんて、気にしないよ、大智君。」
凪が気を遣いそう言ってくれた。
『よし!頑張れ俺』そう自分に言い聞かせ重たい口を開く。
「まあ、これからもよろしく凪。」
凪も顔は見せずに「こちらこそ」と言ってくれた。
「よし!これで無敵のチームの完成だ!」満足そうな優は「昔読んだ小説に、『思っている事は簡単には伝わらない。だから思いを行動に変えていけ』と書いていた。」
自慢げに語る優に「優は昔から小説読まないだろ。」そう言うと凪は笑いながら「やっぱり、読まないんだ。」と言った。
こいつ凪にも言っていたのかよ。
「まぁ、そんな事は置いといてさっさとやろうぜ。」優は恥ずかしそうに歩き、凪も「そうね。」と言い、歩き出した。俺も二人に負けないように足を上げた。
18時40分各自集めたゴミを持って集まった。少し見映えが良くなった海を見て、嬉しい気持ちになる。気付いたら優も俺もシャツ1枚で、できる限り涼しい格好になっていた。凪はハンカチで額を覆おっていた。
ゴミ置き場に運び、暗くなる前に帰路につく。
バス停につくと、シャツをパタパタさせ、優が「あっちー。何度あんだよ。」と言って。ジュースを凪と俺に渡してくれた。
ジュースを受け取りお礼を済ませ「今週は30度越えるらしいぜ。」と今朝ニュースで見た事を言う。
記憶にも残らない話はバスに乗り込んでも続いた。最近二人と喋れてなかったから話が盛り上がった。
バスが発進してから5分程した時優は急に話題を変えた。
「なぁ、凪さんよ。いつまで準備運動をするつもりだい?」
唐突すぎて話の本質が分からなかったが、凪の方は分かっているようだ。
「やっぱり。気付いていたのね。」微笑しながら答える。
「もう少し早くするつもりだったけど、大智君が思っていた以上に頑張ってくれたから。」
「それは知っている。しかしこの話とは別だろ?」
俺だけが話に追い付いてない。優に説明を求めた。
「私から説明するね。」優を遮り、凪は続ける「私たちは花火が見たくてボランティアをやっていた。でも実際やっているのはゴミ拾いだけ。去年もゴミ拾い等の活動はあったよね?」
「そうだな。何人かは、活動していたような気がした。」
「そう、ここまでは去年と同じ事をしているだけ。」
「でも違うことは一つだけある。それは私たち・・・つまり私と大智君はごみ拾いを継続していた事。」
「その事が去年と違うってどうやって繋がるんだ?」
「人に与える印象が違うのよ。去年は誰がやっていたのかも分からないけど今回は違うでしょ。」
「確かに最近『頑張っているな』と言われる事が増えたけどそれがどうしたんだ?」
「つまり」と言い凪は「私たちがリーダーになればいいのよ。」
「私が思うに、行事ごとはリーダーが居ないと成り立たないと思うの。今までリーダーと言える人が現れなかったから出来なかったと思うの。ゴミ拾いはそのリーダーになる為の準備運動ってこと。」
だんだん理解が出来てきた。今まで祭り事は20~30代の人たち中心でやってきた。しかし田舎のこの町じゃ若い人が減少していき中心となる人が居なかった。その結果、年々規模も縮小してきた。でもこの町の学生が新しいリーダーとなり、多くの学生が参加すれば昔みたいに出来るってことだ。
「やっと理解できたけど、じゃあ花火を揚げるのには大体何人くらい必要だ?」
「町内会長が言うには50人は必要だって。」
想像していたより多く驚いてしまう。俺たち3人が頑張っても50人分の働きは出来ない。
「でも何か方法はあるんだろ。」優は落ち着いた口調で凪に聞く。
「うん。明日の終業式で校長先生にみんなの前でスピーチさせてくれる時間を貰ったの。それに賭けるしかないわ。」
優は「博打師め」と煽った。
それを聞いた時、俺は不思議と不安では無かった。凪はクラスでも人気者だし俺と比べ人前で喋る事にも慣れている。
そう思い俺は凪に精一杯応援するつもりで「頑張れよ!」と言った。
次の日の朝、いつもの様に優と並走し学校に向かっている。
優は「今日は勝負日だな。」と言い出した。
「そうだな、まぁ凪なら大丈夫だと思うし心配は無いけどな。」
「いいねぇー。大智はなぜそんなに凪を信用しているんだ?」
「何故って分からないが、そんな気がするからだよ。」
「そうか。」優は自転車を近づけ「ちゃんとスピーチ前には励ましてやるんだぞ。」
「そのくらい、分かっているよ。凪は俺の応援無しでも成功しそうだが、戦友として一言掛けておくよ。」
「あぁ、それで良い。」
「けど、そんなに応援されると違うのか?成功しそうな凪には言いすぎると返ってプレッシャーに感じないか?」
