第29話

 目を覚まして最初に視たのは、以前僕が祟りとの防衛戦で召喚したあの火柱だった。

 次に眼に入ったのはすぐ傍に在る二本目の火柱と、

 根元になにか女の子のような影を残したまま燃える三本目の火柱。

 すぐさまその三本目の火柱に手を伸ばす。

 底で焼かれていた少女は四肢を焼き切られていて、気を失っているようにも見えた。

 久し振りだ、次郎焼亡じゃない妖怪への変身は。

 霊力切れで視界にはノイズが走る。

 サブカメラには何故か味方の識別信号が表示されている。

 平坂と忠宗はもうすぐ到着する。

 何故か、お地蔵様までコッチに向かって来ている。

 この学校だったとしか形容出来ない廃墟で何が在ったのか。

 そもそも虎新館とはどんな教育機関だったのか。

 白日の下に晒され、罰を受けるだろう。

 眼鏡でショートカットの女の子が涙を流して何かを叫んでいたが。

 聴覚は既に機能していない。

 任務だけは。

 身体が動かなくても完遂しなくてはならない。

 任務だけは。

 気を失いそうでも完遂しなくてはならない。

 フラフラでも。

 これだけは。


 僕は籠釣瓶で焼けた少女の身体を断ち、傷口から彼女の脊髄を引っ張りだした。


 これで任務は完了。

 一気に視界が砂嵐に染まる。


 どうやら原因は。

 霊力切れじゃなく、ダメージらしい。

 恐らく眼を泣き晴らしたシャギーの入ったショートカットの少女が。

 僕の胸に深々と、刀を突き刺したからだろう。

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