第2話 ひとまず安心?
__ひっ ナイフ⁉︎
今までの漠然とした恐怖から首元に向けられたナイフにより一気に死への恐怖へと変わった。
「ぁ…ぁぁああ…あ゛あ゛…」
美海は恐怖のあまりに叫び声を出すと共に腰が抜けて床に座り込んでしまう。
声を出すのが数年ぶりだったため叫び声はとても掠れている。
数秒で声は出なくなってしまい美海の叫び声は止まり、その代わりに今度は咳が止まらなくなった。美海が座り込んでいてもなお、男は変わらずナイフを向けている。咳によって美海の体は前後に動き、今にもナイフが首に触れそうだ。
少ししたら咳は止まったが変わらずそのままの状態で顔の見えない男に美海は小さく震えていた。
どうすればいいの。
混乱のあまりに相手に向かって必死に命乞いの手話をする。ほとんどの人が手話がわからないのに彼がわかるわけない。
美海が必死に手話を続けていると男はナイフを首元から離して急に美海に顔を近づけた。
なっ、何?
美海は驚きと恐怖を感じるもその状態は数十秒間続き、顔が離れると男は顔につけていたベールをとった。今まで見えていなかった顔があらわになる。
切れ長の吊り目が特徴的な整った顔だが、あまり日本人らしくない顔立ちだ。。
彼はとったベールを隣にあるテーブルの上に置き、無表情のまま再び美海のほうを見る。さっきと違って彼の切れ長の目がガッツリと合い、今まで以上に恐怖を感じたが彼は突然口を開いて何かを言っている。
慌てて彼の口の動きを読むと「お前、耳が聞こえないのか」と言っている。
えっ、日本語っ⁉︎
美海は驚きながらも頷くと、「お前は誰だ、なんでここにいる、何が目的だ」と口の動きはゆっくりだがどんどん質問がくる。
えっと、あなたが連れてきたんじゃないの?
少しの恐怖はあるもののもう首元にナイフがないため少し落ち着いてゆっくりと口だけを動かす。
『私の名前は美海っていいます。私もなんでここにいるのかわからないんです。いつの間にかここにいて……。あなたが連れてきたんじゃないんですか?』
ちゃんと伝わったかな。
彼は腕を組んで何か考えている。そして部屋の端へ向かい大きな戸棚の引き出しを開けて何かをとるとまた美海の前に戻ってきて手に持っていたものを美海の手に渡してきた。
えっ、何これ? ビー玉?
美海の手には500円玉サイズの透明なビー玉みたいものがあった。
「おい、本当に知らない間にここにいたのか。」
彼は再び美海に問う。
そうだよね、彼にとっても知らない人が突然部屋にいたら不審に思うよね。
美海が真剣な顔で頷く。
するとと手の平の上のビー玉は青く変わった。
えっ⁉︎ なんでこれ色変わったの
彼は「そうか」と呟くと美海の手の上のビー玉をとり、また棚の方へ行き同じような青色や赤色のビー玉がたくさん入った大きな瓶の中にそれを入れる。
そして私の方を向いて言う。
「疑って悪かった。お前の言っていることはとりあえず信じる。」
なんで信じてもらえたのかはわからないけれど、これでひとまず命の心配はないかな。
けど…、ほんとにここはどこなんだろう。
『あのう、ここってど「そんないつまでも地べたに座り込んでないでそこの椅子に座れ。質問はそれからだ」』
彼は話を遮って椅子に座るように指示した。
美海が椅子に座ると
「ちょっと待ってろ」
と一言だけ言い、彼は部屋から出ていった。
美海は一度深呼吸して落ち着く。そして再び周りを見渡した。
ほんとにここはどこなんだろう。やっぱり、異世界だったりして。さっきの彼の服もなんか漫画みたいで日本人らしくない服だったし……。
また異世界ではないかと思うもそんなことないとまたすぐに否定する。
さっきの彼、少し怖かった。いきなりナイフ向けるし、でもきっともう命を脅かすことはしないよな、大丈夫だよね…、うん…、うん!
少しの不安はあるもきっと大丈夫っと思い込ませ、勢いよく前を向くとちょうど彼が戻ってきて美海の目の前にいた。
急に現れた彼に驚きのあまり体がビクッと揺れる。
彼の持ってきたトレーの上にはティーセットがある。
ポットの中をスプーンでひとかきして、茶こしでこしながらカップへと紅茶を注いでいる。
すごく仕草が綺麗だ。
「はい、どうぞ」
紅茶の入ったカップを美海に渡すと、彼は美海の正面の席に座った。
そして自分の分の紅茶を一口のみテーブルにカップを置く。
やっぱりすごく仕草が綺麗だなぁ。どこかのお坊ちゃんかなあ。
そんなことを思っていると彼をこちらを向き、口を開く。
「さて、ここはどこかっていう質問だったか。」
美海は頷く。
「ここはイデア王国のルーア領の西に位置する私の研究所だ」
イデア王国?ルーア領?
今まで聞いたことのない国名が出てきた。
美海は国の名前は人よりだいぶ知っていると自負していたがイデア王国という名は知らなかった。
えっ、もしかして本当に異世界にいる感じ?
ホントにどうなってんの_____
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