第70話 自己紹介②(個性強め組)
「ぬう、わしの出番か……ワシは錬金魔法使いの【ローン・アレイスター】というものじゃ。ワシはいつの日か赤を生み出してみせる。……ただそれだけの為にワシはこの学院に入ったのじゃ。あとワシはたまに年齢が変わるが、そこは気にせんで貰えるかのぉ?」
「それは無理だろうが?!……年齢が変わるってなんだよ!」
流石に時の純魔の家系からするとその事象はありえないことだったのだろう。当たり前ではあるが。
「……時間も少ないので次の人」
「あーって事はアタシの番?んまいいや、んとね私は【リンシア】。ただの凡夫な万能なだけの冴えない魔術師さ。よろしくね〜まあ魔術師という事でちょっと思う事とかあるかもだけど気にしないでね、あたしは君たちに必死に食らいついて行くだけだから〜。」
「俺が見るに君は少なくとも凡夫という言葉からはかけ離れている気がするが?リンシア、君は何者だ?」
俺は気になったのでその質問をふと、投げかける。彼女はリンシアとしか名乗っていない。だがこの世界は名字と名前がちゃんとある筈なのだ。
特に魔法や魔術は一子相伝、血筋による補正が必須なはず。
「ん〜カルロン君、知らない方が幸せな事もあるんだよね〜。ま、アタシがわざわざ君たちのような優れた魔法使い様たちに見せるものが何にも無いって話なんだけどね〜つーわけでよろしくね」
何かを隠していることは分かった。だがそれが果たして何なのか、カルロンには検討がつかない。
ただ別段悪い事をひた隠しにしているような悪意は彼女から感じ取れなかった。
故にこのことはわざわざこちらから深堀するよりもいつの日か彼女自身に語ってもらう方が早いと判断し俺は。
「なるほど、まあ友情が足りないというわけかな?」
そう納得するように頷いた。
「んー違うけど、まあいっか。そだね、いつの日か君に打ち明けられることを私は願うよ〜っーことで次の人よろしく!」
雑にぶん投げられた対応を受け止めたのはスラッシュ。
「アタシにパスすんな!とは言わないけどさぁ……全くぅ……え、えっと私は【スラッシュ・フロウ】……私に斬れぬものは……あんまりない!うん、私はだからあんまりを絶対に書き換えれるようにこの学院で頑張ります!!」
彼女はそういうとハキハキと喋った。彼女が使用していた魔法、あれは『斬撃魔法』と呼ばれる古代魔法の一つ。自分がイメージした物体を切断するというイメージの投影投射魔法。
シンプル故に様々な魔法に統合されて消えたはずのそれをなぜ彼女は所持しているのか。気になるところではあるが、まあそれはおいおい知っていけばいい話だな。
「では次は……」
「ッス!どうもッス!俺、【冒険者フォルクス】ッス!見た感じからヤバそうなやつしかいないッスけど、ぜってぇーーーーついてくッス!あとカルロンさん、後でサインくださいっス!時間なさそうなのでジブン語りはまた次の機会にッス!では失礼するッス!」
スが多い。ノリの軽いヤツではあるが、コイツあの二次試練のボスの片方と殴り合いして勝ってるはずだし……なんなら生徒会役員共と殴り合いしてちゃんと勝ってるんだよな……果たしてこいつはどこが異常なのか、見極める必要はありそうだな。
「?それにしても君、何処かであったことが?」
「ないっス!でもカルロンさんの噂ならずっと耳にしてたッス!……昔親父がダンジョンで魔物に襲われる寸前に、カルロンさんに助けてもらった恩、絶対にいつの日か返すッス!これはオヤジとの約束なんでよろしくッス!!!」
あーなるほど?そういえばコイツに似た顔のヤツを何処かで助けた気がしなくも……いやスマン、顔とか覚えてないや。
「では次の方……」
