第68話 選手宣誓。
スタジアムの中央に出現したのは『学院精霊王スカーナリア』。
二割増の派手さを携えて、その威厳あるオーラを漂わせる。
『さて、君たちは我らがスカーナリアの新たな生徒たちとなるのだ。
君達ならばこの年、この時期に学院に入ることの重大さをよく理解していると思う。
近年、魔王等と呼ばれる魔物が台頭し、それにより世界全体が未曾有の危機に瀕している。
──君たちの中からそれに対抗出来る素晴らしい生徒が生まれることを私は精霊王として、心より存在を込めて願うばかりだ。……では、君たちの中の代表のもの、前へ』
「はいっ!──【金】クラス代表!『フラム=ヴォルカ』!我々は【
『ふむ、素晴らしい意気込みだ。期待しておるぞ──次【黒】の者前へ』
「はい。──【黒】クラス代表、『レギオン=カサンドラ』です。我々は【黒色】の信念に基づき、厄災に対する最大限の努力を見せるつもりです。──我々、我々は……」
「────どの口が言ってんだ裏切りやろうが!!?」
「わ、我々は……」
その言葉は【白】のクラスから飛び出したものだ。その言葉にカサンドラの心は激しくかき乱される。
だが仕方の無いことではある、そもそもカサンドラの父親が未曾有の厄災を作りかけた事は当然ながら皆に知れ渡ってしまっている。
かろうじて純魔が破れた話は消すことは出来たものの、結局誰かを犯人に仕立てあげないと民からの不満が消えなかったのだ。
「そうだぞ!俺たちの一年、二年、いや三年間の努力を返せよ!!」
当然だが、そんな言葉を言われても仕方がないことではある。誰だって自分の頑張って努力した年数を無下にされたら悔しいし、悲しいわな。
─────だがそれは今言うことでは無い。
俺は泣き出しそうになっているカサンドラの代わりに、ゆっくりと前に赴くと。
「───君達、煩いぞ?君らがどれだけ腹が立ったとしても、ここは神聖なる時間だ。今やることじゃない。──何だそんなことも理解出来んほどに頭が弱いなら、もう一度幼子からやり直したらどうかな?」
そういうと微笑みをこぼす。だが当然ながら彼らの堪忍袋の緒が切れるのは理解していた。
「っ!?てめぇふざけてんじゃ、ぐげっ?!」
「だから静かにしろと。そんなに殴り合いがおのぞみならば後でやれ。この神聖なる状況で無駄な労力を人様に使わせるなと言っているんだ、理解したか?」
「ち、調子に乗りやがっ………………………………」
「うんうん、静かにできるなんて君は偉いな。では席に共に戻ろうじゃないか……それにしてもどうした?体調不良か?ならば仕方ないな、俺が連れて行ってやろう」
そういうとカサンドラの肩を軽く叩き、そいつを後ろの席まで連れていく。
カサンドラは少しだけ落ち着いたようで言葉を再びつむぎ出す。その様子を確認しながらカルロンは少年を看護係の人に差し出し戻ってくる。
「なので我々の思いは常に一つ、この厄災を引き起こした存在に公平なる裁きを与えること、そして救いを求める人々の導き手になるために努力していく所存です!」
『───素晴らしい心意気だ。……君たちの努力と熱意、期待しておるぞ。』
「はいっ!」
『では次、【白】』のクラス』
「はいっ、我々は最強を目指して心より励み、そしていつの日か最高の学生として歴史に刻まれるように頑張ります!!あ、僕は『スクエア=ラザニア』!高貴なる魔法使いです!」
『───頑張れ。その道に祝福がある事を祈る』
「ええ!」
『では次【灰】のクラス……』
「はい、灰だけに。──冗談です、私は『ロア』、冒険者ロアと申します。──我々は基本魔法には疎いですが、その代わり自分たちに出来ないことを把握して他者に手助けできるように独自のカリキュラムを組み分け……そのうえで皆様に見せれるように努力いたします。──最初に気持ちが合わないことなどはあるかもしれません、ですが我ら冒険者はいつ如何なる時も努力を怠る気はありません。」
