第69話 自己紹介①
席の形態は大学のアレ。まあある意味学院というのはいわば大学のようなものなのだろう。
実際のところここに来て魔法を極めようとしている連中は基礎から学ぶ必要が無いはずだしな。
俺は辺りをぐるりと見回す。
ランプのようなものはおそらく光精霊魔法による精霊の光だろうか?
あれは緊急時の防壁の役目をになっているのだろう、あとは監視の意味もあるか。
「それでは皆様、自己紹介の時間といきましょう!それじゃあ先ずは……純魔の子……フラムからどうぞ!」
「ふん!私の名前は【フラム=フィアンマ】……炎魔法の使い手にして、高貴なる純魔よ!……いずれ私は女性初の魔皇になるの!……そんな私の覇道、その目に焼き付けなさい!!」
赤く燃える髪色、それと同じ瞳の色。烈火のごとく魔力を放つフィアンマ。かつて舞踏会で見た時よりもよりいっそう炎に近しい圧力を持っている。
まあ俺からすると、その焔は人を灼く程の出力も覚悟も足りていない気がしたが。
「あらあら、暖かな焔の使い手……良いわね!……では次の方はミナモさん?」
「──お初にお目にかかります……では無い人も居るかもしれませんが、改めて。ミナモ家長女【ミナモ・スイナ】と申します。──こんな私ですが、水に関しては誰にも負けないと自負しているつもりですので。よろしくお願いいたします」
丁寧なお辞儀をするのは水色に染まった髪の、明鏡止水の言葉が良く似合う女性だ。
魔力も落ち着いており、俺が見た限りしっかりと身体能力も鍛えられているようで文武両道なのだろうことぐらい推測できる。
「次は……えっとウィンディの方……いましたそこね、そこOK!」
「えぇ、わたくしがそよ風が良く似合う女、【ウィンディ・ブリーゼ】その人よ?私の風に心を奪われないように、少しだけ気をつけてくださいませ?」
翡翠色の髪はその輝きをさらに増しており、軽く自己紹介しただけなのに辺りにそよ風が心地よく吹き荒れた。
それは彼女が魔法と非常に親和性が高かった証拠だろう。
「では次のか……わっ、!?」
「ぬ、すまん。俺の不注意だ、恥じるとしよう。改めて我は【グラウス=ラント】うむ、貴様らがよく使う道を整備することを請け負うグラウスの一人。──我が魔力は人々の為に。以上だ」
頑強な堅物。そういった風体の男がのっしのっしと現れた。以外にも心穏やかな青年のようであるが、にしても同い年にしてはかなりの身体サイズだと思う。
プロレスラーとかボクサーと言われても違和感がないぞ?
「─次の方は……ごホッ……」
「おやおや、この僕は誰にも指示されないのがウリなんだ。その美しい口はもっと大切なことに使いたまえよ!!改めて。我が名前は【フラッシュベル・リュミエール】!!高貴なるフラッシュベルの人間にして、偉大で高貴で高貴なる高貴さを表す最高にして最大にして最優の輝きっ!我が光の美しさで君達を虜に……して差し上げよう!感謝したまえよアッハッハッハッハッ!!」
キャラが濃い。濃すぎるわお前。
あまりにも光り輝きすぎて辺の人が眩しさで目をおおいかけてるじゃんか。
金髪ロン毛の長身男性とか、前世にて友達にやらされた乙女ゲーの主人公か貴様。
「あ、えっと……どうもありがとう?……次の方は……ひっ?!いつの間にっ?!」
「うへへ……すいません、私影薄いんで。あ、どうもどうも。【アビサス=フォンセ】とか言います、ちょっと暗いけどごめんなさい。でも気軽に話しかけて来てもらって構わないんですがその、ちょっとグイグイくるのはやめてくださいね。では」
あの時よりさらに暗さを増してるのはどういう話なのか?と訪ねたくなるレベルで真っ黒。
あの暗殺者『アズラ=ハザード』より影に近しいのはさすがにびっくりだがね。
まあ知り合いはわりと暗めのやつばかりだったので気にしないが。
「えぇ……えっとでは次は」
「全く、ここまで皆自我出しすぎだよ。はぁ……なんか純魔が個性の強い奴しかいない変態みたいに思われそうで僕は悲しいぞ全く。──僕は【クロノ=テンプス】ただの優しい人間さ。ちなみに僕の趣味は聞かないでね?幻滅されたら嫌だし」
まともなやつが来たなぁ。とか思っている先生に俺はこっそり伝えてあげたかった。
──その人の趣味、止まった時間の中で人を眺めることだからフツーに犯罪スレスレのやつですよ?と。
「では次は……」
「「オーッホッホッホ!!このワタクシの出番ですわね!皆様御機嫌よう!ワタクシは【ジュリオール・レインザッハ】……レインでお呼びくださいませですわ!!皆様の輝き、それはワタクシの宝物になり得るのか!えぇ!
おっとこっちも個性豊かだったわ。ちなみに純魔の人たちもびっくりの声圧だった。もちろん隣にいた先生の頭上にヒヨコマークの点滅も見られたがね。
「で、では……えっと次は……」
おっと俺の番か。と言うかどういう順番で呼ばれてるんだ?まあいいが。
カツカツと前まで歩いていく。
しかし久しぶりだ、こういった人々の前で話をするのは。
──確か幼い頃に冒険者を説得させるために一度だけ見栄を張るつもりでやったっけ?
「──初めまして。俺の名前は【キエス=カルロン】。空間系魔法使いの家系キエスの一人、そして──未来の魔皇になる男だ。」
ザワザワとあたりの人間が揺れる。さすがに純魔と言えどもここまで堂々と宣言してくるやつは見たことがなかったと見える。
「──俺は全ての立場を平等に変える。生まれつきの立場、力は確かに平等にはなり得ないかもしれん。しかし使い道、鍛え方次第でどこまでも人は強くなれる、そう信じている。──などと言う綺麗事は言わん。──先に終点にたどり着いたものからの一言だ。強くなりすぎるのは虚しいぞ?以上だ」
「──へぇ?君がその結論に至った訳、知りたいな?」
「そうね、普通は魔法使いは頂点を目指すものなのに、どうしてそこに自分がたどり着いたと勘違いしているのか分からないわ?」
「ちょっと生意気だね君」
「──まあこれはわざと挑発してみただけだが、あまり気分がいいものでは無いな。すまん。……だが最後の一言だけは本音だ。俺は君たちの魔法の使い方などから自分の強さのさらに高みを目指すための糸口を見つけ出すつもりだ。それではよろしく頼む」
そういうと俺はゆっくりと席に戻る。
その様子をみんながじっと眺めているのは想定内。されど。
「……なら俺たちがライバルになってやるしかないな?」
「だね、悪いけどこの僕の敵になったのなら逃げれると思わないことだね」
「いいじゃないですかぁ……実際あれは虚勢じゃなさそうですし、見せてもらうべきですよねえ……へへへへ」
「いいわ!私のライバルになりえそうなら、全力で相手してあげるからっ!」
「あの時より、さらに強さに磨きがかかってる感じかぁ……すごいなぁ」
「全く、すごい度胸ですね。でも悪くありませんね、それでこそ同じ純魔です」
「そうか、ならば全力でライバルを執行するまで」
ほとんどの奴が好意的かつ挑戦的な姿勢なのはさすがに驚いたが。
「……全くすごい自信家もいたものです。では次の方──」
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