六ヶ月
バタン、と音がした。彼が帰ってきた音だ。
ソファでゴロゴロしていた私は一度伸びをして、玄関までのそりと歩いていく。途中横切った寝室は、朝と同じまま布団が山を作って冷えていた。
「おかえり」
玄関までたどり着くと、ちょうど彼が靴を脱いでいるところだった。
私の声に気づいた彼が顔を上げて、その表情がぱっと華やぐ。
「あずさ! ただいま~!」
嬉しそうにぎゅっと抱きしめられた。苦しくはない。手加減しているのだろうと思う。
でもこれがほぼ毎日続くとこちらとしても少々鬱陶しく感じるのも仕方ないわけで。
「ちょっと……」
離れてほしいと訴えかけ腕を伸ばして隙間を開けようとしたけど、するりと躱されて首筋に唇を寄せられる。途端、ぞわりとした感覚に体が震えた。
彼は私の匂いが好きだと言うのだ。何かあるとこうやって首筋に顔を寄せる。
たいへんな変態である。
もういいでしょと体を無理矢理捻って拘束から逃れてリビングまで避難すると、彼も上機嫌で後を付いてきた。さっきまで私がゴロゴロしていたソファの上に鞄と服を投げ捨てる。
「遅くなってごめんな。食材買うのにスーパー寄ってたからさ」
がさごそと袋の中身をテーブルに広げていく。
そうやって漸く、「ご飯にしようか」と彼がキッチンに立つのだ。
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