『ふむ、君達冒険者がスカーナリアに入れたことを私は嬉しく思う。これは初めての試みであり、互いに譲歩するべき場所もあるだろう……しかし君達とならば絶対に初めてを当たり前に変えれることを信じている。』
「ありがとうごさいます、頑張ります」
『最後に【無地】のクラス──』
「はい。【無地】のクラス代表『グラン・ドゥエル』……我々はあくまでも誠実に、人々の模範となる存在であろうと思います。
人々の夢、希望は決して損なわれるべきではありません、その事を心に刻み込み、そして実力が足りない事を自覚した上でより高みを目指せるように努力する所存です」
『ほぉ、しかし良い心構えじゃ。君たちの精神に祝福がある事を信じておるぞ。』
「感謝します」
『ではこれより、君たちは我ら偉大なる勇魔学院スカーナリアの生徒だ!苦しいこと、辛いこと、壁にぶつかろうとも……君たちの未来が明るいことを祈って……では我からの締めの言葉としよう!』
◇◇◇◇
こうして、選手宣誓のようなものは無事閉幕し、俺達は自分のクラスルームへと足を運ぶこととなった。
スカーナリアは四つの階層に分かれている。最上層は【金】クラスのものであり、基本的に【金】はほかのクラスとは別の扱い……まあ純魔の……特に跡継ぎとなるものが多くいるのだから、扱いが異なるのもわかるきがするが。
その下の階層は【白】そして【無地】のもの。では我々【黒】そして【灰】のクラスはどこにいったのか。
それは別館だ。別棟とも言うか。
我々のクラスの位置は地下、それと周囲の森の中。
一応本拠地は白の階層の横にあるのだが、とある理由から【黒】と【灰】は別の場所で授業を受けることになっている。
表向きは【金】のもの達の邪魔にならないように、というものなのだが、実際は異なり。
この学院最強の存在が全て黒のクラスに集められているからに他ならない。
【金】は貴族と魔法使い、純魔の跡継ぎだけが集められており、要は彼らを形だけのトップに据え置くことで面倒臭い貴族共の機嫌を取る為。
逆に【黒】は強すぎるもの達が集められている。理由はシンプル、ここに集まったもの達を貴族が他者を見下す為の材料にされることを恐れたスカーナリアの判断によるものだ。
ここのクラスは間違いなく魔王との戦いに役に立つ者ばかり。だから貴族がいることで巻き起こる面倒事からわざと切り離すためにクラスを分けたのだ。
当然冒険者上がりのものしか居ない【灰】もまた同じ理由である。
まあこっちは元々魔法使いと冒険者の仲が悪いから引き離すべきと言う理由もあるが。
まあともかく、俺はクラスのドアをゆっくりと開ける。
◇◇◇
「君たちの担任を務めるのはこのわたくし、精霊王直属の精霊……『ティターニア』よ!……んふふふふふふふ!!あぁ君たちの物語、とっても好きよ?」
そう言ってめっちゃ光り輝く先生は微笑んだっぽい。
「あの……先生、すみません。光量を落としてもらわないと何も見えなくて……」
「あ、あら……ええっと……こんな感じ……どうかしら?」
「先生、逆に真っ暗すぎます。……かろうじて存在していることしかわからないです」
「ええいこれならどう!?」
「先生めっちゃ美人じゃん!!ちょっと!ずるいってその肌のハリ!」
リンシアがそう言うが、まあ気持ちは分かる。
あれは精霊王直属の精霊。故に世界の中でもかなり上位存在なわけだ。
光と希望を司る精霊【ティターニア】。そんな存在に教えて貰えるとは、なんとも幸運なものだ。
精霊の利用する魔法はただの魔法では無いからな、それこそしっかりと実戦で使えるものばかりなはず。
……楽しみだな。
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