第30話 女王様と僕
◇
そして、リーダー研修会終了後。
僕が武田ちゃんの脊髄を引っこ抜き、トドメを刺して事件が終息した少し後の事。
大奥編入が決まっている竜心館高校の面々は陣を構えて僕と対峙していた。
竜心館の生徒会長である上杉さんがどうしても徳川康平に下るのは嫌だと。
神降ろしをしているから死ななかっただけで、女子を殺すに躊躇も興奮もしない。
機械的に女を殺す事が出来る生徒会長なんか、信じる事が出来ないと。
戦の、申し入れがあったのだ。
理事長は溜息を吐きながらもこれを受理。
本丸と大奥が定期的に行っている模擬戦、その延長として。
立会人を設けての力比べとしてならばと。上杉さんの、炎のような気の強さを受け止めた。
但し、模擬戦の舞台は大奥と行ういつもの採石場跡地ではない。
竜心館は伝統工芸科と同じく刃物を精神感応兵器としている。
ならば大奥との模擬戦のように銃弾や爆発などが住宅街に飛ぶ危険性が無いという事。
神降ろしの力が強く働くという事。
そして何より、決闘は雨の草原こそサムライとナデシコの喧嘩には相応しいと。
それと本校から出撃するのは徳川・本多の二名だけであると。
この二人を倒せたら、上杉さんが生徒会長になんなさいと。
その代わり本気を出させるし、それはアムロとシャアがコンビを組むような物で。
身の安全の保証はしないけどそれでも良いのかと打診したら、二つ返事だったらしい。
伝統工芸科は僕と忠宗の二人。
対する竜心館・四十人。
自身の得物がまだ完成していない為に借りて来たハルバードを肩に担ぐ親友。
女切の妖刀、村正・籠釣瓶の鯉口を開放する僕。
そして。あの。死装束のような真っ白な姿になる竜心館の皆さん。
その中央、そして最前線に。
闘争心の塊のような、美しく清らかで骨太な心根を持つ、ナデシコが咲いていた。
法螺貝が鳴る。
白くて綺麗な花びらが、風に吹かれたように僕等を目掛けて飛んで来る。
此処で「本気を出せ」と命じられた僕と忠宗は同時に嗤った。
妖怪モード起動。
その花びら全てを食い殺し、その花びら全てを焼き殺し、その花びら全てを握り潰し。
霊力切れで僕が気を失う前に覚えているのは。
年相応に恐怖に引き攣った表情をした、女の子としての上杉さんだった。
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