「応援は必要だぞ。応援されて嫌な人はいないさ。特に大智みたいに『信じている』なんて言ってくれる人のな。」
妙に近くなった優との距離を少し離し「そんな、もんか。」と言った。 優は「本心を言ってやれよ」と付け足し、話の話題は変わった。
1限目が終わり、貰った成績表をカバンにしまう。次は終業式の為、トイレに向かう人や早く帰れる様に帰り支度をもう始めている人もいた。凪はチャイムと同時くらいに教室を出て行った。凪を追いかけ廊下に出た。割と近くにいた凪に「よう。」と話しかけた。
「おはよう。大智君今日は勝負日だけど私に任せてね。」凪は少し笑った。
「凪なら大丈夫だよ」
いつもとは様子が可笑しいと思った。
「緊張している?」
「少しだけだよ。でも大丈夫だから。」
『凪はいつもと様子が違う』そう確信した。しかし何と声を掛けたら良いのか分からない。頭の中で様々な事が思いつく。
霧が濃い頭の中で浮かんだ正解と思った言葉を口にした。
「凪、きっと大丈夫だから頑張れ。」
「ありがとう大智君。元気出たなー。」凪は笑い、伸びてるポーズをとる。
「おう。それなら良かった。」
時間がゆっくり進んでいる感じがした。
凪は時間を確認して「じゃあ行くね。」と言い体育館の方に歩いて行った。
歩いていく凪を見て、口にした言葉は違うと痛感した。
何と言えば正解だったか分からなかった。
『くそっ。優ならどうしたんだ。』そう呟いた。
そんな後悔とは裏腹に凪は壇上の上では自信満々に話していた。面白いジョークやユニークな話はしていなかったが、全校生徒300人程度、全員凪に釘付けだった。
結果としては大成功だったと思う。「参加するよ。」って言ってくれる人は大勢いた。体育館から出てきた凪は喜びながら「今日の放課後は予定決めで忙しくなるよ!」と言っていた。
引きつった笑顔で「良かったな。凪なら大丈夫だと思ったから。」と言った。
終業式が終わり、昼飯を済ませた後、凪と自治会の集会所に向かった。充分な人数を確保できた為本格的な話し合いをするためだ。
深呼吸が多い俺を気にして凪が「緊張しているの?」と聞いてきた。
「当たり前だろ。寧ろ何でそんなに楽しそうなんだよ。」
「緊張しても何も変わらないでしょ。じゃあ、楽しんだもん勝ちでしょ!」
「そうだな。」空返事で返した。
「そういえば優は何で来ていないんだ?」優も毎日ではないが、一緒に頑張ってくれた。同席しても良いと思う。
「誘ったけど『用事がある』とだけ言ってどこか行っちゃった。」
「まあ、何かあんだろな。」
集会所に近づくにつれ歩幅が小さくなる。
『凪や優は人前で喋るのは苦手ではなかったよな。羨ましい。』と思った
でも怖がっても仕方が無い為覚悟を決めた。
集会場に着くと会長しかおらず、緊張が少し薄れた。
会長は俺たちを手厚く迎えてくれ、ここまでの労いの言葉と人数を集めてくれた事に感謝してくれた。会長しか居ない事を聞くと「色々な人の思惑を学生の前で話すのが嫌だった。」と話してくれた。
用意された席に座り、少し雑談した後会長の「さてと」という声は一気に空気を重くして本題に入った。
「君たちは花火が見たいと言っていましたね。そして人数も集めてくれました。反復するようですが何故、人出が欲しいと言ったと思いますか?」柔らかい口調で聞く。
「はい。会場周辺のテント設営及び撤収作業。海岸の外観景色を維持する為のゴミ拾いやゴミ箱の設置。その他諸々の雑務をするためです。」凪の口調は丁寧だった。
「そうだね。色々人手が要る訳だよ。だから凪君に50人程要るだろうと言いました。」
「君たちが諦めてくれる様に無理な課題を私は出しました。」
そう言うと会長は頭を深く下げた。
「本当に申し訳ない。どれだけ人数を集めても花火を揚げることは難しいんだよ。」
「えっ」「嘘。」俺と凪は同時に反応した
背筋が凍る感覚がした。態度には出ていなかったが凪の方も動揺していた。
「花火を揚げるには費用も規模も拡大しなければいけ無い。以前は出店数も祭客も多く集まった。だから出来たんだよ。でも今じゃその両方が足りない。」
確かに前までは規模も祭客も多かった。それこそ町1番のイベントだったから。
「でも、何とかならないですかね。地域の人から募金してもらったり。」動揺を隠しながら必死にいった。
悔しくて現実的でない事だと分かっていても口走ってしまう。
「大智君。それもいいが最近の祭りの様子を見て、寄付してくれる人は何人いるだろうか。」
「そ・・そうですね。」
凪の方を見ると、とても悔しそうな顔をしていた。
何故何も言わないのか。一番頑張っていたのはお前じゃないか。
「納得してくれたかな。」
その問いに「はい」というしか無かった。
