第77話 妖精楽園アヴァロン・スカーナリア
と言うかここはどこだ?
あまりにも心地よすぎて、眠くなって目を閉じていたら、気がつくとこんな妖精達に囲まれてしまっていた訳だが。
ふと辺りを見回して見ると、見たことの無い建物が乱立しているじゃないか?
──はて?俺は一体何処にいるのだ?
妙なこともあるものだと、考えつつ。俺は周囲を魔力感知により探査することにしたのだが。
「───いやまじでどうなってるんだここ。」
辺り一面の魔力は俺の魔力感知を弾く。その感覚に俺はかつてエルドラドで試したアレと同じものを感じ取った。
つまりここはエルドラドと同じ外界ということか。
あ、外界ってのは理の外の国の事。この系列の世界は魔法が意味をなさないことが多い、まあアレだ。
魔法は所詮一つの世界の中の話という事さ。
だが別に不可能なわけじゃない。俺は魔法を切り替え、権能を使用する。
「【権能:帰還者の瞳】────ふむ?ここは───。」
俺の瞳が世界の真実に触れる直前、それが何者かによってキャンセルされる。
「……困りますなぁ。ここ妖精楽園アヴァロン・スカーナリアの真実は人によって気が付かれるべきではありませんのでな」
「誰だ……応えろ、そこの男!」
いつの間にか周囲の妖精達が姿を消して、代わりに不規則に揺れ動く男がそこに立っていた。
いや、男なのか?
まるでその男の姿が捉えられないのはどういうことなのだろうか。
「ワシ/ワタシの姿はお前/オヌシには分からんよ。だがせっかくなのだ、教えてやろう。我/私の名は【マーリン=モルガン】ここ楽園の主なり」
マーリンとモルガンは同じじゃないだろ。とさすがに俺も突っ込みたくなったが、それは言わないことにした。
と言うか何だ?ここが楽園だと?
「そうだ/そうじゃ。ここは楽園、人の身では本来辿り着きえぬ死後の楽園【妖精楽園アヴァロン・スカーナリア】。世界の魔法の出発地点じゃよ。」
◇◇◇
「なるほどな?ならば俺がたどり着けたのはあれか、人じゃないからなのだろう?」
「然り。」
「だが不思議だな?俺は転移もしたつもりもないのだが、どうしてここに来れたのだ?」
「妖精は始まりから見ておった。お主/オマエがここに来るよりも遙かより前から。──見覚えはないか?我が見た目、我が空気感それを」
?どういう事だ。俺は思わず記憶の片隅を重箱の隅をつつくように探す。
この容姿、姿は分からないけど謎の老人のようなもの?どこかで───。
「───まさかお前……あの時厄災が訪れることを俺に教えた男か?!」
ニヤリ。と姿がわからぬはずの老人が笑ったように俺は感じ取った。
かつて俺がまだ冒険者の手助けをする為に冒険者世界で仕事をしていた頃、七罪の魔物【ベルゼビュート・スライム】という暴食魔物が現れたことがある。
あれを倒す為に俺は一度死に、そして女神と契約を交わしたことであれを倒せたという懐かしい話。
確かその日の朝、何者かに『厄災が訪れる』と夢の中で囁かれた気がしたことがあった。
それがまさかコイツなのか?!
「──そろそろ僕の姿をちゃんと見せてあげよう、君が気がついたのだからね」
俺が記憶の海から引き上げたそれに動揺したその時、そいつの姿が不意に変質する。
白髪の男、いや女か?年齢はおそらく30代前半ぐらい。
そして特筆すべきは魔力量。この量は俺、どころかあの魔王にも匹敵するほどだぞ?!
「あ、すまん。魔力量は飾りなんだよ、ごめんね。……これはあくまでもただの溜め込んだ結果だからさ〜」
なるほど俺の驚きを返せ。
そう言いながら男【マーリン】は歩き始める。
「ちょっと歩こっか……あそこの建物まで行けば、今回なんで君がここに来てしまったのかわかるだろうからね!」
うん、それはいい。先に歩き始めてから言うなとは俺も言わん。
「……歩くのだるいからちょっと空飛ぶね!んじゃあ先行ってるよ!」
羽を突然生やすと、マーリンは空の彼方へと飛び上がって行った。
しかしどう見ても羽は飾りのようで、羽ばたくことすらしていなかったので。
──面倒くさがりか。コイツは。
呆れつつもカルロンはそのあとを追って空を飛ぶのであった。
◇◇◇
「なぁ、ちょっといいか?」
「んー何?空飛んでる時は喋ると……」
「いやそれに……ごぼぉ?!」
俺が口を開けた途端、口の中にふんわりとした綿菓子をすっごい固めたようなものが入る感覚がした。
「あ〜ほら言ったのに、そりゃ【妖精楽園】だよ?そこら中に妖精がいるんだから空にだっているに決まってるのに……」
それを先に言え。先に。
俺は口の中でベッタリとした妖精を撫でて、空からごめんね。と謝ったあと手を離す。
すると妖精は──。
「口ん中気持ちよかったからまた、食ってな〜」
と言ってどこかに去っていった。
ん?食ってな?
……………?
「マーリン、一つ良いか?……妖精って変なやつなんだな」
「んーまああの対応されるのは珍しいんですよ、実は。」
そうなの?まあ確かに悪いやら敵意は感じなかったが。
◇◇◇
こうして空を飛びながら二人は最もどでかい建物に辿り着くのであった。
「─────あれ?思ってたよりでかいんだが?」
カルロンは思わず3度見する。遠くから見た時は、「まあデカイな〜」位だったのだが、実際に近くで見るとそのサイズはありえないぐらいのサイズをしていたのである。
「ようこそ、ここは楽園の中心部。中心街にして妖精の楽園の最深部。───【妖精楽園都市/オベロン・ル・フェ】!!」
ついにオベロンまで出てきたか。なんかネームドな妖精は大体出てきた気がするな。
そんな事をふと、考えていたカルロンの前に……妖精楽園都市がその姿をどんどんと表し始めるのであった。
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