閑話《六》

 小さな頃から人に視えないものが視えた。

 それに気づいたのはいつのことだったか。

 自分にはそれが当たり前だった。

 他人の当たり前を知るまでは。

 死期が迫った人がわかる。

 いつ亡くなるかまではわからなかったがそれは確実で。


 父には変なことを人に言うなと言われた。

 母には困ったものを見る目で見られた。

 でも、おそらく母は知っていたのだと思う。

 俺と同じ目で人を見ていることがあったから。


 ある日、同級生にそれが視えた。

 長期休みの前で帰省するんだと言っている声は嬉しそうで。

 元気で気をつけて、とだけ言った。


 新学期が来てそいつが死んだことを知った。

 始業式で黙祷をして、区切りをつけて日々は過ぎていく。

 何もできない。

 その時までには、事前に忠告しても結果は変わらないことを知っていた。


 自分の心に蓋をするようになった。

 それでもあの日あの時。

 きっと言うべきだったのだ。


 今でも飛び起きて頬が濡れていることに気づく。

 悪夢でうなされた子どものように。


 失うのがこわい。

 だから関わりたくない。

 誰か罰してくれ。

 それで許されるなら。



 一人の夜は終わらない。

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