第6話 安らぎ

 ロキは自分を責める。

 美海はそれを見るのが辛かった。

 誰のせいでもないのに…。


『ありがとうございます。ではお言葉に甘えてお願いします。でもあなたのせいじゃないのでそんなに気に病まないでください』

「うん、でも君をこちらに連れてくる原因を作ってしまったのには変わらないから。」

 ロキは少し眉毛を下げて笑う。

「とりあえず、明日には治療薬の準備をしておくよ。美海、君は今日はいろいろ疲れただろう。早く寝るといい。今、寝床の準備をするからちょっと待っててくれ。」

 そう言うとロキは2階に続く石造りの階段を登っていく。しかし途中で何か思い出したようで美海の方を見る。

「お風呂入りたかったりする?」

 その言葉に美海は大きく首を縦に振る。

 それを見てロキは笑う。

「そうか、では寝床の準備よりも先に風呂の準備をしないとな。」

 ロキはこっちについてきてくれと2階を指差しながら言う。

 

 急いで階段を登り、2階で待っているロキのもとへ行く。

 2階の廊下にはたくさんの部屋の扉があった。そのひとつひとつを立ち止まり美海に顔を向けて解説しながら進んでいく。

 ほとんどの部屋が空き部屋らしく、その中のひとつの部屋が美海の寝室になるらしい。だが他の部屋も使いたかったら自由にしていいと言われてしまった。

 ただし、3階には絶対に行かないでくれとも言われた。3階には危険なものがあるからわかっておいてくれと。

 美海はすぐに了解する。

 

 2階の一番奥に他の部屋の扉とは違う色の扉がある。どうやらそこが風呂らしい。

その扉を開き中に入ると鏡に水道らしきものがあり、洗面所のようなところだった。そしてその奥にはバスタブがあった。

 ロキはすぐに魔道具の使い方と石鹸について説明してくれた。

「じゃあ、私は君の寝床の準備をしてくるからゆっくり疲れをとってくれ。」

 それだけ言うとロキは浴室から出て行った。


 美海は洗面所で服を脱ぎ、浴室に入り、早速魔道具を使うとバスタブにすぐにお湯が張る。とても便利だ。

 石鹸は髪用と体用のを教えてもらったためそれを使い、お湯で流し、湯船に浸かる。

 今日の疲れが少し取れた気がする。

 美海は10分ほど浸かって湯船から出る。

 

 着替えるものがないため再び制服を着ると美海は先ほどロキが説明してくれた自分の寝室へ向かう。

 扉を開けるとそこには大きなベッドにクローゼット、それからテーブルと椅子があった。

 ロキがこちらを向いて言う。

「準備できたよ。とりあえず必要なものだけ置いといたから。細かいものは後で話し合ってからにしようか。」

 

 えっ、この短時間でこんなに準備してくれたんだ⁉︎ 魔法の力かな。

 これだけで十分すぎるのに、もっと準備してくれるんだ。


「あっ、あと服についてなんだが今この家には僕の服しかないからそのままの服で少し我慢してくれ。すまない。」

 確かにロキは美海よりも10cm以上高いだろうから貸すのは無理な話だ。

 「では、疲れているだろうしもう寝るといい。おやすみ。」

 ロキはそれだけ言うと部屋から出ていった。


 美海はそのままベッドの中に入り、今日一日のことを思い出していた。


 そしてもう母や友人に会えない悲しみと自分を受け入れてくれたロキの優しさに枕を濡らして美海は寝てしまった。

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