「クフフフフフフフ!!!我が名は【ベリアル・ネクタル】魔術師の端くれでございますぜぇ!魔術師の中でもワタクシは実に変わり者と呼ばれてましてなぁ、いやはや……クフフフフフフフクフフフフフフフ!!この素晴らしい原石たちに出会えたことに感謝しながら、っスウーこの素晴らしいうら若き匂いをたんの……ゲボォ?!」
「おい、アタシ見て何かようか?……あ?さてはアタシがうら若くねぇって話か?お?いいぞ後で絞めてやろうか?」
リンシアがそう言って笑顔で拳をポキポキと鳴らす。慌ててベリアルは。
「アハハハハふぅーッ、そんなわけ、ななななないじゃないですかぁ!私はねぇ、青春の香りを味わいにこの学院に来たのですっ!そう、あの青々とした香り、あれは格別なんで────」
「次の方!!!」
ものすごい謎トークを熱弁しだしたベリアルを慌てて横に押し流しながら次の人を呼ぶティターニア先生。すっごい疲れた顔してますね……後で肌スキンケアのクリームでも差し上げようかな。
「結界魔導師【アグネス=ミサキ】だ。はぁ……ここまでの奴らほど私は特徴がある訳では無いのでな。まぁここで出会ったのも何かの縁、そういうことにしてくれ、全く。……このゲボみたいな空気の中で挨拶する羽目になるとか、私は何か呪われてるのか?」
「ゲボみたいな空気とはなんですか?!青々としたまさに青春のうら若きフローラルなる香りと言いな────」
「ベリアル君、廊下に行く?」
「ぐぬぬぬそれは嫌です!」
「次の方……」
もはや先生が可哀想になってきた。せめてもう少しまともなやつは居なかったのか?スカーナリアさんよ……。
と次の人はまるで巨大な布にくるまった異形の様相をしていた。真っ黒な布の奥、制服をぐるぐる巻きにしたマントの奥底から赤色の瞳が輝き……。
「崇高なる我が使命、我が命運はここに定まれり。我は【メフィスト】愚昧なる民を導かんとす、偉大なる賢者にしてこの世の果てを探求せしものなり!!────/あ、どうも。【オーガスト・メフィスト】です、すいませんなんかカッコつけた方がいいのかと思っただけなんで。ちなみに私は女性です、え?制服の見た目がどう見ても異形?うんそれは私の趣味ですので無視してどうぞ。では」
そういうとふわふわと浮遊しながら元の席に戻って行った。
「……声すら違ったぞ途中。」
「愚者は滑稽である。声などと言う出力装置なぞ、無限大の未来と形を手にしているに決まっているだろうが。──/つまるところ声は変えれますよ?
「──次はえっと……リリアンさん?」
「……ぐぅー……すぴー……はっ!しまった暖かな空気に包まれて眠ってしまうところだった!あ、ごめんね〜☆私【リリアン】!希望の星を有する勇者☆って言っても私はただの役割を与えられただけのパチモンなんだけどねー☆あ、私は魔王なんておいそれたものに勝てるほど強くないから☆」
「普通勇者は魔王を倒すための存在では?」
「ん?不思議なこと言うね〜勇者なんて名前、どう考えても勇気ある者の略称に決まってんじゃん☆私は怖い事なんて嫌だもん。さっさと世界が平和になってくれたら良いなーって思って毎日神様に祈ってるだけのフツーのオンナの子だよ☆」
そう言って青髪の勇者を名乗る短髪の少女は微笑んだ。その笑顔のどこかに影を見た俺は、あくまでも自然体に、彼女の記憶に触れてみる。
「───────なるほど。星が微笑んだ訳か」
「?!まさか私の過去見られちゃったの?!☆ヤッバイはっずかしぃ☆」
「何、俺は特に何も言わん。君の想いも夢もバカにしてはならないものだからね……んで先生残りのふたりはどうするんだ?」
そう言って俺は隣にいる残りの二人……元々この学院の生徒であり、かつて敵としてこの学生たちの前に立ちはだかった二人……【カサンドラ】と【シグルズ】を見る。
「……ああ、私から自己紹介しよう。私の名前は────」
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