第72話 【炎】対【帰還】
「あはっ!凄いでしょ!私の魔法っ!」
目の前の女性はそう言うとキラキラとした焔を走らせるのであった。
地面を這い、足元から解き放たれる火山の噴火のごとき火柱を避けるカルロン。それを追撃する為に目の前の女性【フラム=フィアンマ】は魔法を放つ。
「確かにすごいな、だが隙が多すぎるぞ?」
「?!きゃあああっ!?あ、アンタやるわ……うわぁっ?!」
あっけなく地面にめり込むフラム。それを俺は呆れながら眺めるのであった。
◇◇◇
ティターニア先生が提示したのはクラスメイト同士の戦い。それもかなり実戦レベルの奴。
まあ最初は一旦様子見との事で希望者同士の戦いをしてみましょうとの事だったのだが。
「アンタ私と戦いなさい!」
とフィアンマに話しかけられてしまったのでいたし方なし。
その勢いが良すぎたのか、ティターニア先生がそれじゃあお手本ってことでと言い出して……。
そんで戦いとなった訳だ。
ちなみにニクスさんが羨ましいそうに見ていたのは多分気の所為。かなぁ?
◇◇◇
「それでは二人とも武器を構えて……安心してね、私が作ったこのフィールド内では怪我はすぐに治るからっ!……でもやりすぎちゃダメよ?────んじゃあ【キエス=カルロン】対【フラム=フィアンマ】……模擬戦……開始!」
開始。の瞬間にフィアンマは構えた片手剣を煌めかせ、魔法を解き放った。
「『炎魔法/フレイム・ボルト』!!!」
ドン、ドンドン。と放たれる赤色の火炎弾。純魔基礎魔法の一つ『
基礎詠唱の省略……つまり【
「ふふん、どうよ?降参するなら今のうちよ!?」
俺はそれには答えずに、剣を軽く振り抜き、フレイム・ボルトを切り払う。
刀身に魔力を纏う魔法技法の一つ、【
「────へぇ?やるわね……ならこれはどうかしらッ!『炎熱よ─我が手に集いて──穿つ裁きを下したまえ』──【炎魔法/
それにこの魔法は────。
フラム・フィアンマの片手の中に4つの魔法陣が展開される。心臓から放たれた魔力がその魔法陣を通る度にその威力が増幅されていく。
これこそが純魔のみに許された、生まれ持ってのチートスキル……【原初の魔法使い】によるものだ。
圧倒的なブーストによる倍率の暴力がカルロンを狙う。
ふとフィアンマの顔を見ると、とてつもなく勝ち誇った顔をしていた。その顔は妙に俺にイラつきの感覚を思いださせてくれた。
あれか?昔仕事仲間があんな感じで仕事を押し付けてきたからだろうか?わからんが。
ともかく、あれは当然当たれば並の魔物程度なら消し炭になるだろう。
「───【帰還魔法/
だが、相手が悪い。少なくとも彼女の魔法は見事なものだ。だが本当に───。
「あはっ!凄いでしょ!私の魔法っ!」
その言葉に合わせて原初の炎の力が呼び覚まされる。簡易詠唱にもかかわらず、原初の炎を手にした彼女の魔法は周辺の魔力を炎属性に染め上げる。
地面は彼女のものとなり、空間の殆どが炎に染められるが。それを──巻き戻す。
解き放たれた魔法に対してカルロンは同じ威力のまま同じ魔法を跳ね返す。まあ正確には帰還させる。
その結果、二つの魔法がぶつかりあったその瞬間、その場の魔法使いの動きが一気に停止した。
それは【魔力対消滅】と呼ばれる現象。
全く同一の魔法の存在による世界自体のエラー。もちろん時間経過により回復するが、それは命のやり取りの際に極めて致命的な形で魔法使いを襲う牙になる。
今回ももちろん。
それは明確な隙としてカルロンの前に差し出されたもの。故にカルロンは一瞬で距離を詰めると──。
「確かにすごいな、だが隙が多すぎるぞ?」
そう言いながら動きが硬直したフィアンマの腕を掴むと、地面に投げ飛ばす。
当然肉体を支える魔力が機能回復する前に彼女の肉体は地面にめり込むのであった。
「──さて、魔法使いの欠点。少し理解したか?フィアンマ。」
魔法使いの欠点。その一。
【魔力対消滅が発生した際、その影響をもろにくらって動けなくなることがある】
故に魔法使いは、サブウェポンをしっかりと装備しておくべきなのだ。
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