七年
窓から日差しが差し込んで、ソファに寝そべる私を包む。春先にしては、今日はとても暖かかった。
微睡んでいると体の隣がぎゅっと沈み込んだ。彼が座ったらしい。
「あずさ、また寝てるの?」
今日の彼は、一日中家にいるらしかった。
ぽかぽかと太陽に暖められながら、私の意識は夢と現実を行ったり来たりしている。起きたなと思ったら夢かどうかも分からないまま、また意識が沈んでいく。今日はとても眠い。
彼もお休みなのか、隣で本を読んだり時々立ち上がったりしている。
「あずさ、ちょっと横ごめんね」
座っていることに疲れたのか、彼はそのまま私が寝そべっているソファに無理矢理横になってきた。
「狭いなぁ」
このソファはそこまで大きいわけじゃない。二人で寝ればぎゅうぎゅうだ。
抗議の言葉を発してみたが、それもお構いなしに彼は私とソファの間に器用に滑り込んで、それから私をぎゅっと抱きしめた。
「あずさの体、温かいね。いい匂いする」
またそう言って勝手に首筋を匂うのだ。
変態だなとは思ったけど、今日はとても眠くて彼の顔を押し返すことも、言い返すことも面倒だった。代わりにあくびをして、私はまた夢か現実か分からない狭間の世界に足を踏み入れる。
そんな私の頭をどうやら彼が撫でているのか、ほとんど沈んだ意識の外でゆっくり優しく往復する彼の手の感覚がする。
それは、案外好きだったりする。
「おやすみ、あずさ」
小さく聞こえた彼の声に返事をすることもなく、私はまた眠りに落ちた。
『あなたの方が温かいわ』という言葉は、思っただけで声には出なかった。
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