鬼※2

「久しぶりというべきかな、美鳥みどりはる


 いつもの薄ら笑いを口元に浮かべて西園寺さいおんじが言った。


「……地獄から蘇ったのかな?君明きみあき

「その言葉そっくりそのままお返しするよ。死者のふりも楽じゃない」


 俺のほうを見て言った。


「待たせたね」

「……はい」


 俺は眩しいものを見るように目を細めて、ただ頷いた。



「飛んで火に入る夏の虫と言うべきかな?」


 晴の目が妖しく光る。


「二人揃って殺されにきたの?」

「こちらには殺されるいわれはないんだけどね」


 西園寺は小さくもよく通る声で言った。


烏丸からすま

「やあ」


 俺は背後から声が聞こえて文字通り飛び上がる。


「か、烏丸さん……?」


 今まで目の前にいましたよね、と言う前になぜか抱え上げられた。


「うわっ、ちょっ」

「うーん、やっぱり男だと重いな」


 そう言いながら、屋上から跳躍する。

 悲鳴を上げる間もなく俺は烏丸とともに落下した。



 幸いなことに、というべきか。

 俺は次の瞬間下の階にいた。

 烏丸はパルクールの要領で壁伝いに降りると俺を窓から投げこんだのだ。

 まだ心臓がバクバクいっている。


「……し、死ぬかと思った」

「生きてるじゃなーい」


 烏丸はニヤニヤと笑う。

 膝をついた体勢で楽しそうに俺の顔を覗きこみながら。


「今この時もね」


 それに、爆発後もこの階が残っていたことも驚きだ。ところどころ焼け焦げてはいるが。

 立ち上がると烏丸は言った。


「じゃ、邪魔者は退散するとしますか。後は当事者同士適当にやりな」


 振り返って、言った。


「君らといると本当退屈しないさ」


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