第62話 『黄金』VS『回転』
リンシアの服を直したあと、すぐに誰かが走ってくるのをカルロンは認識する。
「おーって誰だお前!?」
走ってきたのは20代程の男性。しかしその見た目はカルロンの脳内データには存在していなかった。
「誰だとは失礼だな!……ワシだよ!ワシ!」
「……ワシワシ詐欺か?」
「ローンだよ!ほら見ろ、服が同じだろう!?」
まあ確かにローンの魔力と同一の存在なのは間違いない。しかしその姿はまるで若返ったかのようにすら……あー成程。
「本当に若返ったんだな?しかしどうやって……なるほど『錬金』魔法ってのはそういう事か」
◇◇◇
ローン。その本名は『ローン・アレイスター』
かつて伝説と呼ばれたクロウリー・アレイスターと言う錬金術師の子供である。
彼はアレイスターに『黄金』及び『錬金』の魔法をみっちりと教えられており、その過程で自分の人生を『錬金』するという技にたどり着いていた。
自分の人生は黄金にも等しいはずだ。という仮説仮定から基づき、黄金を錬成する際の対価交換として利用すると言う裏技。
──それはあまりにも人の道を逸れているのだが、その代わり途方も無く巨大な魔力を一時的に錬成できるのだ。
最も、この効果は未だ不完全であり、それ故に時間経過と共に世界からの修正力が働き……それに合わせて彼の対価交換した物も彼の元に戻っていく。
さてこんな馬鹿げた魔法使いの相手をしたのは、書記官『レギオン・アキレウス』。こちらもまた馬鹿げた魔法の使い手である。
◇◇
「ふむぅ、お主少しとち狂っておらんか?」
「よく言ったな!?先程から無茶苦茶をしてくる輩が」
アキレウスの持つユニーク魔法は『
魔力による高速の回転を繰り出すという魔法。それの何処が強いのか、それについては……。
「(──成程のぉ……奴の周辺の空間に回転する魔力の防壁が展開されておる……故にこちらの物理的魔法攻撃は効かぬか……)」
アキレウスの攻撃は、当たれば即死。カスっても巻き込みによる大打撃を与えれるため、実質必殺必中の魔法と言えるかもしれない。
故にアキレウスの動きを創り出した『金』の壁による防壁などで何とかしのいではいるが、相手の回転のちからの方が若干上なのかすぐに破壊されてしまう。
「ははっ!どしたァ!?……さっきから防御一辺倒じゃねぇか!……っと危ねぇ危ねぇ、死角からの攻撃なんて当たるわけ無いだろ?」
「(ぬぅ、奴の反射神経、おそらくだがなにか別の魔法による強化を受けておるな?……それにどうにも痛みを無効化しているようにすら見受けれる……)」
先程から攻撃の一部に破砕効果を織り交ぜ……回転の内側に向かって爆散させているのだが、そのダメージを全く気にしていなさそうなのがな。
「さっきから小賢しい!!この俺のボディは無敵の肉体っ!てめぇの攻撃如きじゃ痛くも痒くもねぇ!」
「ならこういうのはどうじゃ!……『黄金錬成魔法/
即座にローンの足元から数体の黄金を身にまとった騎士が呼び出される。それは盾を持ち一斉に突進を始めるのだが、それに対しアキレウスは。
「はっ!おっせぇなぁ!『
手の中よりいでしは回転する独楽。されどその速度は風魔法すら簡単に凌ぐ程の魔法の独楽が、無数に騎士目掛けて飛び込んでいく。
”ギャリィイイイン!!!”
ド派手な金属音と共に騎士たちが次々と切断されていく。さらにアキレウスは自身の肉体を高速で回転させて、ローン目掛けて飛びかかる。
「避けるのが遅せぇ!!『ローリング・スープレックス』!!!」
「っ!『
「あははははっははあぁ!もっろい軽い脆い脆い脆い!!」
「ぬぐぅ?!!!」
「おいおい、あっさり倒れやがってさぁ?……しっかしこんなに金を創り出せるなんて羨ましいぜ、全く……せっかくだし少しだけ貰っておくかな?」
攻撃を受けたローンははるか彼方に吹き飛ばされる。さすがは生徒会役員、その実力はまさに桁外れだとしかと、ローンは思う。しかし。
「──感謝するぜ、よく俺の黄金に素手で触れてくれやがったな、そこの奴」
土煙の中から起き上がったローンの姿を見て、アキレウスは目を擦る。
「な、誰だお前!?……いや待て、服装は同じ……まさか替え玉?!」
「──あぁ?ワシはローン本人に決まっておるだろうが?!……なんじゃ?回転のし過ぎで目でも回ったか?」
「いやいやどう考えても声も、顔も、見た目の若さも全部変わっているじゃねぇか?!待て待て何が起きた…………って何だおい俺の手に何をした!!!?」
アキレウス、その腕はまるで黄金のように煌めいてる。そして固く握られた拳は自分の頭からの動かせ!という命令を一切無視していたのだった。
「クソぉ!石化と同じ系統の魔法っ!……」
「おう正解だぜ?まあお前さん既に詰んどるんよ?さっきからバカスカ黄金を破壊してくれちゃってさ?……おかげでお前さんに最初の方に植え付けた黄金の芽がいい感じに芽吹いてくれたぜ全く」
この話をしている間にも、アキレウスの肉体はどんどんと黄金に変化していく。
慌てて魔力を使って対抗しようとするが。
「あー無駄じゃぜ?この魔法はワシが馬鹿親父から教わった錬金術の奥義を参考にしておるからな?──生半可な魔力抵抗じゃ…………餌を与えるようなもんじゃぞ?」
「な、ひっ、何が……クソ、ええぃ!離れろ、離れろっ!ひっいっ?!身体が、俺の体がっ!」
無情にも身体はどんどんと黄金へと染まっていく。涙すら、悲鳴すらも黄金に換わっていく中、ローンは呆れながらぼやく。
「良かったな?その黄金はお前にやるよ、まあ最も───次に目覚めた時、黄金恐怖症になってなければの話だがな?」
こうして会場の一角に、黄金のオブジェが一際異彩を放ちながら鎮座することになった。
ローンが使用した魔法は【
触れた者の肉体を黄金へと変化させる『錬金』の奥義。その発動はかなり時間が掛かるため、いかにそれを相手に気づかせないようにするのかが肝となる魔法。
と、霧が晴れ、現れたカルロンを視界に捉えたローンはそちらに向かって歩いていく。
◇◇◇
気がつくと、生徒会役員のほぼ全てが倒れふせっていた。
未だ生き残っていたのは『風紀委員長』【レギオン・シグルズ】と『生徒会長』【レギオン・カサンドラ】のみ。
そしてそのレギオン・シグルズと対峙していたのは『宝石姫』【ジュリオール・レインザッハ】。
彼女の強さを知るものならば、なぜ彼女が未だ勝利を収めれていないのか分からないだろう。
しかし知る由もない。この【シグルズ】と言う女性は……本当に途方も無くチートな魔法使いなのだと言うことを。
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