第78話 魔法の真実①

 精霊学院【スカーナリア・ル・フェ】は表の顔、【スカーナリア・ル・フェ】の本来の姿こそ、【アヴァロン・スカーナリア】であり、その中でも最大の都市を【オベロン・ル・フェ】と言うらしい。

 ややこしいことこの上ないな。と言うか似たような単語が多すぎる、せめてもう少し分かりやすくならんのか?


「───それは不可能な噺。ようこそ、ニンゲン。インゲン豆のようにちっぽけな、ニンゲンの子供。──ボクはここの王様、【オベロン】さ。」


 目の前の空間が歪み、男が現れた。

 それはいい、ある程度想定済みだったからな。

 だが……。


「流石にこんなに大量の武装に囲まれるとは、思ってもみなかったけどね。」


 カルロンはそう愚痴を零しながら、自分を狙う照準を睨む。その数実に千はくだらないだろうか。


「オベロン様、コイツ敵ですか?ぶっぱなしておk?」

「そうですよ、何かわからないけどヤバそうなやつが来るってことで武器を久しぶりに使ってもいいんだよね!」

「早く早く、撃ちたい撃ちたい!!」


 所々からそんな言葉がカルロンの耳に入る。

 ──ちっ、やっぱり戦闘になるのか。

 俺は呆れながら手の中に【無月】を取り出そうとして──。


「待った待った!……おや、よく見たらとてもいい目をしているじゃないか!?……えーコホン、妖精の諸君……彼はとても良い目をしている、どうかね?ここは私に任せてくれないかな?……ほら見たまえ、彼は私を見ても全く動じないじゃないか!──素晴らしい!」


「……オベロンどの、そろそろ茶番をやめてもらって宜しいかな?」

「ったく、マーリンどのは少々遊び心が足りんようだな!我々が来訪者を歓迎しない訳な──待った、そこの妖精その弾丸は実だ……」


 バゴン!ズドンッ!一人の妖精が構えていた対物ライフルが火を吹いた。

 それは寸分たがわずカルロンを撃ち抜く。


「やった!やった!100点だ!100点!」

「ねぇねぇ、次は僕も!僕も!えい!」


 ズドドドドドドドドドド!!!!!という土砂降りの雨のような弾幕がカルロンが元いた場所に降り注ぐ。

 それを見てさらに隣の妖精も同じように武器を放つ。


「ちょ、ちょ!?ストップ!ストーップ!!その人客人だから!!」


 慌ててマーリンとオベロンが止めに入るが、妖精は聞く耳を持たない。

 元来、妖精とは自由なものだ。

 例えば、楽しいことがあるならば、喜んでそれを実行してしまうぐらいにはね。


 まあ妖精はうっかりする生き物だ。許してやってくれよな!


 ◇◇◇◇


「─────ふむ、?」


 しばらく続いた妖精による惨劇が幕を閉じたあとカルロンは呆れながらその土煙……なのか分からないが土煙っぽいやつの中から歩いて出てくる。


 その表情はある意味呆れ半分、怒り半分ではあったのだが。


 ◇◇◇


「コラっ!王様の噺しっかり聞かないとダメでしょ!」

「うえぇぇぇえん!すみません!!」

「反省しろバカ妖精!」

「そうだそうだ!ーーーーーキャー!!」

「お前らも全員1回反省室送りだよ馬鹿野郎どもっ!」


 何やら大変なことになっているが、それは俺がなにかするべきことでは無い。


「───すまん、カルロン殿……まさかここまで頭が抜けているとは思っていなかった……改めて謝罪させてくれ……すまなかった!!」


 まあ俺は別にいいけどね。うん。だっての魔法で死ぬほどやわじゃないし。

 でも流石に対物ライフルが出てくるとは思ってもみなかったが。


「なぁ、それはいいんだが……なんで妖精が対物ライフルやらサブマシンガンとかを連射していたんだ?」


 その言葉に何かを言い淀んだあと、マーリンとオベロンはこう述べた。


「「アレこそが……姿なのだ/です」」


 ◇◇◇◇


 アレこそが?え?弾幕がって事か?

 頭にクエスチョンマークが右往左往し始めた俺。


 そうして二人は語り始めた。魔法の起源、根源たるものについて。


 ◇◇◇



「人間界に存在する魔法、あれは元々【外界の武装】だったのです。……しかしあの原型オリジナルはどう足掻いてもこの世界と相性が悪かったのだ。」


「そこで我々は、魔力式というこの世界特有のものを利用して【武装】を再現することにしました。その結果、この世界の魔法と呼ばれるものが誕生したのです。」


 あ〜。成程。だから魔法式の基礎に【弾丸ボルト】やら【砲撃カノン】やら付いていた訳か。


「アレは元々世界の外から来る厄災に対抗するために我々が持ち出した兵器……ですがそれはこの世界の人間には扱いきれませんでした。」


「だから我々は魔法の式を分解し、簡素化して幾つかの単純な式をばら蒔いたのです。それが【魔術】……なのです。」


 そりゃすごい。と俺は思わず唸る。現実世界で言う所のそ雑なコピー品が魔術、まあ確かにね。

 量産できて、あれだけ拡張性があるのはその簡素化されているから故のものだったか。


「ですが、一つ。……あ、お茶をどうぞ……」


「あどうも……ってこれエナジードリンクじゃないか?!」


 椅子に座りながら飲み物を出された俺は、その眼前に広がる黄色の液体……を口に入れた途端、その言葉を投げかけたくなった。


 うっ、嫌な思い出が。前世の頃仕事が長引いて普段より帰るのが遅くなった時、これをがぶ飲みした嫌な記憶がっ!


「気に入ってもらったようで何より……んん、話を戻すが……。我々が世界の外から持ち込んだ武装は【火】【水】【風】【土】【闇】【光】【時】【空間】の八種類。……それらはこの世界とよく馴染んでくれた、そしてそれを……使……つまりはと呼ばれる八人の奴らじゃ。」


「八人はそれらの武装を魔法として定め、それの改良に取り掛かった。実に長い年月をかけて……ではないな。割とあっさりとそれらは改良された。……そしてそれが今の魔法の基礎になるわけじゃ」


 なるほどぉ。


「そしてもうひとつ、言わねばならん。──キエス=カルロン。この武装は我ら二人だけがもたらしたものでは無い……かつて我々は世界に叛逆するもの達として幾つものグループに別れてあの【外界からの敵】を殺そうとした。」


「……そしてその中の一人、叛逆のグループの中で最も優れた伝説級の実力者の男の名前は……と呼ばれた男であったのじゃ。」

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