「すみません。一つだけよろしいですか。」
「どうしたんだ凪君。」
「花火の件は納得しました。現状難しい事も。だけど小規模でもいいので揚げてくれませんか。」
会長は少し難しい顔をして口を開いた。
「そうだね。せっかく人数を集めてくれたんだ。そこは何とか善処しよう。」
「ありがとうございます。」凪は会長に頭を下げた。
「凪、本当に良いのか。言ってただろ。絶対に成功させるって。私なら大丈夫だって。言ってくれたじゃ無いか。」
悔しくてしょうが無かった。こんなにも頑張った凪に何もしてやれない事が。何もできない俺を恨んだ。
「ありがとう、大智君。こればっかりは仕方がないよ。会長さんも悪くないし。運が悪かっただけだよ。」凪は泣きそうな声でそう言った。
「小規模でも揚げてくれるって約束してくれたし。」
「でも・・・」何も浮かばなかった。喪失感が今度は耐えられない程に全身を襲う。
凪の方を見ると堪えられず涙をこぼしていた。気付いた時には俺も泣いていた。その時気付いた。最初は自分を変える為に始めたボランティアも案外楽しかったことに。自分が本気で向き合っていたことに。
図らずも自分が凪に言った事が現実となった。『また繰り返してしまったのか』と思う。
「本当に申し訳ない」会長はそう言ってもう一度深々と顔を下げた。
どうしようも無い結果がそこにはあった。
「遅れてすみません!見る人全員が感動して涙を流す花火祭りの集会場はここで合っていますでしょうか?」
勢いよく開いたドアに馬鹿程でかい声。
その中心にいたのは優だった。
「そうであっているが、どうしたんだい優君。」困惑しながら会長は答え、「とりあえず座りなさい。」と優を誘導した。
優は椅子に座る前に俺と凪に「まだ花火は揚がってねぇぞ。涙はそれまで取っておけよ。」と軽口を叩いた。
「いやぁー、遅れてすみませんねぇ。集会場なんて行ったこと無くて道に迷ってしまって。」優は呑気に人の気持ちも知らないで馬鹿みたいに元気が出る声で話す。
「それで、会長さん。花火はどれ位の規模で揚がるんですか?」
会長は事の顛末を優に教えた。優のリアクションのせいで少し時間が掛かったが。
「それで、費用が足りない訳ですかー。」
「そういう事になるね。」
「これでもですか?」優は俺たちが持ってきた以上の参加表明書を会長に渡した。
「な。・・・」会長は驚きを隠せず大きい声を出したことを謝罪し、俺たちにも見やすいように机に並べてくれた。
書いてある内容は「○○精肉店参加希望」「××株式会社参加希望」と様々な企業名や団体が書かれていた。
「これ程の数どうやって集めたんですか?」
「俺は馬鹿ですから1件、1件回って集めてきましたよ。」
「優、お前・・・なんでそんなにやってくれるんだ。」
「親友が自分変えようと暗闇で、もがいていた。戦友が傷付きながらも前向かって進んでた。そんな姿見せられたら、黙って指咥えてるだけは無理だろ!」
言葉に出来ない感情が込み上げる。
優に「ありがとう」と言った。伝わらないかも知れないが心からの言葉だ。凪も何度も「ありがとう。ありがとう。」と言っている。
「会長さん。まだ足りないですか。足りないようでしたら豪田家総出でも集めに行きますよ。」
会長は気圧され「豪田さんところの息子さんでしたか・・・どうりて。」と呟き
「いえ、充分です。学生の皆様がここまで頑張ってくれたんです。ここで折れたら大人の我々が恥ずかしい。」
「なら、ひとまずは大大大成功と言う訳で・・・」優は腕を真ん中に動かした。凪や俺に、そうするように指示して、3人の腕が重なる。
優の「俺たちおめでとう!」に合わせて腕を高く上げた。
高校生にもなって少し恥ずかしいが嬉しかった。いや、高校生になったから嬉しかった。
「羨ましいものです。」会長は俺たちに優しい口調で言い、「君たちは今青春を謳歌しています。それは高校生だからではありません。」会長は優に近づき優の右手を握った。そして凪にも、俺にもしてくれた。
「3人共。それを思い出させてくれてありがとう。記憶に残る祭りにしましょう。」
会長は集会場を出る時まで優しく温かく話してくれた。優と凪と別れ一人で帰路に着く。丁度2週間後祭りが開催される為忙しくなるが、きっと大丈夫だ。凪にも優にも助けてもらった。だから少しだけ勇気ができた。
参加表明に書かれていた名前を確認してため息にもとれる様な深呼吸をつく。
心臓が早く打ち出し緊張が走っているのが分かる。
「明日逃げずに立ち向かう。」と呟いた。
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