一年
ある日、彼がアクセサリーを買ってきた。
「あずさに似合うと思うんだよね~」
上機嫌に話す彼の手の中には控えめなデザインのチョーカーが握られている。
細い黒の帯に、小さな星が付いていた。
「え、それ付けろって言いたいの?」
対して私の反応は冷ややかだった。
元来おしゃれなんて気を配る性格ではないし、着飾ることにも興味はない。
けれど、そんなことお構いなしに彼が笑顔でにじり寄ってくる。手にチョーカーを持って。
「ね、ね! 一回だけでいいから! ちょっと付けてみてよ!」
「え、ちょ、嫌だって!」
ぐいぐい来る彼にぐいぐい押し返す私。
付けて、嫌だ、を繰り返してどったんばったんやった末に、とうとう捕まって私の首にチョーカーが収まる。
「うわ~、ほらやっぱり可愛いって! ね、あずさ!」
「全然可愛くない」
にこにこ彼は笑っているが、こちらはむすっとした。
こんなの首に付けられて、まるで飼われているみたいじゃないか。
もういいでしょとチョーカーに手を伸ばそうとして、彼が
「あっ、写真撮ろう!?」
はぁ? との声も出ずに、いつの間にか彼がカメラのレンズをこちらに向けている。覗き込む彼の表情はすこぶる上機嫌だ。
「一枚! ね、一枚でいいから。はい、動かないで~」
猫なで声の彼がシャッターを押した。カシャという電子音に似た音が室内に響く。
カシャカシャカシャカシャカシャカシャ
「撮りすぎ!!」
いい加減にしろと平手を食らわすと、「痛い……可愛い……」と頬を赤くして笑っていた。
そういうところが、たぶん馬鹿。
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