第24話

 研修会前夜。

 僕は平坂とこんな話をしていた。

 僕は平坂の事が大事だし。

 平坂は僕の事を大切に想ってくれているし。

 だからこそ、アイツは研修会に行くなとは言わなかった。

 怒りで真実が視えなくなってる旧市街組とは違い。


 平坂陽愛だけは、真実が視えていた。

 真実以上に、現実が視えていた。


「例えば人を殺す理由に片思いの恋をしていたからという物が在ったと仮定しましょうか。可愛さ余って憎さ百倍ではないですけれど自分の心に触れて貰えない事を理由として恋愛対象者を殺してしまう行為です。普通に考えてその罪は法律に触れますし、恋愛が原因で人を殺すという事に免罪効果が無いという事は誰が考えても一目瞭然ですよね?」

「恋愛が原因での殺人を認めたら今頃伝説の木の下は虐殺現場みたいな惨状になってる。あの学校の制服は対刃ベストと抗弾アーマーにしなくちゃならん。フリッツヘルメットも必要だ」

「はいそうです。でも女子という生き物は集団的で社会的な生物でして、誰かの片思いが実らなかった場合、その片思いの相手を『友達』という集団で嬲り殺しにするという文化が在るのです。これは会長さんの自殺にもいえますよね。女子というのは集団で生きる生物なんです。そして会長さんはその『集団』に殺されました。集団に属する事で善悪の判断というか価値観を忘れる〈手を繋いだ迷子〉に殺されました。ですからその会長さんが『集団を形成する能力』を持つ武田ちゃんに立ち向かうのというのは必然だったんですよね。だって会長さん、今同じように集団で嬲り殺しにされようとしたらどうします?」

「全員の眼にペンを刺すぐらいはするだろうな。家に放火とかもあるかもしれん」

「正解です。女子なんてモンに接する際は会長さんぐらいの姿勢で丁度良いのかもですね。そうすると今度はまた別の集団がやって来て「先生、徳川君がー!」と断罪というか糾弾し始めます。さて会長さん、その新手の集団は如何します?」

「人殺しに与してるんだから殺人幇助・犯人隠匿だろ。顔面がグチャグチャになるまで殴って少年院に入って貰うのが世の為だ」

「はい、これも正解です。女子に酷い事を!と言いたがる人は多いかもしれませんが、その女子の方が酷い事をしてますからね。なんせ人を殺してるんですから。人を積極的に殺そうとしてるんですから。つまり女子とは女である事を隠れ蓑というか遮蔽物にして矢面に立つ事を逃れようとする人間なのです、女の子は当然教職員では裁けませんし、女の子を確保する事は警察官だって躊躇するでしょうしね。しかしだからこその会長さんなんです。《一度女子特有の悪性に依って殺された、しかも当時の犯人である女子を相手にする》会長さんだからこそ、武田ちゃんの仲間を増やす能力を無効化出来るというか無力化出来るというか、まあ実際には全滅させちゃうんでしょうけど」

「だけど上杉さんも僕は怪しいと踏んでるぞ?」

「んじゃ上杉さんも一緒にやっつけちゃえば良いんじゃねえですかい?」

「上杉さんが無実の罪なら何らかの反応はするだろうしな」

「ですです。女子なんてモンは汚えモンです。美少女がどうとか、パンチラがどうとか、オッパイが揺れたとか、そんなモンは容れ物の話ですからね。中身は犯罪者予備軍みてえな連中ばかりです。それは違うというのであれば女子特有の的外れで潔癖な正義感を正当化すんなって話ですし。それは違う、女子を理由にするなというのであるならば、『じゃあ貴女、そういうのに参加した事が一度も無いんですね?』と私は聴き返します。すると絶対に下を向いて黙る筈なんすよねえ。だから女子なんてモンは、全員一度ぐらい死んだ方が世間様に顔向け出来るマシな人間になれるんじゃねえのかと思いますよ?」

「そうか。んじゃ一度ぐらい死んで貰うか」

「ですです。人殺しに味方する人間なんてのは、結局同じ人殺しですから!」

「女子特有の悪性を産み出す集合本能か。僕等の帰属意識とはまた別なんだろうな…」

「だから会長さんは女子の天敵なんですよね。そもそもアナータ、綺麗でナイスキャラな魅力溢れる女子に思いっきりリバーブローする系男子ですし!だったら武田ちゃんの事を正すのも会長さんしか居ないと思うのです!正すっていうか、そうですね、懲らしめるというか!」

「僕、平坂にリバーブロ―した事ねえぞ?」

「私は会長さんにリバーブロ―した事ありますけど!」

「あんとき。折れた骨、内臓に刺さったモンな…」

「素敵に無敵なアマテラス。それがヒメちゃんですから!」

「次のデート、何処に行こうな?」

「何処でも良いですよ!会長さんと一緒なら!」


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