第29話
◇
目を覚まして最初に視たのは、以前僕が祟りとの防衛戦で召喚したあの火柱だった。
次に眼に入ったのはすぐ傍に在る二本目の火柱と、
根元になにか女の子のような影を残したまま燃える三本目の火柱。
すぐさまその三本目の火柱に手を伸ばす。
底で焼かれていた少女は四肢を焼き切られていて、気を失っているようにも見えた。
久し振りだ、次郎焼亡じゃない妖怪への変身は。
霊力切れで視界にはノイズが走る。
サブカメラには何故か味方の識別信号が表示されている。
平坂と忠宗はもうすぐ到着する。
何故か、お地蔵様までコッチに向かって来ている。
この学校だったとしか形容出来ない廃墟で何が在ったのか。
そもそも虎新館とはどんな教育機関だったのか。
白日の下に晒され、罰を受けるだろう。
眼鏡でショートカットの女の子が涙を流して何かを叫んでいたが。
聴覚は既に機能していない。
任務だけは。
身体が動かなくても完遂しなくてはならない。
任務だけは。
気を失いそうでも完遂しなくてはならない。
フラフラでも。
これだけは。
僕は籠釣瓶で焼けた少女の身体を断ち、傷口から彼女の脊髄を引っ張りだした。
これで任務は完了。
一気に視界が砂嵐に染まる。
どうやら原因は。
霊力切れじゃなく、ダメージらしい。
恐らく眼を泣き晴らしたシャギーの入ったショートカットの少女が。
僕の胸に深々と、刀を突き刺したからだろう。
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