第25話 入浴
わしゃわしゃと俺の髪を泡まみれにするアッティ。鼻歌を歌いながら気分上々なご様子だった。
「ふんふふーん♪髪を切らないでって言ったの私ですしね。ちゃーんと私がケアしますよ〜っ」
「ああ、うん」
鏡に映るアッティ。これまで何度も一緒に風呂に入っているが、やはりなれない......特に目のやり場に困る。
「ふはぁっ!なーに、響くん照れてるんですかぁ?」
「そりゃ、そーだろ。見てくれは女だが中身は男なんだぞ」
「まあまあ、それはそーですが!それはこっち、ね?置いといて〜、はい髪洗い終わったのでバンザーイ」
言われるがまま両腕をあげる。するとアッティは手を前にまわし、胸を泡で撫で回す。いつも思うんだけどこれってなんで胸からなんだ?毎回めっちゃ集中的に胸を洗われるけど、そんな入念に洗うものなのか?
(くすぐってえ......)
鏡に映るアッティの顔を見てみる。彼女が目を閉じ恍惚の表情を浮かべていることに気がついた。
「あの、アッティ」
「あい」
「......前から思ってたけど、そんなに胸を洗う必要あるのか?」
「そりゃあ洗う必要あるんすよ。こんなに立派な胸をお持ちですもの......ちゃーんとキレイキレイにしないとね?」
「あ、そう......うん、わかった。ちゃんと洗うから明日から自分でするわ」
「はあ?なんでですか!そんなの駄目に決まってんでしょ!」
「こわっ!そんなキレることある!?」
先程の幸せそうなゆるゆるの笑顔から一変。鬼のような形相と化していた。
「せっかく綺麗な肌してんだからさぁー!私に任せとけばいーんすよ!素人が下手に洗おうとか思ってんじゃねえよぉ!!」
「こええ、なんだこいつ!?まじで怖え......いや、明日から来なくていいから」
「やだやだ!私が響くん!私を捨てないで!!お願い、これからもずっと響くんのおっ◯い触らせてよ〜!!」
「本音が出たな!?」
腰に抱きつき「やだー」と泣き出すアッティ。そ、そんなに......?
「わ、わかった泣くなよ」
「ううう、じゃ、じゃあ......これからも、響くんの身体洗わせてもらって良いんですかぁ......?」
「えーと、まあたまには」
「たまにって、どのくらい?週七くらいですか?」
「変わってねえじゃねえか」
てか、くすぐったい。はやく腰から離れてくれ。アッティの手を離させようとするが、がっちりと握られた両手は微動だにしない。ガッチガチやぞ。
「......たまにって言ったろ。週一で」
「週六」
「わかった、週二」
「週五」
「いや多いから!たまにっつてんだろ!」
「週六」
「増やしちゃった!?」
「はぁ、......ちっ。週五」
「妥協するかのように見せかけての週五!ぜんっぜん妥協してねーじゃねえーか!雰囲気で突破しようとすんな!」
「お願いお願い、おーねーがーいーっ」
「ッ!?ちょ、やめ、くすぐったいから、だめっ!!......あんっ」
あろうことか背中に頬ずりをし始めたアッティ。こしょばい。ぴくんぴくんと身体が反応し、「あっ、ん」と無意識に変な声がでちまう。
「やーだー、やーだー」
「わかった!ごめん、わかったから!?ゆるしてっ、ひんっ......!?どさくさに紛れて変なとこ触んじゃねえ!!あんっ」
「ほんとに!?週七?週七でいいんだよね!?」
「は!?お前、ざけんな、あっ駄目だってばかそんなとこ触んなっ、あ」
「週七ああああーー!!!」
叫びながら胸を鷲掴みしてくるアッティ。
「女神っ、落ち着け!!お前はめが、あんっ......やめ、んぅっ、はぁ」
力が入らねえ......つーかコイツまじでさっきから変なとこばかり触りやがって!
俺は後ろのアッティに寄りかかるように体重を乗せた。
「なっ、あ!?きゃあっ!」
そのままなし崩し的にアッティを押し倒す。彼女の珍しく可愛らしい悲鳴に妙に申し訳ない気分になるが、ここで怯むわけにはいかない。
俺は流れるように彼女に跨り、マウントポジションを取る。両腕を抑え、そこで気がつく。
た、タオルとれてもーたぁああああ!!!
赤面し目を伏せるアッティ。俺は裸体を見ないように顔を背けた。
「は、はなして」
恥じらう少女のような声色。しかしここで離すわけにはいかない。いままでにも、こういうパターンで敗北を喫した経験が何度もあるからな。この女神つかえるものならなんでも使いやがるし、これも演技の可能性がある。
俺は交渉に入る。
「じゃ、じゃあ......了承してくれ。週二でどうだ」
「.....週二」
はあはあ、と妙に息があがっている事に気がつく。なにこれ雅紀とのケンカより疲れてるんだが......。
「わかりました。仕方ないですね.....じゃあ週二でいいです」
その言葉を聞いた俺は「え、なんで上からなん?」とついツッコんでしまいそうになる。しかし、せっかくこちらの条件に合わせてくれたのだから無駄に波を立てることもないかと、掴んでいたアッティの手首を俺は離した。
「とりあえず、アッティも身体洗えば?」
「あい」
俺は身体中の泡をシャワーで流し、湯船に浸かった。疲労感が凄まじい。俺は心地よい湯の温度についうとうとと微睡む。浮力で水面にぷかぷかと浮いている胸。
......あー、楽ぅ。お風呂好きぃ......。
身も心も開放された。
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